【完結】私の可愛いシャラン~夏椿に愛を乞う

金浦桃多

文字の大きさ
上 下
7 / 54
プロスペロ王国編(ミカエル視点)

手紙と花と花言葉

しおりを挟む
家に帰ってからの私はまだ立ち直れずに考えこんでいた。

なんでそんな事になったのか?私はなんでそんな中途半端なところで命を落としてしまったのか?考えれば考えるほど悔しくて堪らなかった。

そしてそれは本当に私?織田信長なのか・・

そう考えるともっと詳しく知りたいと思い始めた。
そんな時、机の上の(パソコン)が目に入った。
「そうだこれがあるじゃないか!」
歌奈に使い方は教えてもらったが文字がよく分からないので、もっと学んでから使ってみようと思っていたが、自分の名前くらいは憶えておこうと書き写していたのが役に立ちそうだ。

教わった手順通りに黙々と進め「のぶなが」といれてみる「変換」だよな・・「信長」でた!そして「検索」でた!思いもかけず沢山の「信長」が出てきた!
覗き込むが…そうだ!字が読めない!
でも諦めたくない!

「やっぱり歌奈に聞こう!」

私は自分の部屋を出て歌奈の部屋を叩き話しかけた。

「歌奈ごめん。ちょっと気になった事があるから教えて欲しいんだ。」

開いた扉の向こうの歌奈は心配そうな表情を浮かべていたが、ためらいながらも私が検索した内容を細かく読んでくれた。
その内容を聞いていて自分がどんどん落ち込んでいくのが分かった。
気まずい空気が漂う中、淡々と話していた歌奈は暫くすると「三郎もういいよね」と言って部屋を後にした。


何度聞いても、何を見ても同じ史実だ。
私はその織田信長だった。
何も考えられなかった。ただただ情けなくなり。聞かなきゃよかったとさえ思った。

しかし、今の自分も情けなくこの時代に逃げて来た愚か者なのに、未来でも志を達成できずに中途半端に死んでしまうとは情けない・・もうその言葉しか浮かばなかった。
「織田三郎信長はなんて馬鹿な奴なんだ・・」思わず呟いた。



周りの明るさに目が覚めた。

どうやら寝てしまったらしい。

窓の外に目を移すとまばゆいばかりの太陽が燦燦と輝いている。

太陽はいつの時代も同じなんだな・・そんな事を思いながら暫くその光を浴びていると昨晩の憂鬱はどこかに行ってしまったように穏やかな気持ちになった。

考えてみれば・・中途半端に終わってしまう私の人生だが、その中でこんな体験が出来るなんて、これこそが誰にも真似がが出来ない貴重な人生ではないのか?
そうだ!こんな事は他の誰もしたことなはないはずだ!
この人生の中でこんなにも貴重な経験をしてるんだ!なのに落ち込んでなんていたらバチがあたる。短い人生だ。もっと楽しまなくちゃもったいない!
そして思い出した。
今度またこの時代に戻れたなら、次は絶対にここに来た意味を、尻込みせずにちゃんと探そうと決めたはずじゃなかったのかと・・
そう思うと自然と笑みがこぼれ、何だか吹っ切れた!


気持ちが落ち着くとある疑問が頭をよぎる。
昨日の二人の態度からすると、もしかして、歌奈と秀一は私の正体に気付いているのかもしれない・・
(話してみようかな?)
ふと、そんな気持ちが湧いて来た。


気を取り直した私は別人のように勉強をし直した。
過去も現在もそしてこれから起こりうるであろう未来も・・
もちろん、歴史だけではない他の事も貪欲に吸収していった。
今度、私の世界に戻ったなら躊躇まよいなくこの未来の良いとこ取りで尾張を豊かにする為に・・

そうこうしているうちに、あっという間に2か月が過ぎ・・
また新たな疑問が湧いて出た。

(そういえば前回はちょうど3か月で尾張に戻ったよな?もしかすると今回も三か月で戻るとか?そんな事じゃないのか?)

もしそうだとしたら・・自分はこんなに悠長に過ごしていて良いのだろうか?と、焦りが出る。
そうだった・・この現象はいつ終わるか分からない。こんなにのんびり構えていたら折角の貴重な時間を無駄にしてしまう。この2か月間、確かに色んな事を学んだがまだまだ足りない。
そしてまた、三か月で尾張へ戻ってしまうのだとしたら、こんなにのんびりなんかしていられない!

考えた挙句・・やはり歌奈と秀一に真実を打ち明けようと私は決心した。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。 このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。 そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。 一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて… 那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。 ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩 《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》

ゆい
BL
涙が落ちる。 涙は彼に届くことはない。 彼を想うことは、これでやめよう。 何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。 僕は、その場から音を立てずに立ち去った。 僕はアシェル=オルスト。 侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。 彼には、他に愛する人がいた。 世界観は、【夜空と暁と】と同じです。 アルサス達がでます。 【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。 随時更新です。

処理中です...