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過去◇会えない日々①

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 ────なぁ? 助けて…って、ダレに言ってるの?


 ひと突きする度に……
 
 
 ──そう言えば、よく一緒にいた男達がいたな。
 
 ──なあ? アイツらに助けてって言ったワケ?
 
 ──もう会うなよ? コイビトとの約束な?
 
 ──電話は必ず出ろ。
 
 ──お前は、「俺のモノ」だろ?


まるで身体に刻みつける為に、行為を続けた。


 実花はひたすら、


 ──ごめんなさい

 ──もう会いません

 ──はい


 を繰り返す人形のようだった。

 多分、「人間」でいるよりマシだ。

 ボンヤリとしながら、

 操られる様にお風呂の準備をして、

 念入りに身体を洗い流し湯船に入った。
 
 ───人間でいるより………


 
 ───ズキリ



 捕まった時の腕が痛む。

 実花は痛みで我に返った。

「──っ! それでも、私は、人間だ。」

 自分に言い聞かせるように、声に出してみる。

 そうだ、私は自分の意思を持った人間だ。

 そもそも、実花は地元の頑固な父を、

 何度も説得し、向こうが実花の頑固さに折れる形で

 この土地へやって来たのだ。

「お父さんそっくりねぇ。」

 なんて、母に笑われた位だ。

 ちなみに実花は外見が母似で性格は父似だ。

 
 今後の対策を練りながら、
 
 お風呂から出て、最初にしたことは、

 玲士と芳樹に連絡を取ることだった。


「大丈夫! この部屋はセキュリティがしっかりして

 いるからって、お父さんがじっくりと選んだ場所な

 のだから!」

 敢えて言葉にして、空に刻み込まれた“約束”を破る。
 
 これからも「人間」として生きるために。

 メッセージアプリを立ち上げて、
 
 玲士と芳樹そして実花の、
 
 空への対策に作ったグループメッセージを開く。

 すると、二人から、

 何度も心配のメッセージが届いていた。

 大丈夫だと送信すると、

 二人から物凄いスピードで返信が来る。


 玲士《ずっと心配していたんだ。
 皆から、凄い勢いで連れ去られたって情報がきて》

 芳樹《ゴメン! こんな重要な情報見逃すなんて!
 休講だったって、後から聞かされて冷や汗かいた》

 実花《心配かけてごめんなさい。私も驚いたよ、
 突然空に遭遇しちゃって》

 玲士《本当に、大丈夫なのか? 》

 実花《それについて、ちょっと話があったんだ  》
 
 玲士《うん  》

 芳樹《なに? ちょっと怖いんだけど》

 実花《実はね、空とやり直す……
 フリをする事にしたの。
 二人に今まで協力して貰って、
 凄く感謝してる。二人とは一緒に行動してたから、
 空が怒ってて。
 今、刺激したら二人に何をするか心配なの。
 空と約束をしたの。二人にはもう会うなって。
 本当に申し訳ないけど、これからは二人に会わない。 
 でも! 諦めてないから! 絶対絶対、別れてやるんだ! 
 これは、相談じゃなくて、もう決めた事だから、
 出来れば応援して欲しい。ワガママでごめんなさい  》

 芳樹《「フリ」なんだね? 一人で頑張るのは、
 流石に苦しいよ。僕達が駄目なら、空の近くに何人か
 手助けしてくれそうなの居るから。
 万が一の時は、そいつらを頼って! 話は着けておくから、
 だから、頑張って! 応援してるし、
 出来ることがあったら、遠慮なく連絡して。》
 
 玲士《俺達のせいか? 酷い目に遭ったんじゃないか? 
 下手に動けば、お前に被害が出るなら、心配だけど、
 我慢して連絡を待ってる。何時でも良いから、
 必要な時は遠慮なく連絡してくれ。》

 我慢出来ず、実花は嗚咽を漏らす。

「二人に出会えて、本当に良かった。ありがとう。」

 口に出してから、メッセージを打ち込む。

 実花《二人共、本当にありがとう! 待ってて、
 必ず恩返しするから!
 飲み会…は、私まだ飲めないから、
 ご飯食べに行こう! 美味しい所、探しておいてね!
 それじゃあ、“約束”ね! またね!
 おやすみなさい。》

 空の“約束”を破って、実花は自分の“約束”を取り付けた。


「絶対、美味しいご飯食べに行くんだから!」


















 
 
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