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玲士との出会い②

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「あ、ご、ごめんなさい!」
 慌ててその場を離れようとした実花に、空の取り巻き? が、話かけてくる。
 
「わー! 大丈夫? あと、ちょっと待って?
 丁度良いから、お話しよう。ちょっと大切な話。」
 
 そう言うと、少し強引に中へと誘導した。
 
「すまない、どこまで聞いていたかわからないが、本人のいないところでこんな話をされてるなんて、嫌だっただろう? 申し訳なかった。」
 玲士は丁寧に頭を下げてきた。
 
「俺もゴメンね! ただ、最近二人の温度差というか、空のご機嫌がね…?
 もし良かったら、出きることがあれば、
 俺らも協力するよ? なぁ、玲士?」

「……迷惑じゃないなら、遠慮無く頼ってくれ。」
 玲士は少し心配そうにこちらを見つめてきた。

 実花としては、このかくれんぼのような状況にかなり疲れて来ていたのと、二人にそれ程悪い印象がなかった為、すんなり受け入れてしまった。
 少し考えると、少々危機感が足りなかったきもするが、結果的にこの出会いのお陰で大分楽になったのも事実だった。

 それから、改めて自己紹介をして(取り巻きくんは芳樹という名前だった。)
 今の状況を説明した。

 ・空の最近の態度が高圧的なこと。

 ・自分の気持ちも冷めてきた。
 
 ・飲み会に行くと女の子達と楽しそうなのを見ると私のいる必要を感じない。
 
 ・空と二人きりになりたくない(流石に理由は言わなかった)

 正直、上手く話せたかわからないが、二人は納得して、改めて協力してくれる事となった。

 と、言ってもスマホは基本的に電源を落としておき、芳樹が情報を手に入れ、ニアミスしそうな時は上手に二人共肉壁になってくれた。

 
 なるべく三人で行動しているが、稀に玲士と二人きりになるときもあった。
 
 一応、まだ付き合っている人のいる実花は気まずかったが、すぐに慣れた。
 
 余りにも居心地が良いのだ。
 
 それ程会話はないのだが、変な何か話さなくては! という焦りが全く無い。

 安心感を得るたびに、ずっとそばに居たい……しかし、自分は空の彼女なのだ。こんな考えは間違えている。
 
 と、いう堂々巡りに陥っていた。そういう考えを捨てきれないのも、三人が出会った時に聞いてしまった、あの会話のせいだ。

 でも、今の状態で聞くのもズルい事だと思う。それに今さら、と言うこともある。

 空の様な男と付き合った挙げ句、こんなに迷惑をかけているのだ。胸の奥がぎゅっとさ締め付けられる思いに、実花も本心では気付いているが、認められるものではなかった。

「どうした? さっきから辛そうな顔をしている。
 具合でも悪いのか? 」
 いつも玲士は、こちらの些細な変化にも気付いてくれる。その事にもまた実花の心は動いてしまう。

 しかし、こんな自分に実花は気付かれたくなかった。
「うーん、ちょっと流石にこんな毎日で疲れたのかも。
 でも、最近は空の方も諦めてきたんじゃない?
 連絡も減ってきたし、探してるのも前ほどじゃないよ。
 今日は、今のうちに帰ろうかな? 空は確か、講義が入っていたはずだし。」

「途中まで送らなくて大丈夫か?」

「大丈夫、だいじょーぶ!
 また、明日お願いね! 今度お礼に、二人にランチ奢るよ。」

「お礼は必要ないよ。好きでやってるんだ。それよりも気を付けて帰れよ。また明日。」

 手を振り、心持ち早足で帰る実花は、玲士の何気なく言った「好き」の二文字に耳が赤くなるのを感じた。
「どうしよう…私。」
 正門を出た矢先、ぐっ! と、腕を捕まれた。








 


 
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