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6:『土曜日22時新宿で』
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ユージはその後、バーで知り合った色気のある男と連れ立って店を出た。そのまま近くのホテルにでも行ったのだろう。
心と体が連動しないのは、ゲイにとってはありがちなことだ。気になる相手がいるからといって、その相手と結ばれる確率なんてゼロに等しい。ましてや相手がノンケなら尚更だ。
だから、ユージの行為を咎めるつもりはなかった。自分自身も廉太郎に出会う前は遊び回っていたのだ。
だけど自分のお気に入りが誰かの興味の対象になってるのだと見せつけられて、腹の奥に不快感が広がる。
大芽はロックをもう一杯頼み、アルコールで不快感を濁しながらスマホを取り出した。無性に、廉太郎へマーキングをしてやりたい気分だった。
『土曜日22時新宿で』
さて次は何をしてやろうかと考えながら、大芽は廉太郎の泣き顔を思い浮かべて濡れた唇を舐め取った。
***
一方的な約束だったにも関わらず、廉太郎は律儀にホテルにやってきた。今日は休日だったおかげで廉太郎はスーツではなく私服を着ていた。
ハイネックの黒いリブセーターに細身のジーンズを履いて、ダウンジャケットを合わせている。意図しているのかいないのか、身体にまとわりつく生地はその内側に隠されたラインを想像させる。
胸筋、と呼ぶには目に毒過ぎる雄っぱいを見て、廉太郎はにやりと唇を持ち上げた。
「ちゃんと来て偉いね、廉太郎」
「や、約束したからな」
部屋に入って早々に、大芽は廉太郎へハンガーを渡した。服を脱げという無言の指示に廉太郎は一瞬だけ表情を曇らせる。
「大芽……くん、パパ活は……」
「してないよ。約束、したからね」
名前を呼び捨てにすることに未だ抵抗があるのか、廉太郎は奇妙な間を開けて大芽くんと口にする。
大芽はそんな廉太郎を笑いながら、「約束」と強調して言葉を返す。今から何をするかわかっているだろうに、気にするのはそこなのかと呆れてしまう。
「……そうか、なら良かった」
だが廉太郎は安心したように頬を緩め、ダウンジャケットを脱いだ。
「何だよ、その顔」
大芽は思わず呟いていた。
廉太郎の顔に視線が奪われる。まさかここでそんな表情をするとは思わなかったのだ。
同時に、ユージのことも思い出していた。廉太郎に片思いをしているらしいユージの存在が、急激に大芽の中で存在感を増してくる。
廉太郎とユージは同僚だという。もし、もしもこんな顔を、廉太郎が自分以外にも見せていたとしたら?
腹の奥に不快感が広がり、大芽は乱暴に廉太郎からハンガーを奪った。
「服着たまま、ベッド上がって」
ダウンジャケットごとハンガーをソファの上に放り投げ、大芽は短く命じた。急に不機嫌になった大芽に戸惑いつつも、廉太郎はベッドの上に乗り上げた。
「下だけ脱いで」
冷ややかに告げながら、大芽もベッドに乗る。二人分の重みで安っぽいベッドが沈み込んだ。
廉太郎は警戒するように大芽の動きを目で追い、躊躇いがちにジーンズを脱ぐ。いつもの癖で綺麗に畳んでいると、大芽が息を漏らすように笑った。
「あっ、いや……これは癖で」
「いいね。今からやらしいことします、って覚悟決めてるみたいで」
「……っ」
「下着も脱ぎなよ。これから、やらしーことするんだから。この前みたいに精液まみれになるのイヤでしょ?」
ローターを口に突っ込まれて射精した日のことを思い出したのか、廉太郎は顔を真っ赤にして俯いた。
あの日は汚れたスラックスと下着を水洗いして、生乾きのまま自宅に帰ったのだった。またあんな事態になるのは確かに御免だったが、下半身だけ素っ裸になるのも抵抗がある。しかし大芽にじっと見つめられ、廉太郎は無言の圧に負けたようにおずおずと下着に指をかけた。
下着を膝まで下ろしたところで、廉太郎は大芽の様子をうかがう。さらした性器だけでなく、下腹部の浮き上がった血管まで見られているようで落ち着かなかった。
「俺に脱がせて欲しいの?」
「ちが……っ、うわ!」
手が止まった廉太郎に意地の悪い笑みを向け、大芽は下着を掴んで引き抜いた。その勢いで廉太郎はひっくり返り、陰嚢と尻の穴を大芽の視界に晒してしまった。
「誘ってくれんのは嬉しいけど、俺まだ未成年だし。処女アナルに突っ込んだら犯罪になっちゃうもんね?」
「誘ってない……ッ! そ、それに俺は童貞であって、女じゃないんだから処女なんて言葉は」
廉太郎は慌てて身を起こすと、両手で股間を隠しながら叫んだ。女扱いしないでくれ、と訴える。
その言葉を待っていたかのように、大芽の唇が持ち上がった。
「そうだね、廉太郎は女じゃない」
大芽は舌舐めずりをしながら、廉太郎の股間に目を向ける。隠した手の内側で、廉太郎の性器がビクッと痙攣した。
「……ッ!? つめた、っ」
直後、廉太郎の手の上に何かが落ちてきた。顔を上げると、大芽が透明なボトルを持っていた。粘着質で透明な液体が、ボトルの中から垂れ落ちてきている。
「ローション、さすがに使い方わかるよね」
問いかける大芽の言葉に、廉太郎は喉を鳴らす。黙ったままでいると催促するようにローションが追加された。
「これだけぬるぬるなら、アナニー初めてでも大丈夫でしょ。最初はちんこ弄るとこから初めてもいいよ?」
「あ、アナニーって……」
「尻の穴に指突っ込んでオナニーすること」
直接的な大芽の言葉に、廉太郎の顔が赤くなる。耳まで真っ赤にしながら、廉太郎はぐっと唇を噛み締めている。
出来ない、と言えば約束を破ることになる。しかしやりたくないのが本音だろう。その葛藤を楽しみながら、大芽はローションのボトルをベッドの上に放り投げた。
「オナニー見せるのなんて初めてじゃないんだからさぁ。ちんこ隠してるローションまみれのベッタベタな手ぇ、動かせばいいだけだって。あ、それとも。オナニーのやり方忘れたって言うなら、参考動画があるけど?」
大芽はスマホの画面を操作しながら、廉太郎に視線を向けた。廉太郎は動画、と聞いて身体をびくつかせる。
「……っぅ、はぁ」
廉太郎は浅い呼吸を繰り返しながら大芽を見た。大芽は涼しい顔をして、廉太郎が手を動かすのを待っている。
「早くしろ」
冷酷に吐き捨てられて、大芽の心臓が大きく跳ねた。手の中の性器がぴくぴくと反応している。
酷い仕打ちを受けている。そう思うのに、廉太郎の身体はなぜか興奮し始めていた。目を逸らしたい事実に戸惑いながらも、廉太郎は大芽の言葉に従いゆっくりと手を動かし始める。
「はっ、ァアッ!?」
ぬるっとした感触に廉太郎は思わず声を上げた。指に絡んだローションが、手を動かすたびに濡れた音を立てる。
ただいつもと同じように肉茎を掴み扱いているだけなのに、滑りが良くなったおかげでいつも以上の快感が全身に走る。
「んっ、ふ……ぅぁ、あっ、んんっ」
「夢中になっちゃって、かーわい」
必死に快感を追う廉太郎を楽しげに眺めながら、大芽は廉太郎に近付いた。
「ローション、尻まで垂れてきてるだろ?」
「ぁっ、ぅ、うん、っ」
「どんな感じ?」
「ひっ、ぅあ、ん……っぬれ、て……きもち、わる、ぃっ」
「気持ち悪いって顔じゃないけど」
「んぁ、アア……っぅ」
気持ち悪いと言いながらも、廉太郎は動かす手を止めようとしない。先端からカウパーが溢れてくすぐったいのか、身を捩りながら必死に手を動かしている。
「廉太郎、空いてる手で尻の穴触ってみなよ。アナニー、覚えたら気持ちいいよ?」
心と体が連動しないのは、ゲイにとってはありがちなことだ。気になる相手がいるからといって、その相手と結ばれる確率なんてゼロに等しい。ましてや相手がノンケなら尚更だ。
だから、ユージの行為を咎めるつもりはなかった。自分自身も廉太郎に出会う前は遊び回っていたのだ。
だけど自分のお気に入りが誰かの興味の対象になってるのだと見せつけられて、腹の奥に不快感が広がる。
大芽はロックをもう一杯頼み、アルコールで不快感を濁しながらスマホを取り出した。無性に、廉太郎へマーキングをしてやりたい気分だった。
『土曜日22時新宿で』
さて次は何をしてやろうかと考えながら、大芽は廉太郎の泣き顔を思い浮かべて濡れた唇を舐め取った。
***
一方的な約束だったにも関わらず、廉太郎は律儀にホテルにやってきた。今日は休日だったおかげで廉太郎はスーツではなく私服を着ていた。
ハイネックの黒いリブセーターに細身のジーンズを履いて、ダウンジャケットを合わせている。意図しているのかいないのか、身体にまとわりつく生地はその内側に隠されたラインを想像させる。
胸筋、と呼ぶには目に毒過ぎる雄っぱいを見て、廉太郎はにやりと唇を持ち上げた。
「ちゃんと来て偉いね、廉太郎」
「や、約束したからな」
部屋に入って早々に、大芽は廉太郎へハンガーを渡した。服を脱げという無言の指示に廉太郎は一瞬だけ表情を曇らせる。
「大芽……くん、パパ活は……」
「してないよ。約束、したからね」
名前を呼び捨てにすることに未だ抵抗があるのか、廉太郎は奇妙な間を開けて大芽くんと口にする。
大芽はそんな廉太郎を笑いながら、「約束」と強調して言葉を返す。今から何をするかわかっているだろうに、気にするのはそこなのかと呆れてしまう。
「……そうか、なら良かった」
だが廉太郎は安心したように頬を緩め、ダウンジャケットを脱いだ。
「何だよ、その顔」
大芽は思わず呟いていた。
廉太郎の顔に視線が奪われる。まさかここでそんな表情をするとは思わなかったのだ。
同時に、ユージのことも思い出していた。廉太郎に片思いをしているらしいユージの存在が、急激に大芽の中で存在感を増してくる。
廉太郎とユージは同僚だという。もし、もしもこんな顔を、廉太郎が自分以外にも見せていたとしたら?
腹の奥に不快感が広がり、大芽は乱暴に廉太郎からハンガーを奪った。
「服着たまま、ベッド上がって」
ダウンジャケットごとハンガーをソファの上に放り投げ、大芽は短く命じた。急に不機嫌になった大芽に戸惑いつつも、廉太郎はベッドの上に乗り上げた。
「下だけ脱いで」
冷ややかに告げながら、大芽もベッドに乗る。二人分の重みで安っぽいベッドが沈み込んだ。
廉太郎は警戒するように大芽の動きを目で追い、躊躇いがちにジーンズを脱ぐ。いつもの癖で綺麗に畳んでいると、大芽が息を漏らすように笑った。
「あっ、いや……これは癖で」
「いいね。今からやらしいことします、って覚悟決めてるみたいで」
「……っ」
「下着も脱ぎなよ。これから、やらしーことするんだから。この前みたいに精液まみれになるのイヤでしょ?」
ローターを口に突っ込まれて射精した日のことを思い出したのか、廉太郎は顔を真っ赤にして俯いた。
あの日は汚れたスラックスと下着を水洗いして、生乾きのまま自宅に帰ったのだった。またあんな事態になるのは確かに御免だったが、下半身だけ素っ裸になるのも抵抗がある。しかし大芽にじっと見つめられ、廉太郎は無言の圧に負けたようにおずおずと下着に指をかけた。
下着を膝まで下ろしたところで、廉太郎は大芽の様子をうかがう。さらした性器だけでなく、下腹部の浮き上がった血管まで見られているようで落ち着かなかった。
「俺に脱がせて欲しいの?」
「ちが……っ、うわ!」
手が止まった廉太郎に意地の悪い笑みを向け、大芽は下着を掴んで引き抜いた。その勢いで廉太郎はひっくり返り、陰嚢と尻の穴を大芽の視界に晒してしまった。
「誘ってくれんのは嬉しいけど、俺まだ未成年だし。処女アナルに突っ込んだら犯罪になっちゃうもんね?」
「誘ってない……ッ! そ、それに俺は童貞であって、女じゃないんだから処女なんて言葉は」
廉太郎は慌てて身を起こすと、両手で股間を隠しながら叫んだ。女扱いしないでくれ、と訴える。
その言葉を待っていたかのように、大芽の唇が持ち上がった。
「そうだね、廉太郎は女じゃない」
大芽は舌舐めずりをしながら、廉太郎の股間に目を向ける。隠した手の内側で、廉太郎の性器がビクッと痙攣した。
「……ッ!? つめた、っ」
直後、廉太郎の手の上に何かが落ちてきた。顔を上げると、大芽が透明なボトルを持っていた。粘着質で透明な液体が、ボトルの中から垂れ落ちてきている。
「ローション、さすがに使い方わかるよね」
問いかける大芽の言葉に、廉太郎は喉を鳴らす。黙ったままでいると催促するようにローションが追加された。
「これだけぬるぬるなら、アナニー初めてでも大丈夫でしょ。最初はちんこ弄るとこから初めてもいいよ?」
「あ、アナニーって……」
「尻の穴に指突っ込んでオナニーすること」
直接的な大芽の言葉に、廉太郎の顔が赤くなる。耳まで真っ赤にしながら、廉太郎はぐっと唇を噛み締めている。
出来ない、と言えば約束を破ることになる。しかしやりたくないのが本音だろう。その葛藤を楽しみながら、大芽はローションのボトルをベッドの上に放り投げた。
「オナニー見せるのなんて初めてじゃないんだからさぁ。ちんこ隠してるローションまみれのベッタベタな手ぇ、動かせばいいだけだって。あ、それとも。オナニーのやり方忘れたって言うなら、参考動画があるけど?」
大芽はスマホの画面を操作しながら、廉太郎に視線を向けた。廉太郎は動画、と聞いて身体をびくつかせる。
「……っぅ、はぁ」
廉太郎は浅い呼吸を繰り返しながら大芽を見た。大芽は涼しい顔をして、廉太郎が手を動かすのを待っている。
「早くしろ」
冷酷に吐き捨てられて、大芽の心臓が大きく跳ねた。手の中の性器がぴくぴくと反応している。
酷い仕打ちを受けている。そう思うのに、廉太郎の身体はなぜか興奮し始めていた。目を逸らしたい事実に戸惑いながらも、廉太郎は大芽の言葉に従いゆっくりと手を動かし始める。
「はっ、ァアッ!?」
ぬるっとした感触に廉太郎は思わず声を上げた。指に絡んだローションが、手を動かすたびに濡れた音を立てる。
ただいつもと同じように肉茎を掴み扱いているだけなのに、滑りが良くなったおかげでいつも以上の快感が全身に走る。
「んっ、ふ……ぅぁ、あっ、んんっ」
「夢中になっちゃって、かーわい」
必死に快感を追う廉太郎を楽しげに眺めながら、大芽は廉太郎に近付いた。
「ローション、尻まで垂れてきてるだろ?」
「ぁっ、ぅ、うん、っ」
「どんな感じ?」
「ひっ、ぅあ、ん……っぬれ、て……きもち、わる、ぃっ」
「気持ち悪いって顔じゃないけど」
「んぁ、アア……っぅ」
気持ち悪いと言いながらも、廉太郎は動かす手を止めようとしない。先端からカウパーが溢れてくすぐったいのか、身を捩りながら必死に手を動かしている。
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