ネームレスセックス

よもやま

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4:「廉太郎は上のお口で上手に食べれるかな」

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 性教育、と称して見せられているのはゲイビデオだった。大芽の言う通り大人のオモチャをメインに使ったプレイ物で、テレビの中の男優のアナルにピンクローターが押し込まれている。
 男優は目隠しをして両手首を拘束されたまま、タチ役のペニスを口に咥えていた。うまくしゃぶれないとローターの振動が強くなっていくようで、途中からはもうペニスを咥えられずにローターの振動でイカされていた。

「ピンクローターって、こういう風に使うんだよ。わかった?」
「な……」
「な?」
「なにもわからん……」

 目の前で繰り広げられる暴力的なまでのセックスに、廉太郎は呆然として口を開けている。しかし何も感じていないわけではなさそうだった。スラックスの内側が少しだけ盛り上がっている。
 廉太郎に指摘してやったらどんな顔をするだろうか。そんな期待が湧いてきて、大芽は意地の悪い笑みを浮かべる。

「そのわりに、しっかり勃起してるじゃん」
「……っ、こ、これは……生理現象で」
「こういう風にされてみたい、って想像でもした?」
「……、っ」
「や~っぱあんたMっ気あるよ」
「そんなこと……!」
「廉太郎、仰向けになってベッドに寝て」

 大芽はテレビを消すと、唐突に命じた。廉太郎はわけがわからずに戸惑う視線を向けるが、大芽は無言で催促する。

「ぅ……」

 どこか逆らいがたい雰囲気に気圧されて、廉太郎は命じられるままベッドの上で仰向けなった。
 従順な廉太郎を、大芽は観察するように見つめる。首を絞めるように真上まで留められたワイシャツのボタンと手首を締め付ける袖口のボタンは、廉太郎の几帳面な性格が良く表れている。同時に、無意識に隠している心理までもが滲み出ている。

「目、閉じて」
「な、なんで……」
「いいから」

 有無を言わさぬ大芽の視線に、廉太郎は息を飲む。何をされるかわからないのが不安なのだろう。怯えて大芽を見上げる瞳がたまらなく嗜虐心をそそる。
 大芽は問いに答えず、無言のまま廉太郎を見下ろす。待っていても埒が明かないとようやく理解したのか、廉太郎はゆっくりと瞳を閉じた。
 これから何が起きるのだろうと、期待しているのか怯えているのか、廉太郎の呼吸が荒くなり胸が大きく上下している。

「口開けて」

 ベッドが大きく沈み込んだ。間近で大芽の声がして、廉太郎の身体は緊張で震える。

「……っんぐ、っな、んだこれ」

 躊躇いながら口を開けると、何か硬いものが歯に当たった。舌先で形を確かめようとするが、表面がつるりとしていて楕円形らしいということしかわからない。

「はは、いいね。廉太郎、さっきの男優は下のお口で上手にローター食ってたけど」

 ローター、と聞いて廉太郎は動かしていた舌を止めた。今、口の中に入れられているものはさっきのピンクローターなのだと気付いてしまった。

「廉太郎は上のお口で上手に食べれるかな」
「まっ、……ふぅ、ゔっ!?」

 大芽の楽しげな声に鳥肌が立つ。廉太郎はローターを吐き出そうと舌で押し戻そうとするが、その瞬間に大芽がローターのスイッチを入れた。

「んぐ、んっ、んゔ、ゔ~~っ……ッ!!」

 微弱な振動が舌と上顎に響き、廉太郎の背中が仰け反る。廉太郎は閉じろと言われた目を見開き、やめてくれと縋るように大芽を見上げる。
 しかし大芽はスイッチを切るつもりはないようで、コードを持ったままローターを喉の奥に押し込んでくる。

「んぐ、ぇっ……ぅあ、ぐっ……ぅう!」

 上顎の奥の柔らかい部分にローターを押し当てられ、起き上がろうとすると嘔吐いてしまう。

「口は第二の性器って言うんだって、知ってた?」

 性器、と言われて廉太郎は数分前まで見ていたゲイビの映像を思い出してしまう。ローターで排泄器官であるアナルを性器にさせられて、善がり狂う男の姿が自分に重なる。
 自分も今、ローターで口の中を犯されて性器にさせられている。

「んぁ、やぇ……ぁ、あ゛っ!? ひぅッ、ンンンン゛……~~ッ!」

 やめろ、と声を上げようとして動かした舌がローターに触れ、廉太郎は全身を痙攣させた。ローターの振動自体は弱いものの、誰にも触れられたことのない口の中は初めての感覚に敏感になっている。

「初めてなのにローターで感じるなんて、廉太郎はやらしーんだね。ちんこも乳首もビンビンに勃起してるよ」

 大芽は廉太郎の耳元に顔を寄せながら、ローターを口の中でぢゅぽぢゅぽと動かした。その度にスラックスを押し上げるペニスからガマン汁が滲み、漏らしたように股間を濡らしている。
 感度が上がりすぎて勃起した乳首も、触ってくれと言わんばかりにシャツの下で存在を主張していた。

「このまま触んないでもイケそうじゃん。あーあ、初めてなのにオモチャだけでイッちゃうなんて。変態」

 廉太郎の痴態を嘲りながら、大芽は赤く染まった廉太郎の耳に息を吹きかけた。 

「んっ、んぅゔ……ッ、っ、あ、あ゛……ん~~~~ッッ!!」

 直後、廉太郎はローターを咥えたまま喉の奥で嬌声を上げた。がくがくと大きく腰を動かしながら、我慢できずに射精してしまったようだ。
 下着とスラックスをびしょびしょに濡らした精液が、ベッドの上にまで染みている。達して失神しかけている廉太郎の口からローターを引き抜くと、大量の唾液が溢れてきた。
 ひくひくと痙攣する口は、まるで中出しされた後のアナルのようだ。

「廉太郎、大丈夫?」

 強烈な快感に廉太郎の意識はトんでいるのか、問いかけても返事はなかった。
 大芽は約束通りに一本も指を触れていないが、これだけ蕩けきった姿を見ているとこのまま腰を掴んで突っ込んでしまいたい衝動に駆られる。

「……うまそー」

 けれど、まだ我慢だと大芽は自分に言い聞かせる。こんなに素直で真っさらで、開発しがいのある男をすぐに食べてしまっては勿体ない。
 焦らして焦らして、廉太郎がねだってきても焦らしきって、そうしてゆっくり頂くのが最高に美味い食べ方だ。

「……ふ、はは」

 そういえば、と大芽は幼い頃の誕生日を思い出して笑ってしまった。
 ショートケーキのイチゴは、最後まで残しておく方だった。
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