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第一章 王国編第二部(中等部)
エピソード154 援護と落とし所
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(この猛攻を避けて、オークが疲れた所を狙う!)
「疲れた所をサイドからフェイントで引きつけてくれ! その隙を狙う!」
オレは護衛に指示をして、オークと睨み合う!
そして護衛は、オレの指示通りにオークの左脚に向かって剣を横に薙ぎ払おうとしていた。
護衛の攻撃によってオークの注意は護衛へ向いている。
そしてオークは護衛に向かって右腕を振り下ろす…………が護衛は急停止してバックステップでオークの攻撃を躱した。
(よし! これで隙ができた!)
オレはオークの右側面、ちょうど死角となる所に忍び足で移動する。
ここで本日二度目の【身体強化】をかけてオークの首元に狙いをつけて走り出す!
オークとの距離が残り一メートルの所でこちらの動きにオークが気付いた。
「やばっ!」
オークと目が合った瞬間トキメキではなく、とてつもない殺気を感じた……
オークは避けられた右腕を反対方向に伸ばし、裏拳のような攻撃をオレに向かって繰り出した!
オレは避けようと身体を右側に倒れ込むように捻り、何とか左頬の擦り傷程度に被害を抑える事ができた。
(少し痛いけど、【身体強化】してなかったら最低でも大怪我してたよな……)
そして躱してバランスを崩しているオレに追い打ちをかけるよう左腕の拳が向かってくる。
「ブヒヒィ!」
嬉しそうな顔で喜びの声をあげるオークがそこに居た…………
だがオークの一撃はオレにはとどく事は無い……
「【クロノス】」
そこはオレだけが動く事を許された百分の一秒の緩やかな刻の世界。
三秒間だけ時間の刻の流れを緩やかにする。
オレは【身体強化】をかけたままオークの懐に入り、喉元目掛けて飛び上がるように突きを放つ。
ググググッ!
オレが放つ突きは刃の根元の近くまでオークの喉に突き刺さり深さにして約七十センチ。
その傷の深さは【クロノス】が解ける頃には全てが終わっている事を示していた……
そして……【クロノス】と【身体強化】が解ける時間が来て、オレの身体にとてつもない疲労と筋肉痛が襲ってくる。
(いつも思うけど……凄く痛い! 疲れる!)
オレは何とか気力を振り、オークの方へ顔を向けて佇んでいた。
「プギィ? イィ………………」
オークは一瞬自分の身に何が起きたのか分かっていないようだ……その後遅れてやってくる一瞬の激痛に叫ぶ声も出せず、その大きな巨体は沈んでいった…………
「ま……まさか…………や、やりました! スノウ様!」
護衛はオレの元に急いで駆け寄ろうとしていたが、オレはそれを拒んだ。
「こちらは大丈夫だ! 気絶している奴の方が助けがいるだろう!」
「は、はい! かしこまりました!」
護衛は急いで気絶している仲間の元へ向かった。
(フィーネ達は大丈夫か? 偽ブタ二匹相手に護衛二人と学生五名…………みんながフィーネぐらいの力があれば問題はないけど……念のために援護に行ってもらおうかな)
オレは頭の中で今後のシミュレーションをして、馬車に向かってゆっくりと歩き出した。
(まずは、馬車の側で静かに眠る護衛に報告して…………ダリアにも言わないとな)
馬車にもたれ掛かる護衛の亡骸は、実はオレ達を驚かす冗談で、今から起きるのではないかと思える程のとても穏やかな顔をしていた。
オレは片膝を地面につけて亡骸に報告をした。
「終わったよ。貴方と他の護衛達のおかげでダリアを救う事が出来たんだよ。だからもう安心して良いよ…………」
そして気絶した護衛も目を覚まして二人がオレの元に駆け寄ってきた。
オレの元に来るとすぐに片膝を着けて二人はオレに頭を下げていた…………
「この絶体絶命の中スノウ皇子自らが我々の命を救って下さりありがとうございます! そして仲間の死を悲しみ、優しいお言葉をかけていただき天国でも喜んでいると思います!」
そう言って涙の雫を地面に垂らす護衛達……
「すまないが、一度ダリア姉様に報告しようと思うのだが…………報告後は偽ブタの援護に向かってくれないか?」
「「かしこまりました!」」
そしてオレはダリアにオークを討伐したと安心させる為に、護衛達を残していた馬車の中に入った。
ダリアは使用人と無言で祈っていたがオレに気づくと祈りを中断してこちらに身体を向けた。
「ダリア姉様、オークを討伐しました。残りの偽ブタたちも仲間達が援護に向かったので危機は去ったかと思います」
オレの言葉にダリアは驚いて目を見開いていた。
「そ、それは感謝いたします。スノウ……あなた自らが………………あ、危ないので自分自身が前に出るのはどうかと思いますわ!」
少し頬を赤くして感謝か心配しているのか貶しているのかよく分からない返事が返ってきた……
(……なぜ故にツンデレなのだいダリア…………そのポジションはフィーネで間に合っているんだよ。どうせなら昔のように百パーセント悪女の方がキャラが成り立つんだよ!)
オレの余計な考えは置いといて、オレはダリアにもう一度確認したいことを述べた。
「ダリア姉様、姉様達を助けましたので、くれぐれも帝国で私が生きていた事は話さないで下さいね。また、使用人や護衛にも同様に伝えて下さい」
「ス、スノウ……貴方はそれで良いのですか! お母様とマキシムお兄様に追い出されて悔しくないのですか? 貴方のお母様がお亡くなりになり恨みなどないのですか!」
ダリアは力強い眼差しでオレを本音を聞き出そうとしていた。
(一体どっちの心配してんだよ……調子が狂うなぁ)
「恨みや後悔はありますよ、帝国の第三皇子としてマキシム兄様やイーサン兄様の元で帝国を支えようとしていただけで、次の帝王の座を狙っていると勘違いしていた浅はかな貴方達が私たち親子にしてきた事を考えると……はらわたが煮えくり返る思いですよ、私は神ではなくただの人間ですから…………
亡命する前に母上とこの王国で楽しい人生を送りたいと話していたので、今は一人で……いや母上の分まで幸せに生きる事を決意しているので、正直帝国の人間、特に私に敵意を抱いている人間には関わりたくないです」
オレの言葉にダリアは少し申し訳なさそうに見える表情をして視線もキョロキョロとして少し挙動不審になっている。
「わ、わたしは…………あの頃は無知で……ただイーサンお兄様を取られたくないと……その……ヴァネッサ様とスノウには申し訳ないと……」
辿々しい言葉でダリアはオレに謝罪をした。ダリアがオレに謝る事が意外すぎてオレは鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしていた……
「なんなのその顔は……わたしだっていつまでも子どもじゃないわ! お母様や高位貴族達の傀儡になるつもりはないし、今はそれなりに考えられるようになったつもりよ!」
不貞腐れたように言うダリアの姿を見て、オレは少しだけダリアを見直した。
「ダリア姉様は悪くないよ…………悪いのはダイアナ王妃だから……後マキシム兄様も」
オレの言葉に少しだけダリアは笑みを浮かべた。
「そうね……イーサンお兄様も同じことを言ってましたし…………確かに最近ではわたしもお母様達が怖いと思う事があるわ」
「だから私の事は伏せておいて下さいね」
「スノウ、貴方がそれで良ければ」
「それと護衛達にも私の学友達に私の正体を言わないようにと伝えていて下さい」
「わかりました」
そしてオレは馬車を後にして、外で待機していた護衛達にも先程のダリア同様に話をした。
「疲れた所をサイドからフェイントで引きつけてくれ! その隙を狙う!」
オレは護衛に指示をして、オークと睨み合う!
そして護衛は、オレの指示通りにオークの左脚に向かって剣を横に薙ぎ払おうとしていた。
護衛の攻撃によってオークの注意は護衛へ向いている。
そしてオークは護衛に向かって右腕を振り下ろす…………が護衛は急停止してバックステップでオークの攻撃を躱した。
(よし! これで隙ができた!)
オレはオークの右側面、ちょうど死角となる所に忍び足で移動する。
ここで本日二度目の【身体強化】をかけてオークの首元に狙いをつけて走り出す!
オークとの距離が残り一メートルの所でこちらの動きにオークが気付いた。
「やばっ!」
オークと目が合った瞬間トキメキではなく、とてつもない殺気を感じた……
オークは避けられた右腕を反対方向に伸ばし、裏拳のような攻撃をオレに向かって繰り出した!
オレは避けようと身体を右側に倒れ込むように捻り、何とか左頬の擦り傷程度に被害を抑える事ができた。
(少し痛いけど、【身体強化】してなかったら最低でも大怪我してたよな……)
そして躱してバランスを崩しているオレに追い打ちをかけるよう左腕の拳が向かってくる。
「ブヒヒィ!」
嬉しそうな顔で喜びの声をあげるオークがそこに居た…………
だがオークの一撃はオレにはとどく事は無い……
「【クロノス】」
そこはオレだけが動く事を許された百分の一秒の緩やかな刻の世界。
三秒間だけ時間の刻の流れを緩やかにする。
オレは【身体強化】をかけたままオークの懐に入り、喉元目掛けて飛び上がるように突きを放つ。
ググググッ!
オレが放つ突きは刃の根元の近くまでオークの喉に突き刺さり深さにして約七十センチ。
その傷の深さは【クロノス】が解ける頃には全てが終わっている事を示していた……
そして……【クロノス】と【身体強化】が解ける時間が来て、オレの身体にとてつもない疲労と筋肉痛が襲ってくる。
(いつも思うけど……凄く痛い! 疲れる!)
オレは何とか気力を振り、オークの方へ顔を向けて佇んでいた。
「プギィ? イィ………………」
オークは一瞬自分の身に何が起きたのか分かっていないようだ……その後遅れてやってくる一瞬の激痛に叫ぶ声も出せず、その大きな巨体は沈んでいった…………
「ま……まさか…………や、やりました! スノウ様!」
護衛はオレの元に急いで駆け寄ろうとしていたが、オレはそれを拒んだ。
「こちらは大丈夫だ! 気絶している奴の方が助けがいるだろう!」
「は、はい! かしこまりました!」
護衛は急いで気絶している仲間の元へ向かった。
(フィーネ達は大丈夫か? 偽ブタ二匹相手に護衛二人と学生五名…………みんながフィーネぐらいの力があれば問題はないけど……念のために援護に行ってもらおうかな)
オレは頭の中で今後のシミュレーションをして、馬車に向かってゆっくりと歩き出した。
(まずは、馬車の側で静かに眠る護衛に報告して…………ダリアにも言わないとな)
馬車にもたれ掛かる護衛の亡骸は、実はオレ達を驚かす冗談で、今から起きるのではないかと思える程のとても穏やかな顔をしていた。
オレは片膝を地面につけて亡骸に報告をした。
「終わったよ。貴方と他の護衛達のおかげでダリアを救う事が出来たんだよ。だからもう安心して良いよ…………」
そして気絶した護衛も目を覚まして二人がオレの元に駆け寄ってきた。
オレの元に来るとすぐに片膝を着けて二人はオレに頭を下げていた…………
「この絶体絶命の中スノウ皇子自らが我々の命を救って下さりありがとうございます! そして仲間の死を悲しみ、優しいお言葉をかけていただき天国でも喜んでいると思います!」
そう言って涙の雫を地面に垂らす護衛達……
「すまないが、一度ダリア姉様に報告しようと思うのだが…………報告後は偽ブタの援護に向かってくれないか?」
「「かしこまりました!」」
そしてオレはダリアにオークを討伐したと安心させる為に、護衛達を残していた馬車の中に入った。
ダリアは使用人と無言で祈っていたがオレに気づくと祈りを中断してこちらに身体を向けた。
「ダリア姉様、オークを討伐しました。残りの偽ブタたちも仲間達が援護に向かったので危機は去ったかと思います」
オレの言葉にダリアは驚いて目を見開いていた。
「そ、それは感謝いたします。スノウ……あなた自らが………………あ、危ないので自分自身が前に出るのはどうかと思いますわ!」
少し頬を赤くして感謝か心配しているのか貶しているのかよく分からない返事が返ってきた……
(……なぜ故にツンデレなのだいダリア…………そのポジションはフィーネで間に合っているんだよ。どうせなら昔のように百パーセント悪女の方がキャラが成り立つんだよ!)
オレの余計な考えは置いといて、オレはダリアにもう一度確認したいことを述べた。
「ダリア姉様、姉様達を助けましたので、くれぐれも帝国で私が生きていた事は話さないで下さいね。また、使用人や護衛にも同様に伝えて下さい」
「ス、スノウ……貴方はそれで良いのですか! お母様とマキシムお兄様に追い出されて悔しくないのですか? 貴方のお母様がお亡くなりになり恨みなどないのですか!」
ダリアは力強い眼差しでオレを本音を聞き出そうとしていた。
(一体どっちの心配してんだよ……調子が狂うなぁ)
「恨みや後悔はありますよ、帝国の第三皇子としてマキシム兄様やイーサン兄様の元で帝国を支えようとしていただけで、次の帝王の座を狙っていると勘違いしていた浅はかな貴方達が私たち親子にしてきた事を考えると……はらわたが煮えくり返る思いですよ、私は神ではなくただの人間ですから…………
亡命する前に母上とこの王国で楽しい人生を送りたいと話していたので、今は一人で……いや母上の分まで幸せに生きる事を決意しているので、正直帝国の人間、特に私に敵意を抱いている人間には関わりたくないです」
オレの言葉にダリアは少し申し訳なさそうに見える表情をして視線もキョロキョロとして少し挙動不審になっている。
「わ、わたしは…………あの頃は無知で……ただイーサンお兄様を取られたくないと……その……ヴァネッサ様とスノウには申し訳ないと……」
辿々しい言葉でダリアはオレに謝罪をした。ダリアがオレに謝る事が意外すぎてオレは鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしていた……
「なんなのその顔は……わたしだっていつまでも子どもじゃないわ! お母様や高位貴族達の傀儡になるつもりはないし、今はそれなりに考えられるようになったつもりよ!」
不貞腐れたように言うダリアの姿を見て、オレは少しだけダリアを見直した。
「ダリア姉様は悪くないよ…………悪いのはダイアナ王妃だから……後マキシム兄様も」
オレの言葉に少しだけダリアは笑みを浮かべた。
「そうね……イーサンお兄様も同じことを言ってましたし…………確かに最近ではわたしもお母様達が怖いと思う事があるわ」
「だから私の事は伏せておいて下さいね」
「スノウ、貴方がそれで良ければ」
「それと護衛達にも私の学友達に私の正体を言わないようにと伝えていて下さい」
「わかりました」
そしてオレは馬車を後にして、外で待機していた護衛達にも先程のダリア同様に話をした。
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