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第一章 王国編第二部(中等部)
エピソード148 ふらり途中町ぶら
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「テリー、私から言おう。実は次に立ち寄る町で気になる事があり、それが本当かどうかを聞くのが目的なんだが、あまり王族が嗅ぎ回るのは目立ち過ぎて、平民のクライヴやフィーネなら問題ないだろうと言う話だ。アリアにはその頭脳でクライヴ達を目立たぬように補助をおねがいしたい」
「承知しました」
アーサー殿下の言葉に淡々と返事をするアリア様……
オレは理由が分からないのですぐにはイエスとは言えなかった……危険なことはしたくないから……
「アーサー殿下、その、具体的にはどのような事をするのでしょうか?」
オレの質問にアーサー殿下は少しだけ考えてから答えた。
「普通に町を楽しんでもらいながら気になる事を聞いたら教えて欲しいんだ」
「気になる事?」
オレは意味がわからず呟いた一言にアーサー殿下は答えてくれた。
「この町周辺の突然人が居なくなる噂についてだ」
オレは一瞬ゾッとしたが怖がらせないようにテリー様がフォローを入れた。
「クライヴ、あくまでも噂だからね。実際にそんな事は起こっていないかもしれない。どこかの貴族の恨みを買っての風評被害かも知れない」
「分かりました。ちなみにこの町には何時間程滞在するのでしょうか?」
「昼食後少しゆっくりしてから出発予定で考えている。約三時間半は時間があるのでその時間で情報を集めて欲しい」
「「「はい」」」
アーサー殿下の言葉にオレ達三人とも頷く。
そしてボールトン伯爵領の端に位置する小さな町に到着してオレ達は聞き込みを開始した。
「フィーネ、オレとフィーネは大丈夫だけど、アリア様が着ている服で貴族ってわかるよな? それに使用人とか連れ添ったりしたら……」
「えっ? クライヴ大丈夫だよほら」
フィーネが示す方を向くと、そこには町娘の格好をした可愛い女の子に変装したアリア様が立っていた。しかも護衛の姿が見当たらない…………
「お待たせフィーネ、それにクライヴ君」
何でもないように声をかけてくれるアリア様に困惑して、オレは護衛のいない理由を聞いた。
「あの、失礼ですがアリア様の護衛の方が見当たらないのですが……」
するとアリア様はさも当然のような顔をして答えた。
「あぁ、護衛は全て撒いてきましたから」
(どのようにその包囲網を抜けてきたんですか貴女は…………)
オレはそんなツッコミを心の中で留めて、とりあえず町の中のお店巡りをする事にした。
「きゃあ! アリア似合う~!」
「そ、そんな事ないわよ」
「やっぱりアリアみたいに胸がある程度大きくないと似合わないよねコレって……アタシじゃお子様になっちゃうよ」
「フィーネはこっちの方が似合うわよ。ウエストとか凄く細くてスレンダーだから」
「……………………」
(何この疎外感……フィーネとアリア様は楽しそうに買い物を楽しんでいるけど…………俺は荷物係ですけど……)
二人が何かを買うとオレの腕に重くのしかかる…………
「大変ね。モテる男の子は」
そんなオレに声をかけてくれたのはお店の店員さんだった。ただの荷物持ち機となっていたオレを不憫に思ったのだろうか。
「いや、モテてないです。二人とは学院の同じ学年で学友になります。店員さんが思っているようなそんな関係じゃありませんし……」
色々と事情を話すのが面倒なので現在の状況を簡潔に伝えたつもりだったが……
「フフ、そう思っているのは君だけかも知れないわよ」
店員さんは意味深な事を言うが、オレにはアリア様からの好意は感じられないので「はあ……」しか返事ができなかった。
そして店員さんとの気遣いによるものだが、オレは話を切り上げようとしていたその時!
情報が舞い込んできた。
「でも、こうして君たちのような子ども達だけで来るのは久しぶりだわ。ある噂で子ども達だけで外に出かける事はめっきり減ったのよ。どの店もだけど親御さん同伴で来る事がほとんどなのよ」
店員さんは懐かしそうに語っているが、オレにはどんな噂が気になり、もう少し首を突っ込んだ。
「あの……どのような噂なんですか?」
すると店員さんは神妙な顔をしてオレに答えた。
「半年前から子ども達で遊んでいたら、子どもが姿を消したとか神隠しに合ったとかそんな類の噂が広まって、それからはずっとこんな感じかな。子どもがいなくなるなんて誰も見た事ないし被害者の家族もいないのに…………どこかの貴族から恨みでも買ってんのじゃないかなって話にもなってるけどね。でもやっぱり一度広まった噂は中々消えないし……」
「そうですか……早く無くなるといいですね。そんな噂なんて」
オレは思った事を素直に口に出すと、店員さんはニコッと微笑んでくれた。
両手がパンパンに塞がるぐらいの買い物を終え、お店の外に出た時に二軒隣のお店から誰かがオレを呼んだ。
「ああ~! クライヴやん。ここでなにしてはるん? 可愛い子も連れて人気者やね。うちにも紹介してや」
(この独特な訛りは……)
声をかけられて方を振り向くと、黒色のボブヘアーに黒目の男装しているカエデが、手を振りながらこちらに駆け寄ってきている。
「カエデ! 痛っ!」
オレがカエデの名前を呼んだ瞬間!
目にも止まらぬ速さでフィーネがオレの足を踏み躙っていた。
多分ヤキモチからくる行動だろうがオレにはそう言う性癖が無いので純粋に痛い……
(何でだよ。ただ名前呼んだだけだぞ!)
「クライヴ君、どう言う事か説明していただけますか?」
何故かアリア様もご機嫌斜めな様子だった。
(アリア様は関係ないでしょ! それともフィーネの友達だからオレに怒ってるの? そもそもオレとカエデは顔見知り程度だよ)
「久しぶり? 二年ぶりぐらいかいな? クライヴは背伸びてカッコようなってるなぁ」
パチン!
乾いた音とともに痛みがオレの背中を襲う!
(多分フィーネの仕業だろう……顔がヒクついているので……)
そしてオレはフィーネとアリア様をカエデに紹介した。
「カエデ久しぶり。オレだってよく分かったな」
「そら、忘れるわけあらへんよ……命の恩人なんやさかい」
少し頬を染めてしおらしく言うカエデにまたしてもフィーネが反応した。
パチン!
またしても背中に痛みが走る!
更にアリア様の厳しい視線に心が痛い!
そしてオレはカエデにフィーネとアリア様を紹介した。
「こちらはフィーネとアリアさ……アリアで同じ学院の学友なんだ。今は夏休み期間だから先輩や学友と旅行に来ているんだ」
嘘は言っていないが、噂を調査している事は隠した。
「そうなんや やったらみんな一緒にカフェ行こ?」
「ええ」
「そうしよっか」
「「ね! クライヴ!」」
フィーネとアリア様の圧が凄いです…………
「承知しました」
アーサー殿下の言葉に淡々と返事をするアリア様……
オレは理由が分からないのですぐにはイエスとは言えなかった……危険なことはしたくないから……
「アーサー殿下、その、具体的にはどのような事をするのでしょうか?」
オレの質問にアーサー殿下は少しだけ考えてから答えた。
「普通に町を楽しんでもらいながら気になる事を聞いたら教えて欲しいんだ」
「気になる事?」
オレは意味がわからず呟いた一言にアーサー殿下は答えてくれた。
「この町周辺の突然人が居なくなる噂についてだ」
オレは一瞬ゾッとしたが怖がらせないようにテリー様がフォローを入れた。
「クライヴ、あくまでも噂だからね。実際にそんな事は起こっていないかもしれない。どこかの貴族の恨みを買っての風評被害かも知れない」
「分かりました。ちなみにこの町には何時間程滞在するのでしょうか?」
「昼食後少しゆっくりしてから出発予定で考えている。約三時間半は時間があるのでその時間で情報を集めて欲しい」
「「「はい」」」
アーサー殿下の言葉にオレ達三人とも頷く。
そしてボールトン伯爵領の端に位置する小さな町に到着してオレ達は聞き込みを開始した。
「フィーネ、オレとフィーネは大丈夫だけど、アリア様が着ている服で貴族ってわかるよな? それに使用人とか連れ添ったりしたら……」
「えっ? クライヴ大丈夫だよほら」
フィーネが示す方を向くと、そこには町娘の格好をした可愛い女の子に変装したアリア様が立っていた。しかも護衛の姿が見当たらない…………
「お待たせフィーネ、それにクライヴ君」
何でもないように声をかけてくれるアリア様に困惑して、オレは護衛のいない理由を聞いた。
「あの、失礼ですがアリア様の護衛の方が見当たらないのですが……」
するとアリア様はさも当然のような顔をして答えた。
「あぁ、護衛は全て撒いてきましたから」
(どのようにその包囲網を抜けてきたんですか貴女は…………)
オレはそんなツッコミを心の中で留めて、とりあえず町の中のお店巡りをする事にした。
「きゃあ! アリア似合う~!」
「そ、そんな事ないわよ」
「やっぱりアリアみたいに胸がある程度大きくないと似合わないよねコレって……アタシじゃお子様になっちゃうよ」
「フィーネはこっちの方が似合うわよ。ウエストとか凄く細くてスレンダーだから」
「……………………」
(何この疎外感……フィーネとアリア様は楽しそうに買い物を楽しんでいるけど…………俺は荷物係ですけど……)
二人が何かを買うとオレの腕に重くのしかかる…………
「大変ね。モテる男の子は」
そんなオレに声をかけてくれたのはお店の店員さんだった。ただの荷物持ち機となっていたオレを不憫に思ったのだろうか。
「いや、モテてないです。二人とは学院の同じ学年で学友になります。店員さんが思っているようなそんな関係じゃありませんし……」
色々と事情を話すのが面倒なので現在の状況を簡潔に伝えたつもりだったが……
「フフ、そう思っているのは君だけかも知れないわよ」
店員さんは意味深な事を言うが、オレにはアリア様からの好意は感じられないので「はあ……」しか返事ができなかった。
そして店員さんとの気遣いによるものだが、オレは話を切り上げようとしていたその時!
情報が舞い込んできた。
「でも、こうして君たちのような子ども達だけで来るのは久しぶりだわ。ある噂で子ども達だけで外に出かける事はめっきり減ったのよ。どの店もだけど親御さん同伴で来る事がほとんどなのよ」
店員さんは懐かしそうに語っているが、オレにはどんな噂が気になり、もう少し首を突っ込んだ。
「あの……どのような噂なんですか?」
すると店員さんは神妙な顔をしてオレに答えた。
「半年前から子ども達で遊んでいたら、子どもが姿を消したとか神隠しに合ったとかそんな類の噂が広まって、それからはずっとこんな感じかな。子どもがいなくなるなんて誰も見た事ないし被害者の家族もいないのに…………どこかの貴族から恨みでも買ってんのじゃないかなって話にもなってるけどね。でもやっぱり一度広まった噂は中々消えないし……」
「そうですか……早く無くなるといいですね。そんな噂なんて」
オレは思った事を素直に口に出すと、店員さんはニコッと微笑んでくれた。
両手がパンパンに塞がるぐらいの買い物を終え、お店の外に出た時に二軒隣のお店から誰かがオレを呼んだ。
「ああ~! クライヴやん。ここでなにしてはるん? 可愛い子も連れて人気者やね。うちにも紹介してや」
(この独特な訛りは……)
声をかけられて方を振り向くと、黒色のボブヘアーに黒目の男装しているカエデが、手を振りながらこちらに駆け寄ってきている。
「カエデ! 痛っ!」
オレがカエデの名前を呼んだ瞬間!
目にも止まらぬ速さでフィーネがオレの足を踏み躙っていた。
多分ヤキモチからくる行動だろうがオレにはそう言う性癖が無いので純粋に痛い……
(何でだよ。ただ名前呼んだだけだぞ!)
「クライヴ君、どう言う事か説明していただけますか?」
何故かアリア様もご機嫌斜めな様子だった。
(アリア様は関係ないでしょ! それともフィーネの友達だからオレに怒ってるの? そもそもオレとカエデは顔見知り程度だよ)
「久しぶり? 二年ぶりぐらいかいな? クライヴは背伸びてカッコようなってるなぁ」
パチン!
乾いた音とともに痛みがオレの背中を襲う!
(多分フィーネの仕業だろう……顔がヒクついているので……)
そしてオレはフィーネとアリア様をカエデに紹介した。
「カエデ久しぶり。オレだってよく分かったな」
「そら、忘れるわけあらへんよ……命の恩人なんやさかい」
少し頬を染めてしおらしく言うカエデにまたしてもフィーネが反応した。
パチン!
またしても背中に痛みが走る!
更にアリア様の厳しい視線に心が痛い!
そしてオレはカエデにフィーネとアリア様を紹介した。
「こちらはフィーネとアリアさ……アリアで同じ学院の学友なんだ。今は夏休み期間だから先輩や学友と旅行に来ているんだ」
嘘は言っていないが、噂を調査している事は隠した。
「そうなんや やったらみんな一緒にカフェ行こ?」
「ええ」
「そうしよっか」
「「ね! クライヴ!」」
フィーネとアリア様の圧が凄いです…………
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