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第一章 王国編第一部(初等部)
エピソード? アリアサイド3 アリアの思惑
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私はイーサン皇子とクライヴ君の関係性について確信を持つと言う貴重な収穫を持って馬車に乗り込んだ。
クライヴ君は不思議そうな顔をして、バレていないとでも思っているのだろう。
そして後日、使用人が慌てて駆けつけてきた……
「お嬢様! 失礼してもよろしいでしょうか?」
ドアの外から聞こえると声はかなり息が上がっているようで余程急ぐ事があったのかしら……
「どうぞ。入ってかまわないわよ」
すると、使用人はここぞとばかりに私に早口で説明した。
内容は、ハピスマ(ハッピースマイルポテイトン)の営業日についてで、平日は月、水、金曜日の十五時から十八時まで、第二と第四土曜日は九時から十二時まで営業時間となったらしい。
「そうなのね…………ありがとう、感謝するわ」
私がそう告げると使用人は慌てたようにお辞儀をして部屋から出て行った。
(これで余計な偵察はしなくても揚げたてのフライドポテトが購入できるわね)
そしてその日がやってきた…………
生誕祭期間中にハピスマが開店して私は喜びが込み上げてきた……しかし何と間の悪いことなのか、現在お父様がアランお兄様と私を連れてイーサン皇子の王都観光に同行中だった…………
(ん? これはチャンスよ! クライヴ君とイーサン皇子を会わせて反応を見てみるのよ!)
「お父様、あの……王都観光ですので、お父様の案内が終わりましたら、私もイーサン皇子に若者達にも人気なお店等を紹介したいのですが……よろしいでしょうか?」
私が上目遣いをしながらか弱く訴えかけるようにお父様に言うと、娘に甘いお父様は笑顔を隠しながらも機嫌の良い声色でイーサン皇子に私の案を勧めてくれた。
「おぉ。そうだな堅苦しい事ばかりではイーサン皇子も疲れると思いますので、もしよろしければ夕食前に娘の我が儘に付き合ってくれませんか?」
「いえいえ我が儘なんて! こちらこそ王都の若者が集う場所には興味がありましたのでよろしくお願いします」
人が良いのだろうか、快くイーサン皇子は私に笑顔を向けて答えてくれた。
(よし! これで役者は揃ったわね)
そして十五時過ぎになり、私はイーサン皇子に王都の流行店を案内する事になった。
そうハピスマを!
「なっ! これは凄い変わったと言うか、独特なアイデアな建物ですね? 王都で有名な建築家が建てられたお店なのでしょうか?」
イーサン皇子はお店の中からイングリッシュガーデンと噴水、そして開放感あるテラス席に驚かれているようだった。
(えっ? クライヴ君が設計したと聞いたから、帝国の建築技法ではないのかしら?)
「帝国ではこの様な建物は少ないのでしょうか?」
私がイーサン皇子に質問すると、イーサン皇子は苦笑いをしながら、流石に技術の帝国と言われているが、このようなアイデアのある建築家は聞いた事が無いとの事だった…………
逆に王国では多いのですかと聞かれたので、私もこのお店ぐらいだと思いますと答えた……
(えっ? えっ? どう言う事なの? 帝国の技術が進んでいるから多様な建築技術があると言うわけではないのね……じゃあ何でクライヴ君はそんな設計ができるの?)
また新たな謎が深まったが、今はそれよりもクライヴ君とイーサン皇子を引き合わす事に専念した。
そして私はカウンターに行き、フライドポテトが売り切れていないか確認した。
(とりあえず、イーサン皇子、護衛達五名分、私とフィーネで八個ね)
ちょうどフライドポテトも残り八個だったようですぐに護衛の方へ買い占めるように伝えた。
そして護衛の方に会計を済ませて貰っている間に私はイーサン皇子を席に案内した。
クライヴ君に私達の声が聞こえて、尚且つ庭の絶景が見れるこの席に。
護衛の方から出来立てのフライドポテトが運ばれてきて、そのまま一本だけ毒味をしてもらう。クライヴ君達が作っているから勿論毒などは入ってないけど念の為にね…………
毒味を終えて私達も黄金に輝くフライドポテトを食べた。
(この絶妙な塩加減にカリカリ食感……これよ これなのよフライドポテトは!)
私が久しぶりのフライドポテトを堪能していると、イーサン皇子は驚きのあまりスタッフを呼んでいた。
「こんな美味しいものは帝国でも食べた事がないよ! ぜひ作っている方に感謝を伝えたいのですが……」
私はイーサン皇子の性格上こう言うだろうと予測をしていた。
その後メガネをかけた男性スタッフが急いで奥の部屋に入って行った。
(帝国の皇子との再会となると二階に案内してから話すわよね)
案の定、今の姿では油臭いと言う理由でイーサン皇子を二階の重要人物を招く部屋に案内される事となったようだわ。
イーサン皇子が二階に案内させているのを見届けてから、私はフィーネに一緒にテラスで久しぶりに話をしようと誘うとフィーネは満面の笑顔で頷いてくれた。
フィーネとテラス席でフライドポテト二つ分を一緒にシェアしながら世間話を楽しむ中、クライヴ君がカウンターの奥の扉を開けて厨房から店内に出てきたようだった。
私はすぐに護衛の方を呼び耳元でフィーネに聞こえないように指示をした。
「今クライヴ君がイーサン皇子の所に行くのだけど、階段下で待機をしていてね」
「ちょ、お嬢様! それでは護衛にはなりません!」
当たり前のように護衛の方は否定をした。
他国の王族に何かあれば国際問題に発展するし、そんな事は誰でも承知しているわ。
それでも私は二人の時間を邪魔させたくないという気持ちに駆られて護衛の方に強く言った。
「分かっています! このお店の構造も理解していますからあの階段の下でも充分に警護となるでしょう。これはウィンゲート侯爵家令嬢として命令です。不服ならお父様に伝えていただいても結構です!」
「ですが! 何かあれば国際問題になるかもしれません! 私はお嬢様の命令に応えることはできません!」
結局護衛は納得していないようだが、流石に私にも逆らえる事は出来ないので妥協案としての護衛一名を二階の扉前、そしてもう一名を階段下で警護する事となった。
「アリア…………カッコいい! それにこのお店の事を信頼してくれてありがとう! やっぱりアリアは良い貴族だね」
みんなの事を信頼してくれたのが嬉しかったのか、ニマニマするフィーネの姿を見てその笑顔に私もつられて微笑んだ。
「そうよフィーネ。貴族には良い貴族と悪い貴族がいるから何かあれば私を頼って良いからね。それとリアナにもいつでも頼ってくれて良いからと伝えていてね」
「うん!」
貴族の子どもではあまり見られないフィーネの純粋さに心を洗われて、私はフィーネと会話を楽しんだ。
しばらくすると、クライヴ君とイーサン皇子が一階に戻ってきた。
(どうやらクライヴ君の少し嬉しそうな表情を見ると……親交のある友人? 年齢から考えると親族とかも考えられるわ)
クライヴ君がテラス席いる私達の方を見ていたので、無事に再会できて良かったと思って私も何故か安心したわ。
「アリアどうしたの? 嬉しそうな顔して」
フィーネに言われて気づいたが、私は知らない内に微笑みを浮かべていた。
何でだろう……私にもわからない感情が心の中に渦巻いていた…………
………………………………………………
「アリア? アリアはどこなの?」
お昼前のウィンゲート家の屋敷にはお母様の声響き渡る。
どうやら私を呼ぶ声が聞こえてくるわ。
今日は生誕祭の最終日で、王城でのパーティーに向けて準備をしているらしい。
私にも早めに支度をするようにと呼びに来たのだろうか?
パーティは夕方からなのに……
そしてパーティ後は花火の打ち上げがあり、その花火に見送られるようにウィンゲート侯爵家が帝国からの使者イーサン皇子を王都の外までお送りする事になった。
「アリア様、そろそろメリッサ様の元へ戻られたほうがよろしいかと存じますが……」
「そうね。そろそろ戻るわ」
私はウィンゲート家専属護衛兵の中でも指折りの強さを誇る熟練護衛兵に小剣と格闘術のトレーニングをしてもらった。
もちろん子どもの私では勝てるわけないが、熟練護衛兵の方は十歳児で貴族令嬢とは思えないセンスの良さを驚いていた。
(ごめんなさい。こう見えても地球ではそれなりに訓練を受けていたから……)
そして最終日の王城での社交会に向けて、お風呂で汗を流してからお母様の元へ向かった。
私にとっては退屈な時間だけど社交会に参加しないわけにはいかないわ……
そんな事を思い社交会に参加していたが、帰りに事件が起きる事になるとは……
生誕祭のフィナーレを飾る花火に各国の使者も喜びつつ王都を後にした。
そして私達ウィンゲート家は帝国の紋章が入ったイーサン皇子の馬車を王都の入り口まで送迎する為に馬車で同行していた。
そしてイーサン皇子の馬車からこちらの道に曲がって欲しいと合図があったので先導していた私達の馬車も指示に従った……
「どうされましたかイーサン皇子?」
護衛達の驚く声がこちらの馬車まで届いた。
(もしかして刺客!)
何か異変があったと思い込み私達は馬車から降り、お父様がイーサン皇子に話しかけた。
「急にどうしたのですかイーサン皇子。こちらは帰り道とは関係ないのですが……何かご用がありましたか?」
(イーサン皇子はどこを見ているのかしら…………えっ? クライヴ君たち何でそんなところに?)
イーサン皇子も一瞬驚いた顔をした後に、余裕のない強張った表情に変わってタイミング悪くクライヴ君に声をかけようとしていた。
(まずい! クライヴ君の正体もバレるのは色々と問題が……)
「危ない! そこで何をしているんだ!」
「フィーネ、何をしているの! 皆さんも危険ですよ!」
私はイーサン皇子の言葉を遮り、ドレスの裾を掴んで全力疾走でクライヴ君達の元へ向かった。
お父様とお兄様は私の行動に驚きフリーズしていた。
(後で誤魔化すのが大変だけど、何やってんのよクライヴ君は!)
そして私は二階に向かうと二つの足音に気づいた。
(クライヴ君と、もう一つは女の子……これはフィーネね)
私は息を整えてから足音のする奥の部屋に向かった…………
クライヴ君は不思議そうな顔をして、バレていないとでも思っているのだろう。
そして後日、使用人が慌てて駆けつけてきた……
「お嬢様! 失礼してもよろしいでしょうか?」
ドアの外から聞こえると声はかなり息が上がっているようで余程急ぐ事があったのかしら……
「どうぞ。入ってかまわないわよ」
すると、使用人はここぞとばかりに私に早口で説明した。
内容は、ハピスマ(ハッピースマイルポテイトン)の営業日についてで、平日は月、水、金曜日の十五時から十八時まで、第二と第四土曜日は九時から十二時まで営業時間となったらしい。
「そうなのね…………ありがとう、感謝するわ」
私がそう告げると使用人は慌てたようにお辞儀をして部屋から出て行った。
(これで余計な偵察はしなくても揚げたてのフライドポテトが購入できるわね)
そしてその日がやってきた…………
生誕祭期間中にハピスマが開店して私は喜びが込み上げてきた……しかし何と間の悪いことなのか、現在お父様がアランお兄様と私を連れてイーサン皇子の王都観光に同行中だった…………
(ん? これはチャンスよ! クライヴ君とイーサン皇子を会わせて反応を見てみるのよ!)
「お父様、あの……王都観光ですので、お父様の案内が終わりましたら、私もイーサン皇子に若者達にも人気なお店等を紹介したいのですが……よろしいでしょうか?」
私が上目遣いをしながらか弱く訴えかけるようにお父様に言うと、娘に甘いお父様は笑顔を隠しながらも機嫌の良い声色でイーサン皇子に私の案を勧めてくれた。
「おぉ。そうだな堅苦しい事ばかりではイーサン皇子も疲れると思いますので、もしよろしければ夕食前に娘の我が儘に付き合ってくれませんか?」
「いえいえ我が儘なんて! こちらこそ王都の若者が集う場所には興味がありましたのでよろしくお願いします」
人が良いのだろうか、快くイーサン皇子は私に笑顔を向けて答えてくれた。
(よし! これで役者は揃ったわね)
そして十五時過ぎになり、私はイーサン皇子に王都の流行店を案内する事になった。
そうハピスマを!
「なっ! これは凄い変わったと言うか、独特なアイデアな建物ですね? 王都で有名な建築家が建てられたお店なのでしょうか?」
イーサン皇子はお店の中からイングリッシュガーデンと噴水、そして開放感あるテラス席に驚かれているようだった。
(えっ? クライヴ君が設計したと聞いたから、帝国の建築技法ではないのかしら?)
「帝国ではこの様な建物は少ないのでしょうか?」
私がイーサン皇子に質問すると、イーサン皇子は苦笑いをしながら、流石に技術の帝国と言われているが、このようなアイデアのある建築家は聞いた事が無いとの事だった…………
逆に王国では多いのですかと聞かれたので、私もこのお店ぐらいだと思いますと答えた……
(えっ? えっ? どう言う事なの? 帝国の技術が進んでいるから多様な建築技術があると言うわけではないのね……じゃあ何でクライヴ君はそんな設計ができるの?)
また新たな謎が深まったが、今はそれよりもクライヴ君とイーサン皇子を引き合わす事に専念した。
そして私はカウンターに行き、フライドポテトが売り切れていないか確認した。
(とりあえず、イーサン皇子、護衛達五名分、私とフィーネで八個ね)
ちょうどフライドポテトも残り八個だったようですぐに護衛の方へ買い占めるように伝えた。
そして護衛の方に会計を済ませて貰っている間に私はイーサン皇子を席に案内した。
クライヴ君に私達の声が聞こえて、尚且つ庭の絶景が見れるこの席に。
護衛の方から出来立てのフライドポテトが運ばれてきて、そのまま一本だけ毒味をしてもらう。クライヴ君達が作っているから勿論毒などは入ってないけど念の為にね…………
毒味を終えて私達も黄金に輝くフライドポテトを食べた。
(この絶妙な塩加減にカリカリ食感……これよ これなのよフライドポテトは!)
私が久しぶりのフライドポテトを堪能していると、イーサン皇子は驚きのあまりスタッフを呼んでいた。
「こんな美味しいものは帝国でも食べた事がないよ! ぜひ作っている方に感謝を伝えたいのですが……」
私はイーサン皇子の性格上こう言うだろうと予測をしていた。
その後メガネをかけた男性スタッフが急いで奥の部屋に入って行った。
(帝国の皇子との再会となると二階に案内してから話すわよね)
案の定、今の姿では油臭いと言う理由でイーサン皇子を二階の重要人物を招く部屋に案内される事となったようだわ。
イーサン皇子が二階に案内させているのを見届けてから、私はフィーネに一緒にテラスで久しぶりに話をしようと誘うとフィーネは満面の笑顔で頷いてくれた。
フィーネとテラス席でフライドポテト二つ分を一緒にシェアしながら世間話を楽しむ中、クライヴ君がカウンターの奥の扉を開けて厨房から店内に出てきたようだった。
私はすぐに護衛の方を呼び耳元でフィーネに聞こえないように指示をした。
「今クライヴ君がイーサン皇子の所に行くのだけど、階段下で待機をしていてね」
「ちょ、お嬢様! それでは護衛にはなりません!」
当たり前のように護衛の方は否定をした。
他国の王族に何かあれば国際問題に発展するし、そんな事は誰でも承知しているわ。
それでも私は二人の時間を邪魔させたくないという気持ちに駆られて護衛の方に強く言った。
「分かっています! このお店の構造も理解していますからあの階段の下でも充分に警護となるでしょう。これはウィンゲート侯爵家令嬢として命令です。不服ならお父様に伝えていただいても結構です!」
「ですが! 何かあれば国際問題になるかもしれません! 私はお嬢様の命令に応えることはできません!」
結局護衛は納得していないようだが、流石に私にも逆らえる事は出来ないので妥協案としての護衛一名を二階の扉前、そしてもう一名を階段下で警護する事となった。
「アリア…………カッコいい! それにこのお店の事を信頼してくれてありがとう! やっぱりアリアは良い貴族だね」
みんなの事を信頼してくれたのが嬉しかったのか、ニマニマするフィーネの姿を見てその笑顔に私もつられて微笑んだ。
「そうよフィーネ。貴族には良い貴族と悪い貴族がいるから何かあれば私を頼って良いからね。それとリアナにもいつでも頼ってくれて良いからと伝えていてね」
「うん!」
貴族の子どもではあまり見られないフィーネの純粋さに心を洗われて、私はフィーネと会話を楽しんだ。
しばらくすると、クライヴ君とイーサン皇子が一階に戻ってきた。
(どうやらクライヴ君の少し嬉しそうな表情を見ると……親交のある友人? 年齢から考えると親族とかも考えられるわ)
クライヴ君がテラス席いる私達の方を見ていたので、無事に再会できて良かったと思って私も何故か安心したわ。
「アリアどうしたの? 嬉しそうな顔して」
フィーネに言われて気づいたが、私は知らない内に微笑みを浮かべていた。
何でだろう……私にもわからない感情が心の中に渦巻いていた…………
………………………………………………
「アリア? アリアはどこなの?」
お昼前のウィンゲート家の屋敷にはお母様の声響き渡る。
どうやら私を呼ぶ声が聞こえてくるわ。
今日は生誕祭の最終日で、王城でのパーティーに向けて準備をしているらしい。
私にも早めに支度をするようにと呼びに来たのだろうか?
パーティは夕方からなのに……
そしてパーティ後は花火の打ち上げがあり、その花火に見送られるようにウィンゲート侯爵家が帝国からの使者イーサン皇子を王都の外までお送りする事になった。
「アリア様、そろそろメリッサ様の元へ戻られたほうがよろしいかと存じますが……」
「そうね。そろそろ戻るわ」
私はウィンゲート家専属護衛兵の中でも指折りの強さを誇る熟練護衛兵に小剣と格闘術のトレーニングをしてもらった。
もちろん子どもの私では勝てるわけないが、熟練護衛兵の方は十歳児で貴族令嬢とは思えないセンスの良さを驚いていた。
(ごめんなさい。こう見えても地球ではそれなりに訓練を受けていたから……)
そして最終日の王城での社交会に向けて、お風呂で汗を流してからお母様の元へ向かった。
私にとっては退屈な時間だけど社交会に参加しないわけにはいかないわ……
そんな事を思い社交会に参加していたが、帰りに事件が起きる事になるとは……
生誕祭のフィナーレを飾る花火に各国の使者も喜びつつ王都を後にした。
そして私達ウィンゲート家は帝国の紋章が入ったイーサン皇子の馬車を王都の入り口まで送迎する為に馬車で同行していた。
そしてイーサン皇子の馬車からこちらの道に曲がって欲しいと合図があったので先導していた私達の馬車も指示に従った……
「どうされましたかイーサン皇子?」
護衛達の驚く声がこちらの馬車まで届いた。
(もしかして刺客!)
何か異変があったと思い込み私達は馬車から降り、お父様がイーサン皇子に話しかけた。
「急にどうしたのですかイーサン皇子。こちらは帰り道とは関係ないのですが……何かご用がありましたか?」
(イーサン皇子はどこを見ているのかしら…………えっ? クライヴ君たち何でそんなところに?)
イーサン皇子も一瞬驚いた顔をした後に、余裕のない強張った表情に変わってタイミング悪くクライヴ君に声をかけようとしていた。
(まずい! クライヴ君の正体もバレるのは色々と問題が……)
「危ない! そこで何をしているんだ!」
「フィーネ、何をしているの! 皆さんも危険ですよ!」
私はイーサン皇子の言葉を遮り、ドレスの裾を掴んで全力疾走でクライヴ君達の元へ向かった。
お父様とお兄様は私の行動に驚きフリーズしていた。
(後で誤魔化すのが大変だけど、何やってんのよクライヴ君は!)
そして私は二階に向かうと二つの足音に気づいた。
(クライヴ君と、もう一つは女の子……これはフィーネね)
私は息を整えてから足音のする奥の部屋に向かった…………
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