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第一章 王国編第一部(初等部)

エピソード115 やっぱりフラグ立ちましたよね

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「クライヴ、リアナは引き受ける気でいるみたいだよ。もう事情を聞いているみたいだけど……どうする?」

 モーガンはオレに断れないのを知っていて、苦笑をしながら聞いてきた。

「まぁ、リアナなら助けに行くし、それに困っているのを助けないのは人としてどうかと思……」

「クライヴ! モーガン! 集落まではここから一時間程度の距離らしい! 早く準備をするんだ」

 オレとモーガンの会話を遮り、リアナはもう作業着姿の男性と出ていこうとしていた。

「あのぉ! ご依頼に来たのでは無いのですかぁ!」

 受付のお姉さんがリアナと男性を引き止めようとした。

 
「お姉さん。今は急いでいて。ぼく達が依頼を受けるから少々省いてもらってもよろしいですか?」

「ではここに名前と簡単な内容と報奨金と依頼料をお願いします」

「ハイィ! できました!」

 作業着の男性は急いで依頼書を記入して受付のお姉さんに提出した。

「それでは行くとしようか?」

 オレはスピード感あふれるリアナと作業着の男性と受付嬢に戸惑いながら、集落に向かおうと外に出ようとした。

「頑張れよ! リトルホープのガキンチョども」

「初級冒険者になったばかりだからって油断するんじゃねぇぞ」

「冒険者価格でフライドポテト安く売ってくれよな」

 冒険者協会のソファーに座り歓談していたり、机で打ち合わせをしている色々なグループの冒険者達がオレ達を激励してくれた。
 
(最後の奴は依頼と関係ないが…………)

「「「ありがとうございます」」」

 オレとモーガンとリアナは同時に冒険者の方々にお礼を言い、扉を開けて外に出た。
 その時フィーネもニコッと笑って冒険者の方々に会釈をしていた。
 そしてオレ達は作業着の男性に案内されながら集落を目指した。

「応援されていると感じると嬉しいよね」

 モーガンがそう言うとリアナは頷いた。

「あぁ、ぼく達の事を認めてくれたのだろうか……期待を裏切らないように、これからも精進しないといけないね」

 リアナは期待を受けより一層と瞳が輝きだした。
 もういつでも闘えると言いたげな凛々しい表情をしていた。

「ねぇねぇ、さっきみんなから言われていたリトルホープって何かしら?」

 フィーネが不思議に思った事をオレとリアナも気になっていた。

「それは、ボク達が最年少で最短記録で初級冒険者になったから、これから冒険者として期待できる小さい子ども達と言う事でリトルホープって愛称を付けてくれたんだよ。冒険者協会のみんながぼく達の事を知っているなんて光栄な事だね」

 モーガンが説明をしてくれてオレ達は「なるほど」と頷いた。

 だが先程から話に参加せず、一人シュンと落ち込む、男子ショーンは涙を浮かべていた…………

「ワ、ワシも……はよう初級冒険者になるんじゃあ!」

「「「「あっ…………がんばろう」」」」

 気まずさから、オレ達はそれしか言葉が出なかった。

「おめぇら覚えとけー! ワシャ絶対になるけぇのぉ! 初級冒険者で満足せん! 目指すは中級じゃ!」

 ショーンの怒りの声はリアナに響いたようでした………………

「そうだよ! ぼく達は慢心してはいけない! 目指すべきは中級冒険者! 中等部に入学してからの目標だ! ショーン! 君の想いはぼく達の心に届いているよ」

(勝手に二人で盛り上がっていてくれ…………オレを巻き込まないでくれよ…………)

 なんだかんだで冒険者の方々からの激励もあり、高いモチベーションを保ったまま集落に到着した。

 そこには柵など壊されて、植えていた物を掘り起こされた形跡があり、畑中踏み散らかされて荒らされていた。
 
「あぁ………………畑が………………」

 作業着の男性は膝を落として呆然としていた……

「この足跡は?」

 オレは複数ある動物のような足跡を作業着の男性に聞くが、放心状態で話が聞ける様子ではなかった。

「クライヴ、これはネズミの仕業だよ」

「なるほど、ミッタールマウスか…………よくも集落の人達が育て上げた作物を……」

「そうね、この足跡はミッタールマウスで間違い無いわよ」

(はい! ストップ! オレ一人だけついて行けません! こんな事なら帝国時代にモンスター図鑑読んどけば良かった…………討伐危ない、絶対ダメ!  が信条のオレには必要の無い本だったが、今初めて必要性に気付きました。 まずはあの有名なマスコットキャラクターではないよね? 名前の可愛さから、可愛い系の鼠かな? ハムスター的な? それとも少し大きな兎サイズの鼠かな?)

 何匹いるか探そうにもここは森から離れており、フィーネママイルーラ女王からもらった精霊の加護付きネックレスの効果のサーチは使えない……
 
「まずは周りを見てミッタールマウスがいないか調べよう! ミッタールマウスは暑さに弱いから夏は移動せずに巣を作って過ごす事が多いんだ。だから行動範囲は五百メートル内に巣があるはずだよ」

 モーガンの指示により、集落の村人達へどこから出没したのか情報収集を行い、おおよその位置を特定して、後は鍬や斧などの農具を持った村人と協力して人海戦術で巣を探した。
 
 しばらくすると、ショーンが動く何かを茂みの中から見つけたようだ。

「おい! あそこにおるんじゃねぇか? 動きよったけぇ、多分鼠じゃ!」

「アタシに任せて!」

 フィーネは一本の矢を取り出して茂みに放った。

 ガキン!

(え? 金属音?)

 そして、茂みから勢い良く飛び出して来たのは、一メートル程の大きさの鼠で……顔全体がもはや鼠の域を超えている…………
 そこには名前のような可愛らしいマスコットのような姿ではなく、顔がゴリゴリのバキバキに進化して、まさに鎧と化した強靭な筋肉で覆われていた。
 更にミッタールマウスは何かの中毒? ジャンキーなのか? 口元からは緑の液体のようなものが垂れそうになっている…………

「モーガン………あれは鼠なのか?」

「あぁ、顔は鉄球のような硬さだから、突進には気をつけてね。それと牙は毒を持っているから注意が必要だよ。後は普通の鼠と一緒かな」

(一緒じゃねえよ! 何あのウリィィィィィィって言いそうなネズミは! 知らないよあんな生き物! あんなのが何匹もいるのか?)

 オレ達はミッタールマウスを平地に誘い込むように挑発すると、何と三匹のミッタールマウスが茂みから飛び出て来た。

「集落の人に危害が加わらないように、もう少し下がってから陣形を整えよう」

 そしてオレ達の作戦通り、ミッタールマウスは誘き寄せる事ができ、集落の人達は、茂みにあると予想される巣を探していた。

「見つけたぞ! 火を放つぞ!」

 一人の男性が大声を出すと、茂みの中にある巣らしきものに松明を放り投げた。

「ギーギー」
「ギィーー!」

「これで巣の方は終わったようだな。後はこちらの番だ! フフッ腕がなるよ」

 リアナは解き放たれた獣のように嬉しそうな顔をして長剣を構えていた。

(おい! バトルジャンキー! 騎士道精神とやらはどこにいったんだ…………)

 闘いの合図は、リアナの先制攻撃から始まった。
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