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第一章 王国編第一部(初等部)

エピソード107 まさかの討伐? 天罰?

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 やはりオレは思うんだ。
 汗水流して働く事、コツコツと地道なことだけど大切だと思うんだ。
 楽して儲けるとか、人を利用して自分の手を汚さずに稼ぐとか……
 そんな奴にはいつか天罰が下ると思う。
 そんな教訓も人はすぐ忘れる事もある。

 オレ達は川沿いの草原に薬草採取に来ていた。
 依頼内容は薬草二十個だ。
 
 「フィーネ……草原で薬草探すのって意外と大変だな」

 夏真っ最中で本領発揮と言わんばかりの太陽は、何故か昼前から気温を急上昇させている。
 オレは額から滝のような汗を流しながら作業をしていたが、暑さの為か思うように薬草の採取が捗らない…………

「暑いわよ! もう嫌! 日陰すらないじゃない! アンタ何でこんな依頼受けるのよ!」

 相変わらず、あっという間にすぐ怒りが沸くティフ◯◯ルの並みの早さのフィーネは文句を言いながらも依頼を終わらせようと頑張っていた。

「このまま昼を過ぎるとオレ達って暑さでバターにならないかな?」

「なるわけないでしょ! 気持ち悪いのよアンタ! そんなこと言う暇があるんなら薬草探しなさいよ!」

「オレの方は十三個集めたけど、フィーネは?」

「………………」

 オレの言葉はフィーネに聞こえなかったのか、フィーネからは返事はなかったので、もう一度言った。

「オレの方は十三個集めたけど、フィーネは?」

「うるさいわね! 五個よ!」

(何で五個の人が態度がでかいのだろう……)

 フィーネは先程の冒険者協会で絡まれたり、受付の対応等で既に不機嫌な状態での炎天下での薬草採取依頼だったので、もうかなり怒りは最高潮に達していた。
 オレは、もう少しだから頑張ろう! と言いかけたが逆効果の恐れもあり、心の中にそっとしまって黙々と作業を進めた。

 そして薬草採取も依頼通り二十個集まり、オレ達は街に戻ろうと足を進めた。
 しばらく歩くと正面に人影が見える。

(あれ? まだ街までは一キロぐらい離れているから、門番さんもいないはずなんだけどなぁ……)

 オレは不思議に思っていながらそのまま進もうとすると、突然だけどフィーネに手を掴まれて止められた。

「さっきクライヴに絡んできたアイツらよ。下品な声が聞こえてくるわ。それも複数」

「えっ? もしかして腹いせにオレ達の依頼を失敗させようと?」

「さぁ? 分からないわ。ただ……アタシ達もいつでも闘える準備はしときましょう」

「えっ! 無理無理闘うとか! 素直に降参しよう! 命は大事だよ」

「ハァッ! アンタ何言ってんのよ! せっかく汗水流して頑張ったのにまた一からやり直しなんか嫌よ!」

 フィーネの決意は固く、場合によっては闘う事になりそうだ……ここはオレの交渉術で対処が必要だ。

 そしてガラの悪いモブ達一応冒険者が現れた。
 リーダーとその仲間達パーティーは、フル出動の五名でオレ達の前に立っていた。

「オイ! さっきはよくもやってくれたな! 仕返しに来てやったぜ。お前ら確か薬草採取の依頼を受けてたよな。俺達に全て渡してくれるよな」

 ゲラゲラと笑いながら話しかけてくる姿はまさに盗賊に見えてきた…………
 
「ハイ! 渡します……と言いたいところですが、この薬草全てを渡すと、そのまま帰っていただけるのでしょうか?」

「それとお前達が誠意を見せて謝れば許してやるよ」

(何だ、頭の一つや二ついくらでも下げましょう。むしろ土下座でもいいですよ? 見せますよ日本人の美しい土下座を)

「嫌よ! 子ども相手に恥ずかしくないの? 情けないわね」

 そう! フィーネは怒りが最高潮に達していた……そこに怒りの原因の一つであるガラの悪いモブが登場したので、あっという間にすぐにキレてしまった。

(フフフ……オレの交渉術が台無しだぜ……まぁコイツらには俺の交渉術はあまり効果なかったがな!)

 オレは震えそうな膝を、全然怖くないですよ的なドヤ顔をする事で心を落ち着かせようとドヤ顔マインドコントロール自律神経をコントロールするを行った。

 しかし物事はどんどんと悪い方向に進み、フィーネの一言でガラの悪いモブ達の表情から笑顔が消えてオレ達を睨んでいた。

「オイ! 口の聞き方に気をつけな!」

「アンタ達がでしょ! アンタ達って本当に反面教師の鏡ね! こんなダメな大人になりたくないし、冒険者に憧れる子ども達が真似しないように気をつけないといけないわ! ハッキリ言って害虫だわ!」

 沸騰中のフィーネの怒りにオレも手がつけられない……
 ガラの悪いモブがいつ襲って来てもいいように、オレは左腰にかけてあるサーベルの鞘に手を置いた。

「どうやらお仕置きではなく、かなり痛い目に合いたいらしいなぁ! 腕や肋骨の一本や二本折れるのを覚悟しとけよ!」

(ひぃぃ! 腕が二本折れちゃうと、もう両手が使えずご飯も着替えも困りますぅ! お許しくだされぇ!)

 オレは完全に恐怖で身体が震えだしたが、骨折だけは避けたい! 
 愚策だがとにかく安全第一で守り続けている隙を見て脱出しようと考えていた。
 フィーネは闘う気満々だったが……

 まずはリーダーの声でお決まり通りの下っ端達が襲ってくる。オレ達はガラの悪いモブ達のメンバー構成に戸惑った。

(何でオール前衛? 脳筋なの? この人達は?)

 両手斧に皮の鎧を身につけているまさに蛮族のような下っ端一号。
 視界も狭くなって鈍足の鉄のフルプレートアーマに細剣というミスマッチな下っ端二号。
 まさに世紀末! ヒャッハーと言いそうな上半身裸に、ロックバンドのような前が開ききったベストを身につけ片手斧を持った下っ端三号。
 一番よく分からないのは下っ端四号だ……コイツも鉄のフルプレートアーマーを着ているが、ブキを持たずファイティングポーズをしている。

(いやいや、フルプレートで素手ってどう言う事? 闘えるの? 誰が見てもおかしいだろ!)

 やはりまともな装備はガラの悪いモブで、皮の鎧と長剣を装備してニヤニヤとオレ達を見ていた。
 そんなニヤニヤと見ている事にさすがのフィーネも我慢の限界のようで、有無を言わさず先制攻撃を行った。

「精霊よ力を貸して! ウィンドブロー!」

 現代科学では証明できない空気の塊 !
 フィーネの精霊魔法でフルプレートの二号を吹き飛ばして、そのままピクリとも動かなくなった。

「フィーネ……殺してはないよな?」

「バカみたいに重たそうな鎧を着てるから気絶してるんじゃないの?」

 これで残りは蛮族風の一号とヒャッハー三号と絶対に装備の選択を間違えた四号とガラの悪いモブのリーダーの四名だ。
 先制攻撃は上手くいったが、フィーネは警戒されてしまい、更に数的不利な状況をどう打開すれば良いかオレは考えていた。

(あと二人気絶させれたら、もう一度交渉して闘いを中止にできないだろうか……モブリーダーは強そうだし、痛いの嫌だし……どうするオレ!)

 そんなオレの願いが叶ったのか、街の方から馬の足音が聞こえてきた。暫くすると馬に乗ってやってくる小さな集団が砂埃を上げながらやってくる。
 三名の護衛を引き連れて先頭の馬に乗っていていたのはランパード家長男のテリー様だった。

「まさかと思っていたけど本当だったとは……
 クライヴに会いに冒険者協会に行ったんだけど、受付の女性から聞いたよ。変な冒険者に目をつけられたってね」

 こんな場所でテリー様と一年振りの再開となった。
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