上 下
117 / 228
第一章 王国編第一部(初等部)

エピソード102 歩み寄るきっかけは?

しおりを挟む
 どぶぼ、こんにぢばぁ、グラウィヴェクライヴべず……どうやだオデば、イヴーバ女王邸イルーラ女王邸べ療養中だっだだじい。
 何故ごんな話し方がど言うど……………………

 ………………二時間前………………

「フィーネ? 誤解してると思うけど、ここからの景色を眺めていただけだからな……」

 オレは大泣きしているフィーネを宥めるようとアタフタしながら説明をしていると、フィーネの顔が徐々に般若のように変化していく…………

「アンタねぇ! 二日間も起きなくて心配して、やっと起きたと思ったら飛び降りるような動きをしていて、ふざけてんじゃ無いわよ! アタシの心配した気持ちを返しなさいよ! このバカ!」

 般若フィーネは容赦なくオレの両頬に思いっきりビンタをした……
 それだけ心配をしていたのだろう…………
 オレが目を覚ますかどうかわからず不安に思いながら…………………………
 このビンタは、フィーネがどれだけ心配したのかとオレに言っているビンタだから、甘んじて受けよう!

…………………………………………………………………………フィーネは合計三十発のビンタをしてオレの顔がおたふく顔に腫れあがり今に至った。


「アンタ、喋り方オカシイわよ! 気持ち悪いからエルフの薬草を塗ってあげるわ! それぐらいコレですぐ治るわ! 言っとくけど……アタシのせいじゃないからね! 心配させたアンタが悪いのよ!」

 そう言いながら、フィーネは手のひらサイズの壷に入った軟膏のようなものをオレの両頬に塗り出した。塗ってくれる時のフィーネの顔はとても優しい表情をしていて、まるで母親が我が子を愛でるように穏やかなフィーネがいた。

 そしてエルフの薬草を塗ってしばらくすると嘘のように頬の痛みや熱さが和らいでいき、二十分ぐらいで完治していた…………

(えっ? 何これ凄い! 怪我した時用に欲しいんですけど! 日本の湿布を超えている効果、まさにファンタジーならではだなぁ。エルフって秘境の地にいて、古くから伝承された凄い回復薬とか持ってそうだもんな。よく分からないけど……)

 オレは効果に驚き両頬に触れても痛みはなく、そんなオレの姿を見てフィーネは、凄いでしょと言いたげなドヤった顔をしていた。

(ドヤるなフィーネ……お前にも非があると思うぞ……)

 そしてオレは一旦フィーネに廊下で待ってもらい、持ってきた衣服に着替えて廊下にいるフィーネの元に行った。

「お母様達がクライヴが起きたら朝食に誘いなさいって言ってたから早く行くわよ」

「えっ? いきなりイルーラ女王やフィーネのお姉さん達と一緒に朝食なのか? さすがに緊張感するなぁ」

 オレの発言にフィーネはクスッと笑いオレの手を取って食堂に向かった。

「大丈夫よクライヴ。この前の出来事でお姉様達からも気に入られていると思うから」

「はぁ……」

 フィーネの一言にオレは溜め息を吐き、食堂に連れて来られた……途中に出会った使用人さん達からは驚いた顔をされたが、何で驚かれたのか分からないので食堂の扉を開けるのが余計に不安になってきた…………

「もう! 何してんのよ! お母様達が待っているから行くわよ!」

 オレは緊張を和らげようと扉の前で深呼吸をしていると、有無を言わさずフィーネが扉を開けた。
 扉の向こうには食堂の大きな窓から陽の光が降り注ぎこみオレは眩しさに一瞬目を閉じた。
 そしてゆっくりと目を開くと一本の木を平らにしたテーブルと木の椅子があり、また全ての食器やカトラリー類が木製で統一されていてエルフのこだわりのようなものを感じた。

「クライヴくん、ごめんなさいね。せっかく来ていただいたのに大変な目に合わせてしまい……フォレストリーフの女王として謝罪いたします」

 朝食の前にイルーラ女王がオレの元まで来て、謝罪の言葉の後にオレに対して頭を下げた。

「お母様!」

 三姉妹ともイルーラ女王の行動に驚きを隠せなかった。オレもだが……

「あの、女王様。頭を上げてくれないでしょうか。今回の事はあのストーカーエルフが悪い訳でして……フィーネに固執するあまりに支離滅裂になっているストーカーエルフでしたので……もしフィーネに危害があったらと思うと…………大変な事になりますので……その色々と……この都のエルフの皆さまの事を思うと王女より人間が怪我して良かったのかなと思いますが……僕も無事でしたのでこんな事を言えるのだと思いますが……」

 オレは拙い言葉を紡ぎながらイルーラ女王に伝えると、目の前のイルーラ女王だけでなく、長女のルーナ様と次女のエアリーナ様までも涙を流されていた。
 勿論背後にも鼻を啜る音が聞こえている……

「もう! どれだけ良い子なのクライヴくんは! 私の事はお母さんと呼んで良いって言ったじゃない!」

 無茶振りを要求するイルーラ女王に対してどう答えるのが正解なのか…………

「いえ、あの、さすがに女王様を母上と呼ぶのは……」

 するとイルーラ女王の目が輝いて何かを企んだような微笑みを見せた。

「わかりました。では女王様と呼ぶのはやめて下さい。クライヴくんは娘に危害を加えそうなエルフ」
から守るために命をかけて守ってくれた方ですので、もう家族同然です! お母さんと呼びづらいのでしたら、これからは母上、もしくはお母様と呼んで下さい。もし嫌だと言えば……聡明なクライヴくんなら分かりますね?」

 イルーラ様は話し終えた後に、顎に指を当てながら首を横に傾けて可愛らしくオレにニコリと微笑んでくれた。しかしオレはイルーラ女王の目の奥に力強さを感じた。呼びなさいと言われているようなプレッシャーを…………

 オレは状況が分からずにフリーズしていると、イルーラ女王の少し後ろにいるルーナ様とエアリーナ様が壊れた人形のように首をガクガクと何度も頷いていた。後ろからも音が聞こえるので、オレは後ろを振り向くとフィーネも真顔で何度も頷いていた…………

(これは断るとオレの身に何か危険な事が起こると言う事ですね……なるほど断る事ができない状況と言うことか…………)

「分かりましたイルーラ様と」

「ダメよ」

 イルーラ女王はオレの言葉を遮り、微笑みから表情が真顔に変わり冷たい声でオレに言い放った……

(えっ! 即拒否! 先程と雰囲気が違いすぎますよイルーラ女王! 本当に怖いです! 威圧感が半端ないですよ……)

「では、分かりました。失礼かと思いますが、イルーラ母様と呼ばせていただいてもよろしいでしょうか?」

 オレがそう言うと、イルーラ女王はパッと花が開いたような笑顔を向けてオレを思いっきり抱きしめて来た。

「勿論よ! 本当のお母さんになれたらもっと嬉しいわ」

 ちゃっかりと言葉のボディーブローを入れて来るイルーラ女王のしたたかさにオレは怖さを感じつつも抱きしめられた時にイルーラ女王からキンモクセイのような優しくも甘い香りに包まれる心地良さを感じていた。
 オレは安心感の中の緊張感という不思議な気持ちに戸惑いつつこの状況を打開するべくイルーラ女王に言葉を伝えた。
 
「イルーラ母様、そんなに抱きしめられると苦しいです」

 オレの言葉にイルーラ女王は残惜しそうに手を離した。

「可愛いクライヴくんに免じて今日は許します! 
 それと話が戻りますがストーカーエルフについては他のエルフ達にも迷惑をかけていたようで、今回の件はクライヴくんが退治した事になっています。で
 ですから、この都のエルフ達はクライヴくんに対しての風当たりは来た時よりもマシになっていると思うわ。
 後でフィーネと散歩をしてみると良いわよ。 
 クライヴくんがこの都、フォレストリーフを好きになって欲しいし、この都のエルフ達も含めて」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ゲーム中盤で死ぬ悪役貴族に転生したので、外れスキル【テイム】を駆使して最強を目指してみた

八又ナガト
ファンタジー
名作恋愛アクションRPG『剣と魔法のシンフォニア』 俺はある日突然、ゲームに登場する悪役貴族、レスト・アルビオンとして転生してしまう。 レストはゲーム中盤で主人公たちに倒され、最期は哀れな死に様を遂げることが決まっている悪役だった。 「まさかよりにもよって、死亡フラグしかない悪役キャラに転生するとは……だが、このまま何もできず殺されるのは御免だ!」 レストの持つスキル【テイム】に特別な力が秘められていることを知っていた俺は、その力を使えば死亡フラグを退けられるのではないかと考えた。 それから俺は前世の知識を総動員し、独自の鍛錬法で【テイム】の力を引き出していく。 「こうして着実に力をつけていけば、ゲームで決められた最期は迎えずに済むはず……いや、もしかしたら最強の座だって狙えるんじゃないか?」 狙いは成功し、俺は驚くべき程の速度で力を身に着けていく。 その結果、やがて俺はラスボスをも超える世界最強の力を獲得し、周囲にはなぜかゲームのメインヒロイン達まで集まってきてしまうのだった―― 別サイトでも投稿しております。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...