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第一章 王国編第一部(初等部)
エピソード101 ルール違反
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「熱っ! 痛っ……痛ぁぁぁ!」
オレの右肩は燃えるような熱さを感じて、その後に遅れて激痛が走り出した。そして生暖かい水のような物が滴り落ちる。
「ここからだと誰にも見えないぜ。わざわざ殺されに来てくれてありがとな人間!」
ストーカーは満面の笑顔でオレにそう言うと手に持っているナイフをオレに見せた。血に濡れたナイフを…………
オレはすぐに自分の右肩を確認すると、結構な勢いで血が流れており、すぐにストーカーと距離を取り左手でサーベルを持って服の袖を大きく切った。
そして左手で傷口を圧迫しながら、フィーネの元へ逃げて中止にしてもらおうと森から出ようと走った。
「卑怯だぞ。ルール違反じゃ無いか!」
さすがにオレもルールを無視し続けて追いかけて来るストーカーに怒りが沸いた。
「うるさい! 汚らわしい人間がこの神聖な地に足を踏み入れるだけでも不快だ! 更にフィーネ様まで危害を加えようとするお前なんか死ねば良い!」
ストーカーは頭が壊れているのか、さらにルールを無視し続けて、矢尻を潰してない矢でオレの足に矢を放った。不慣れな土地、木の根や蔦等で中々逃げきれないオレには全てを避ける事はできず、徐々に小さな傷が腕や足に増えてくる。
ストーカーはオレの逃げる姿に笑いながら、まるでゲーム感覚でハンティングを楽しんでいるのだろうか?
わざと急所を外してオレを痛めつけて弄んでいるように思えた。
やがてオレが木漏れ日で輝いていた道沿いに近づくと、ストーカーの笑い声が消えた…………体感にして笑いが消えた三秒後にオレの右の太ももの外側にピリッと痛みが走った。
そして太ももからはじんわりと暖かいものが足先までつたっていった……
(本気でオレを殺す気か? こいつ頭おかしいだろ! 殺される前にフィーネの元に何としても辿り着いてやる!)
オレは【身体強化】でストーカーから逃げ切り、フィーネの元に走り続けた。
「待ちやがれ人間!」
さすがにオレが速く走れると思っていなかったのだろう。ストーカーの焦りの声が遥か後方から聞こえた。
少し身体が成長したおかげで【身体強化】の効果時間が五秒程度に延びて、約五十メートルは差が開いたので、後十メートルぐらいでフィーネが見える所まで戻れそうだ。
【身体強化】が切れて呼吸も荒く足もガクガクと悲鳴をあげて足を止めそうになるが、オレはとにかく死にたく無い思いで気力だけ走った。
ジョギングぐらいの速度しか出ないがとにかく走り続けて、オレはやっと森から抜け出しフィーネから見える場所に戻ってきた。
そしてフィーネはオレの傷だらけの姿にただ事では無いと驚いた顔で急いで走ってきていた。
オレは助かったと安堵して膝に手をつき意識を失わないようにゼェゼェと呼吸を繰り返して肺に酸素を取り込んでいた。
まさに満身創痍だがこれで何とか助かったと思った時………………一本の矢がオレの右の太ももに突き刺さった…………
俺は苦痛に顔を歪めるが、矢が飛んできた方向を見るとストーカーがナイフを持ちオレの首を狙って飛びかかってきた。
「キャー! クライヴ!」
(ストーカーは興奮していて、フィーネがいる事に気づいてないのだろう。このストーカーの、運命はどうなるのだろう。さすがにイルーラ女王も怒るだろう)
オレは自分のこの状況より、とても冷静にストーカーの未来を想像していた………………
怒りが恐怖を上回った事で身体はボロボロだが頭や心はとてもスッキリとしている。
今のオレには子ども騙しは通じないし、ヒューゴに鍛えられたおかげで心のリミッターが外れた身体はボロボロでも無意識に動き出す。
「【クロノス】」
そこはオレだけが動く事を許された百分の一秒の緩やかな刻の世界。
この限られた一秒半でストーカーがナイフを持っている右手に、左手の掌底で下から打ち上げて軌道をずらした。
そしてガラ空きとなった喉元にそのまま左の肘を叩き込んだ。
「…………ゲェェッホ……」
ストーカーは右手でナイフを離さず持っているが、左手で喉を押さえて頭が少し下がっていた。
オレは倒れそうな身体を奮い立たせて、ストーカーの垂れ下がった後頭部にサーベルの側面をチョンと当てた。
「もういいだろ? フィーネも見ているぞ」
「えっ」
オレの言葉にストーカーの間の抜けた声が響く……次の瞬間フィーネはストーカーに向けて精霊魔法を唱えていた。
「絶対に許さない! ウインドブロー」
「グワァァァ!」
ストーカーは叫び声とともに十メートルほど吹き飛ばされて気絶していた。
オレはやっと助かったと張り詰めた緊張の糸が切れて、その場で右腕と右足を庇いながら座り込んだ。
座り込んだその瞬間! 突然の寒気に襲われ身体の震えが止まらなくなった。
「クライヴ! 大丈夫! ねぇクライヴ!」
フィーネはオレの元に駆け寄り泣きそうな顔をしている。
(フィーネについて来なかったらこんな目にあって無かったのかな? でもフィーネは喜んでいたし……あのストーカー全然ルール守ってなかったぞ、人じゃなくて……エルフとして最低限なヤツだな。フィーネまた心配かけさせたな。やっぱり女の子の涙を見るのは心が痛いや)
色々な言葉が頭の中をよぎっていく、 今のオレの状況はあまりよろしくないと自分でもわかっていた。
血が流れ過ぎて満身創痍なオレの身体は休息を欲していた。
瞼が重くなり少しずつ眠たくなってきた。
「フィーネ……身体が寒くて震えるから、少し助けて欲しいかな。それとごめんな心配かけさせて、フィーネをまた泣かせてしまったな。あと……少しだけ……眠らせて……くれ…………」
「イヤー! クライヴ! 目を覚ましてよクライヴ! お願いだから! 誰か! 誰かクライヴを助けて!」
人間は不思議な生き物で瞼は重くて閉じていし、眠たくて意識もぼんやりとして現在進行形で徐々に気を失っていくが最後まで耳から聞こえる情報だけは入ってくる。フィーネが泣きながら助けを呼ぶ声が…………………………………………
「ファァァッ」
オレは目を覚まして大きな欠伸をすると学生寮の自分の部屋とは違うログハウスような場所にいた。目の前の天井は高く、身体を起こして周りを見渡すと外との壁はベッド周りの寝室スペースのみで、後は外との壁はなく木や枝葉や蔦で自然の壁やバルコニーのようなものができていた。
なんとも不思議な作りをした建物だ。
オレは右腕と右脚は痛むが、何とか動けそうなので、ベッドから降りて自然のバルコニーの方へ歩いて行った。
どうやらこの建物はオレが想像していた以上に高くて、縄文杉の二倍? タワーマンションの二十階? 程の高さがあり、目の前の木の枝には手の届きそうな所に小鳥が達が不思議そうな顔をしてオレを見ている。
高所恐怖症の人は絶対にここから見下ろす事が出来ないと思うがオレは意外にも高さには恐怖はないので、見下ろす先にはそれぞれ個性のあるツリーハウスが広がっていた。
オレはしばらく下を向いて景色を眺めていると頭の上に何か登ってきた。
鳴き声からしてリスのような小動物だろう。
オレはその小動物をそっと両手で持って少し身体を前に伸ばして目の前の枝に下ろした。
その時ちょうど扉を開ける音が聞こえた。
「クライヴ! 何してんのよ! ちょっとこっちに来なさいよ!」
多分最高に間が悪い時にツンツンフィーネさんが現れたのではないだろうか?
絶対に何か誤解をしているので、説明しようとオレは振り向いたが、目の前のフィーネは顔面蒼白になっていた…………
「何で……アタシがここに連れてこなければ良かったの…………い、いのぢを、グスッ……粗末びぃ…………グスッ………………粗末びぃしなぃじぇよぉ…………ふ、ふぇ~ん…………嫌だがりゃねぇ…………」
(どうしよう…………かなり悪い勘違いをなされており、説明した後にフィーネ様の雷が落ちるヤツだよ…………)
オレの右肩は燃えるような熱さを感じて、その後に遅れて激痛が走り出した。そして生暖かい水のような物が滴り落ちる。
「ここからだと誰にも見えないぜ。わざわざ殺されに来てくれてありがとな人間!」
ストーカーは満面の笑顔でオレにそう言うと手に持っているナイフをオレに見せた。血に濡れたナイフを…………
オレはすぐに自分の右肩を確認すると、結構な勢いで血が流れており、すぐにストーカーと距離を取り左手でサーベルを持って服の袖を大きく切った。
そして左手で傷口を圧迫しながら、フィーネの元へ逃げて中止にしてもらおうと森から出ようと走った。
「卑怯だぞ。ルール違反じゃ無いか!」
さすがにオレもルールを無視し続けて追いかけて来るストーカーに怒りが沸いた。
「うるさい! 汚らわしい人間がこの神聖な地に足を踏み入れるだけでも不快だ! 更にフィーネ様まで危害を加えようとするお前なんか死ねば良い!」
ストーカーは頭が壊れているのか、さらにルールを無視し続けて、矢尻を潰してない矢でオレの足に矢を放った。不慣れな土地、木の根や蔦等で中々逃げきれないオレには全てを避ける事はできず、徐々に小さな傷が腕や足に増えてくる。
ストーカーはオレの逃げる姿に笑いながら、まるでゲーム感覚でハンティングを楽しんでいるのだろうか?
わざと急所を外してオレを痛めつけて弄んでいるように思えた。
やがてオレが木漏れ日で輝いていた道沿いに近づくと、ストーカーの笑い声が消えた…………体感にして笑いが消えた三秒後にオレの右の太ももの外側にピリッと痛みが走った。
そして太ももからはじんわりと暖かいものが足先までつたっていった……
(本気でオレを殺す気か? こいつ頭おかしいだろ! 殺される前にフィーネの元に何としても辿り着いてやる!)
オレは【身体強化】でストーカーから逃げ切り、フィーネの元に走り続けた。
「待ちやがれ人間!」
さすがにオレが速く走れると思っていなかったのだろう。ストーカーの焦りの声が遥か後方から聞こえた。
少し身体が成長したおかげで【身体強化】の効果時間が五秒程度に延びて、約五十メートルは差が開いたので、後十メートルぐらいでフィーネが見える所まで戻れそうだ。
【身体強化】が切れて呼吸も荒く足もガクガクと悲鳴をあげて足を止めそうになるが、オレはとにかく死にたく無い思いで気力だけ走った。
ジョギングぐらいの速度しか出ないがとにかく走り続けて、オレはやっと森から抜け出しフィーネから見える場所に戻ってきた。
そしてフィーネはオレの傷だらけの姿にただ事では無いと驚いた顔で急いで走ってきていた。
オレは助かったと安堵して膝に手をつき意識を失わないようにゼェゼェと呼吸を繰り返して肺に酸素を取り込んでいた。
まさに満身創痍だがこれで何とか助かったと思った時………………一本の矢がオレの右の太ももに突き刺さった…………
俺は苦痛に顔を歪めるが、矢が飛んできた方向を見るとストーカーがナイフを持ちオレの首を狙って飛びかかってきた。
「キャー! クライヴ!」
(ストーカーは興奮していて、フィーネがいる事に気づいてないのだろう。このストーカーの、運命はどうなるのだろう。さすがにイルーラ女王も怒るだろう)
オレは自分のこの状況より、とても冷静にストーカーの未来を想像していた………………
怒りが恐怖を上回った事で身体はボロボロだが頭や心はとてもスッキリとしている。
今のオレには子ども騙しは通じないし、ヒューゴに鍛えられたおかげで心のリミッターが外れた身体はボロボロでも無意識に動き出す。
「【クロノス】」
そこはオレだけが動く事を許された百分の一秒の緩やかな刻の世界。
この限られた一秒半でストーカーがナイフを持っている右手に、左手の掌底で下から打ち上げて軌道をずらした。
そしてガラ空きとなった喉元にそのまま左の肘を叩き込んだ。
「…………ゲェェッホ……」
ストーカーは右手でナイフを離さず持っているが、左手で喉を押さえて頭が少し下がっていた。
オレは倒れそうな身体を奮い立たせて、ストーカーの垂れ下がった後頭部にサーベルの側面をチョンと当てた。
「もういいだろ? フィーネも見ているぞ」
「えっ」
オレの言葉にストーカーの間の抜けた声が響く……次の瞬間フィーネはストーカーに向けて精霊魔法を唱えていた。
「絶対に許さない! ウインドブロー」
「グワァァァ!」
ストーカーは叫び声とともに十メートルほど吹き飛ばされて気絶していた。
オレはやっと助かったと張り詰めた緊張の糸が切れて、その場で右腕と右足を庇いながら座り込んだ。
座り込んだその瞬間! 突然の寒気に襲われ身体の震えが止まらなくなった。
「クライヴ! 大丈夫! ねぇクライヴ!」
フィーネはオレの元に駆け寄り泣きそうな顔をしている。
(フィーネについて来なかったらこんな目にあって無かったのかな? でもフィーネは喜んでいたし……あのストーカー全然ルール守ってなかったぞ、人じゃなくて……エルフとして最低限なヤツだな。フィーネまた心配かけさせたな。やっぱり女の子の涙を見るのは心が痛いや)
色々な言葉が頭の中をよぎっていく、 今のオレの状況はあまりよろしくないと自分でもわかっていた。
血が流れ過ぎて満身創痍なオレの身体は休息を欲していた。
瞼が重くなり少しずつ眠たくなってきた。
「フィーネ……身体が寒くて震えるから、少し助けて欲しいかな。それとごめんな心配かけさせて、フィーネをまた泣かせてしまったな。あと……少しだけ……眠らせて……くれ…………」
「イヤー! クライヴ! 目を覚ましてよクライヴ! お願いだから! 誰か! 誰かクライヴを助けて!」
人間は不思議な生き物で瞼は重くて閉じていし、眠たくて意識もぼんやりとして現在進行形で徐々に気を失っていくが最後まで耳から聞こえる情報だけは入ってくる。フィーネが泣きながら助けを呼ぶ声が…………………………………………
「ファァァッ」
オレは目を覚まして大きな欠伸をすると学生寮の自分の部屋とは違うログハウスような場所にいた。目の前の天井は高く、身体を起こして周りを見渡すと外との壁はベッド周りの寝室スペースのみで、後は外との壁はなく木や枝葉や蔦で自然の壁やバルコニーのようなものができていた。
なんとも不思議な作りをした建物だ。
オレは右腕と右脚は痛むが、何とか動けそうなので、ベッドから降りて自然のバルコニーの方へ歩いて行った。
どうやらこの建物はオレが想像していた以上に高くて、縄文杉の二倍? タワーマンションの二十階? 程の高さがあり、目の前の木の枝には手の届きそうな所に小鳥が達が不思議そうな顔をしてオレを見ている。
高所恐怖症の人は絶対にここから見下ろす事が出来ないと思うがオレは意外にも高さには恐怖はないので、見下ろす先にはそれぞれ個性のあるツリーハウスが広がっていた。
オレはしばらく下を向いて景色を眺めていると頭の上に何か登ってきた。
鳴き声からしてリスのような小動物だろう。
オレはその小動物をそっと両手で持って少し身体を前に伸ばして目の前の枝に下ろした。
その時ちょうど扉を開ける音が聞こえた。
「クライヴ! 何してんのよ! ちょっとこっちに来なさいよ!」
多分最高に間が悪い時にツンツンフィーネさんが現れたのではないだろうか?
絶対に何か誤解をしているので、説明しようとオレは振り向いたが、目の前のフィーネは顔面蒼白になっていた…………
「何で……アタシがここに連れてこなければ良かったの…………い、いのぢを、グスッ……粗末びぃ…………グスッ………………粗末びぃしなぃじぇよぉ…………ふ、ふぇ~ん…………嫌だがりゃねぇ…………」
(どうしよう…………かなり悪い勘違いをなされており、説明した後にフィーネ様の雷が落ちるヤツだよ…………)
応援ありがとうございます!
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