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第一章 王国編第一部(初等部)

エピソード99 姉達の圧迫面接とストーカー気味の不審者

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「エアリーナ姉様! ク、クライヴは、そ、その、か、か、彼氏とかそう言うのじゃないんです!」

 フィーネはリンゴのような真っ赤な顔でエアリーナ様に訂正を求めている。

 しかしエアリーナ様はそんな事はお構いなしに少し深めの突っ込んだ質問をしてきた。

「じゃあフィーネにとってクライヴさんという方はどういった存在なの? エルフを利用する人間? 私達からフィーネを引き離そうとする人? フィーネにとって外の世界は怖い所なのよ。貴女がクライヴさんは何でもないただの友達なら、ここは人間との親交を望まない者が多くいますのでクライヴさんには帰ってもらいなさい!」

 エアリーナ様は厳しい表情でフィーネを叱り、フィーネは口をへの字にして泣きそうになるのを我慢している。
 その時何故かオレはフィーネの前に立ちエアリーナ様とフィーネの会話を遮った。

「あの~申し遅れましたが、クライヴと申します。 
 えっと……本日はお招きいただき……ありがとうございます。
 えっと、僕はフィーネさんの事を利用しようとも、皆さんから引き離そうとも思っていません。
 確かにエルフやハーフエルフだからと言って悪さをする人間もいます。
 過去には人間やドワーフやエルフ、魔族等色々な出来事があり現在の状況になっている事だと思いますが、僕はそんな種族の違いで差別をしたり悪者と判断するのではなく、みんなが仲良く手を取り合える世界になればと思います。
 だから僕の手の届く範囲だけでも! 
 そんな種族間のしがらみは無くしたいですし、フィーネさんが外の世界でも問題なく過ごせれるよう守ります! 
 あっ……仲間達も一緒でフィーネさんがハーフエルフと知らせてないですけど、ハーフエルフと知っても何ら変わりないと思いますし……だから僕一人で守りきれなくても仲間がいますので安心していただければと…………」

 本当に何も考えずに身体が勝手に動いたので、とにかくエアリーナ様の逆鱗に触れぬように、オレはぎこちない笑顔と低姿勢でフィーネの事は安心して下さいエアリーナ様と心でつぶやきながら言葉を慎重に選んだ。

 エアリーナ様は厳しい表情のままオレの目を見て問いかけた。

「ではクライヴさんに聞きます。クライヴさんにとってフィーネはどのような存在なのでしょうか?  
 お二人はどういった関係なのでしょうか?」

(来ると思った質問だけど、まさかのエアリーナ様の高圧的な態度の面接官並の対応はやめて! そんな圧迫面接に立ち向かうのは無理だから! ほらプレッシャーを与えるから頭の中が真っ白になって考えてた言葉が飛んだから!)

 オレは背中に冷や汗をかきながら、たどたどしく言葉を紡ぎエアリーナ様に伝えた。

「ぼ、僕は、フィーネさんは初めて出来た友達です。フィーネさんを含めていつも五人で行動しているのですが、フィーネさんはいつも明るく笑顔が素敵なムードメーカーのような存在です。僕に対してはフィーネさんは叱咤激励してくれたり、自分の事のように心配してくれるので一緒にいて心地良い存在です。
 この感情が僕の初めての友達だから大切にしたいのか……それとも友達以上の気持ちなのか正直言ってわからないです。
 僕には…………気になる女性がいまして…………と言っても一度しか会った事がないですし、その方がどこにいるのかも分かりません…………
 その方の事が気になるのですが、最近はフィーネさんの事も気になる自分の心境の変化に戸惑っております。
 まだ僕達は若いのでもう少し大人になってから考えていけば良いのではと考えていますが、恋であれ友情であれ大切な人には変わりないので絶対にフィーネさんを傷つけたくないという気持ちだけは変わらないと思います」

 エアリーナ様はオレの言葉を聞いて一つ息を吐いた……そして表情を和らげて後ろに振り向いた。

「姉様、クライヴさんの言葉を聞いていたでしょ。私はクライヴさんを信用しますがお姉様はどう思いましたか?」

(えっ? もう一人のお姉様、陰で聞いてたの? 何この面接官達……怖すぎるよ)

 するとエアリーナ様が振り向いた方からイルーラ女王によく似ているスレンダーでモデルのように顔が小さく足が長くて、エルフの特徴的の耳をした美女が現れた。

(イルーラ女王もだけどお姉様方もすごく美しいなぁ……あっ三姉妹ともサラサラなストレートなロングヘアーなんだ)

 多分今のオレは鼻の下が伸びている自信がある。
 三姉妹みんな容姿は優れているが、成人女性と思われる長女は大人の女性らしさを感じる美女で、まさにエルフの中のエルフという言葉がピッタリな方だった。
 そんなオレの姿を見たフィーネは、オレの足の爪先に二、三度グリグリと踏み付けているが全く何ら気にならない! 

「すみません。このような試すような事をして……私が長女のルーナ・エルフィーナ・フォレストリーフと申します。私はエルフですので見た目は十八歳歳ぐらいに見えると思いますが本当の年齢は内緒ですからね」

「はぁ……あっクライヴと申します」

 ルーナ様がこの場の緊張感を解してくれて、ついオレは気が緩んだ返事をしてしまった。

「実はクライヴさんが来てから精霊達が楽しそうに話してくれて殆ど内容を聞いてたの。こんなにもフィーネの事を考えてくれるとは珍しい人ですね。私もクライヴさんは信用できる人間だと思いました」

 ルーナ様は笑顔で答えてくれて、その後少しだけ困った顔をした。

「でもね……実はフィーネの事を好きな子がいて…………一方的にフィーネにつきまとっている子で悪い子ではないんだけど……フィーネも少し困っているし…………
 私達のように外の世界では人間がエルフを捕まえて利用すると考えるエルフが多いから、その子も人間嫌いなのよ。
 それにフィーネが帰って来るのを何処かで知ったようだし、もしかしたら近々会うと思うから頑張ってね」

(何を頑張れば良いのですか? それにルーナ様……フィーネにつきまとうその方にフィーネが困っている…………それはいわゆるストーカーではありませんか?)

「はい! フィーネさんを困らせないように、また少しでも全ての人間が悪人では無い事を知ってもらう為にその方と話し合います」

 オレはよくわからない相手に向けての意気込みをルーナ様に伝えると、ルーナ様はニコッと笑顔を見せて、ルーナ様とエアリーナ様は先に屋敷に入り、オレとフィーネが玄関前に取り残される状況となった…………

「フィーネ、これってどういう事? お姉様達から嫌われた…………そんな事はないよな?」

 オレは状況が分からずフィーネに聞くと、フィーネは溜め息を吐いてオレに答えた。

「多分お姉様達からの最後の試練ね…………そこの木の陰にルーナ姉様がさっき言ってた奴がいるわ…………なんか気分が滅入るわ……」

 フィーネがこんなに嫌がるのは珍しいなぁと思って、オレはその方と話し合う事でお互いの理解を深めて分かり合えるだろうと安易に考えていた。

「俺のフィーネに近づくな人間め! 死に晒せぇ!」

 いきなり木の陰から飛び出したフィーネのストーカーはオレに矢を放っていた…………しかも心臓と頭を目掛けて…………

(えっ! 話し合いすらさせてくれずにいきなり殺しにくる? しかも俺のフィーネってヤバすぎだろ、このストーカー)
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