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第一章 王国編第一部(初等部)
エピソード72 親の援護射撃
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何事!
オレは鞘に手を当てて、悲鳴のする方へ駆け出そうとしたが、イルーラ女王が手で制した。
「大丈夫ですよ。多分こちらに向かって来ます」
イルーラ女王はニコニコとオレの顔を見ている。
何だかその笑顔がモーガンの悪巧みの表情に似ていて……怖い。
すると奥から精霊と一緒に一週間振りに再会する女の子が走ってきた。
「ちょっとクライヴ! アンタ! なんなのよ!」
相変わらずのフィーネさんは何故か顔を真っ赤していきなりツンで登場した。
(コレが本当にイルーラ女王の娘なのか? というか第三王女がこれでいいのか?)
「えっと、お、お久しぶり」
「久しぶりじゃないわよ! アンタ説明しなさいよ!」
オレは全く何の事か分からない。
すると精霊がふわふわとオレとフィーネの側に来た。
【あの! 僕はフィーネさんとの関係については少し慎重に考えたいところがありまして、初めて出来た友達ですから焦らず考えたいです。
それにこの王国では平民なので、一人の女性としか結婚はしません。
先程も精霊が読み取りましたが、フィーネさんに対する想いは、最初は友情が僕の心を占めていたのですが、最近は友達以上の感情を持つ事もありまして……絶対にフィーネさんを傷つけたくないので、これからどう接していけばと正直悩んでおります。それに結婚に関して相手の気持ちもありますので!】
何と精霊は先程言ったオレの言葉を録音していて、更に最後にオレが言ってない一文まで付け加えると言う編集をして、スピーカーのように再生した。
流石にコレはオレも恥ずかしかった……
「いや、あの、これはだな……」
オレが困っているとイルーラ女王は良かれと思ったのか余計な事を言った。
「フィーネ! そんなのじゃクライヴくんに嫌われるわよ! クライヴくんは正直にあなたへの気持ちを打ち明けてくれたわ」
(いや、最後の一文オレ言ってませんけど)
イルーラ女王に怒られフィーネは少し勢いが弱まった。
「あなたはクライヴくんの事どう思っているの? 帰って来てからクライヴくんの事ばかり話をしてたじゃない」
母の顔になったイルーラ女王の余計な言葉は続く…………
「く、お母様まで…………ア、アタシはお母様とお父様のような二人の仲良い姿に憧れてて、ア、アタシもそうなれたら良いなぁと…………ク、クライヴの事を言ってるんじゃないわよ!」
今日のフィーネは髪の毛をロールアップしているので耳まで真っ赤にしているのがハッキリとわかる。
オレはそんなフィーネの珍しい髪型と真っ赤になった顔を見ていた。
「何見てんのよアンタ! か、勘違いしないで欲しいわ!」
「フィーネ! クライヴくんに謝りなさい! どうしてクライヴくんの前だとそんな言葉遣いになるの?」
ますますイルーラ女王はフィーネを追い込んでいく。
(フィーネに言葉で伝えよう)
「勘違いじゃないし、正直今のオレにはフィーネとどう接すればいいのか悩んでるんだ。フィーネがオレの事を嫌っていたり、ただの異性の友達と思っていてくれたら何でもない事なんだ。
もし違うとしたら…………今のオレじゃフィーネを傷つけてしまうんだ…………だからオレ自身に時間が必要なんだ」
「……キよ最初から」
フィーネはボソっと呟いて後ろを向いた。
しかしロールアップのせいでうなじも真っ赤になっているのが丸わかりだ。
「まぁ、まだオレ達は十歳だし、これからいろいろな事を経験して気持ちも変わるかも知れないからな」
実際のオレは前世も含めて精神年齢が高いので、この気持ちは変わらないだろう……前進させるか抑え込みフィーネに良い人が出逢えるのを待つのか。
背中を向けていたフィーネは突然オレの方へ振り向いて、涙を流しながら言った。
「変わらないわよ! アンタみたいな色々な種族に会えて嬉しいとか、争い事が嫌いだからみんなが仲良くできたら平和だとか、そんな変態なんてこの世界の全種族の中でアンタ以外いないわよ! だから勝手に気持ちが変わるとか言わないで!」
(こんな可愛い女の子を泣かしてしまい、オレの心はフィーネ一筋だったらどんなに楽だったのだろう…………心の中にはアネッサとの出会いが占めてる割合は大きい……もう一度アネッサに会ってアネッサへの思いが本物か二人で危機を脱出した為による一時的なモノなのか…………そこを解決しないと前には進めないんだが…………)
そう考えていても身体は自然とフィーネの頭を二回ポンポンとしてから撫で、オレの口からは自然と「ありがとうフィーネ」という言葉が出ていた。
「ク、クラェヴゥの……ズビー……ぐせびぃ……ア、アダジィの……ズビー……あだまぁを……ズビー……ポンポンするなぁ……ズビー……」
フィーネは、リンゴのように真っ赤になりながらも涙と鼻水混じりの声でオレに言った。
フィーネの顔は涙と鼻水と笑顔と泣き顔のグシャグシャな顔をして嬉しいのか、恥ずかしいのか、驚いたのか……何と言えば良いのか複雑な表情をしていた。
「あらあら、フィーネったら。やっとクライヴくんに素直になれたわね」
フィーネが落ち着いたところでフィーネに優しく声をかけるイルーラ女王は、娘の恋を応援する母親の顔を見せていた。
「お、お母様、アタシは、その、言葉の綾と言いますか、えっと、少し感情的になってしまい、誤解を生じてしまい……えっと……」
フィーネはもう恥ずかしさの限界でしどろもどろになっており、パンク寸前だった。
そしてイルーラ女王はオレにそっと耳打ちをした。
「本当は長女や次女にフィーネを外の世界に行かさないでと説得するように言われていたの。
それでフィーネが落ち込んじゃって……だから私が実際にクライヴくんに会って判断する事にしたの。
クライヴくんの本音も聞けたし、今までフィーネに対してハーフエルフとしての利用価値とか考えていないし、一人の女の子として守ってくれていたから安心して送り出せるわ。
これからもフィーネをよろしくね」
そう言ってイルーラ女王はフィーネの側に行き声をかけた。
「外の世界はエルフやハーフエルフにとっては住みにくく危険も多いわ……だからクライヴくんに守ってもらいなさい。そしてフィーネ自身も強くなりなさい。守ってもらうだけではクライヴくんの心を射止めるどころか振り向いてもくれないわよ! これは私の経験談よ」
(あの、最後の一言が余計なんですよ……さっきの精霊もでしたが、最後の一言がプレッシャーなんですってオレには……)
何故かフィーネはイルーラ女王の言葉で頷き何かを決心した表情になった。
そして、イルーラ女王は精霊にオレ達を元の場所に戻すようにお願いをした。
「クライヴくん。フィーネが王女という事は外の世界では言わないでね」
「当たり前ですよ」
そんなやり取りをした瞬間! 精霊が光輝きオレ達は眩しさのあまり目を閉じた…………目を開けるとテントの前にフィーネとともに立っていた。
最高に気不味い状況だ。
少し立ち話をして落ち着くにしては寒いし、このままテントの中に入るのもなぁ……
「もう夜なのね」
フィーネの言葉にオレは反応した。
「確かに、オレは夜の森を誘導され、フォレストリーフに着いたら明るく昼みたいな所で、どういう事なんだ?」
オレの頭の中で疑問符だらけが浮かんでいる。
「あぁアレね。フォレストリーフは神秘的な森の都と言われているでしょ。そう言われる理由は精霊達が、他の種族から身を隠すように結界をしているの。エルフやハーフエルフのエルフ族しか精霊は見えないし、精霊もエルフ族しか興味を示さないし、力を貸さないの。だからアンタは精霊に気に入られた珍しい人間ね」
オレ達は冷たい夜風でいつの間にか落ち着きを取り戻していた。
そして、明日から王都へ戻る為、テントに入り眠る事にした……
オレは鞘に手を当てて、悲鳴のする方へ駆け出そうとしたが、イルーラ女王が手で制した。
「大丈夫ですよ。多分こちらに向かって来ます」
イルーラ女王はニコニコとオレの顔を見ている。
何だかその笑顔がモーガンの悪巧みの表情に似ていて……怖い。
すると奥から精霊と一緒に一週間振りに再会する女の子が走ってきた。
「ちょっとクライヴ! アンタ! なんなのよ!」
相変わらずのフィーネさんは何故か顔を真っ赤していきなりツンで登場した。
(コレが本当にイルーラ女王の娘なのか? というか第三王女がこれでいいのか?)
「えっと、お、お久しぶり」
「久しぶりじゃないわよ! アンタ説明しなさいよ!」
オレは全く何の事か分からない。
すると精霊がふわふわとオレとフィーネの側に来た。
【あの! 僕はフィーネさんとの関係については少し慎重に考えたいところがありまして、初めて出来た友達ですから焦らず考えたいです。
それにこの王国では平民なので、一人の女性としか結婚はしません。
先程も精霊が読み取りましたが、フィーネさんに対する想いは、最初は友情が僕の心を占めていたのですが、最近は友達以上の感情を持つ事もありまして……絶対にフィーネさんを傷つけたくないので、これからどう接していけばと正直悩んでおります。それに結婚に関して相手の気持ちもありますので!】
何と精霊は先程言ったオレの言葉を録音していて、更に最後にオレが言ってない一文まで付け加えると言う編集をして、スピーカーのように再生した。
流石にコレはオレも恥ずかしかった……
「いや、あの、これはだな……」
オレが困っているとイルーラ女王は良かれと思ったのか余計な事を言った。
「フィーネ! そんなのじゃクライヴくんに嫌われるわよ! クライヴくんは正直にあなたへの気持ちを打ち明けてくれたわ」
(いや、最後の一文オレ言ってませんけど)
イルーラ女王に怒られフィーネは少し勢いが弱まった。
「あなたはクライヴくんの事どう思っているの? 帰って来てからクライヴくんの事ばかり話をしてたじゃない」
母の顔になったイルーラ女王の余計な言葉は続く…………
「く、お母様まで…………ア、アタシはお母様とお父様のような二人の仲良い姿に憧れてて、ア、アタシもそうなれたら良いなぁと…………ク、クライヴの事を言ってるんじゃないわよ!」
今日のフィーネは髪の毛をロールアップしているので耳まで真っ赤にしているのがハッキリとわかる。
オレはそんなフィーネの珍しい髪型と真っ赤になった顔を見ていた。
「何見てんのよアンタ! か、勘違いしないで欲しいわ!」
「フィーネ! クライヴくんに謝りなさい! どうしてクライヴくんの前だとそんな言葉遣いになるの?」
ますますイルーラ女王はフィーネを追い込んでいく。
(フィーネに言葉で伝えよう)
「勘違いじゃないし、正直今のオレにはフィーネとどう接すればいいのか悩んでるんだ。フィーネがオレの事を嫌っていたり、ただの異性の友達と思っていてくれたら何でもない事なんだ。
もし違うとしたら…………今のオレじゃフィーネを傷つけてしまうんだ…………だからオレ自身に時間が必要なんだ」
「……キよ最初から」
フィーネはボソっと呟いて後ろを向いた。
しかしロールアップのせいでうなじも真っ赤になっているのが丸わかりだ。
「まぁ、まだオレ達は十歳だし、これからいろいろな事を経験して気持ちも変わるかも知れないからな」
実際のオレは前世も含めて精神年齢が高いので、この気持ちは変わらないだろう……前進させるか抑え込みフィーネに良い人が出逢えるのを待つのか。
背中を向けていたフィーネは突然オレの方へ振り向いて、涙を流しながら言った。
「変わらないわよ! アンタみたいな色々な種族に会えて嬉しいとか、争い事が嫌いだからみんなが仲良くできたら平和だとか、そんな変態なんてこの世界の全種族の中でアンタ以外いないわよ! だから勝手に気持ちが変わるとか言わないで!」
(こんな可愛い女の子を泣かしてしまい、オレの心はフィーネ一筋だったらどんなに楽だったのだろう…………心の中にはアネッサとの出会いが占めてる割合は大きい……もう一度アネッサに会ってアネッサへの思いが本物か二人で危機を脱出した為による一時的なモノなのか…………そこを解決しないと前には進めないんだが…………)
そう考えていても身体は自然とフィーネの頭を二回ポンポンとしてから撫で、オレの口からは自然と「ありがとうフィーネ」という言葉が出ていた。
「ク、クラェヴゥの……ズビー……ぐせびぃ……ア、アダジィの……ズビー……あだまぁを……ズビー……ポンポンするなぁ……ズビー……」
フィーネは、リンゴのように真っ赤になりながらも涙と鼻水混じりの声でオレに言った。
フィーネの顔は涙と鼻水と笑顔と泣き顔のグシャグシャな顔をして嬉しいのか、恥ずかしいのか、驚いたのか……何と言えば良いのか複雑な表情をしていた。
「あらあら、フィーネったら。やっとクライヴくんに素直になれたわね」
フィーネが落ち着いたところでフィーネに優しく声をかけるイルーラ女王は、娘の恋を応援する母親の顔を見せていた。
「お、お母様、アタシは、その、言葉の綾と言いますか、えっと、少し感情的になってしまい、誤解を生じてしまい……えっと……」
フィーネはもう恥ずかしさの限界でしどろもどろになっており、パンク寸前だった。
そしてイルーラ女王はオレにそっと耳打ちをした。
「本当は長女や次女にフィーネを外の世界に行かさないでと説得するように言われていたの。
それでフィーネが落ち込んじゃって……だから私が実際にクライヴくんに会って判断する事にしたの。
クライヴくんの本音も聞けたし、今までフィーネに対してハーフエルフとしての利用価値とか考えていないし、一人の女の子として守ってくれていたから安心して送り出せるわ。
これからもフィーネをよろしくね」
そう言ってイルーラ女王はフィーネの側に行き声をかけた。
「外の世界はエルフやハーフエルフにとっては住みにくく危険も多いわ……だからクライヴくんに守ってもらいなさい。そしてフィーネ自身も強くなりなさい。守ってもらうだけではクライヴくんの心を射止めるどころか振り向いてもくれないわよ! これは私の経験談よ」
(あの、最後の一言が余計なんですよ……さっきの精霊もでしたが、最後の一言がプレッシャーなんですってオレには……)
何故かフィーネはイルーラ女王の言葉で頷き何かを決心した表情になった。
そして、イルーラ女王は精霊にオレ達を元の場所に戻すようにお願いをした。
「クライヴくん。フィーネが王女という事は外の世界では言わないでね」
「当たり前ですよ」
そんなやり取りをした瞬間! 精霊が光輝きオレ達は眩しさのあまり目を閉じた…………目を開けるとテントの前にフィーネとともに立っていた。
最高に気不味い状況だ。
少し立ち話をして落ち着くにしては寒いし、このままテントの中に入るのもなぁ……
「もう夜なのね」
フィーネの言葉にオレは反応した。
「確かに、オレは夜の森を誘導され、フォレストリーフに着いたら明るく昼みたいな所で、どういう事なんだ?」
オレの頭の中で疑問符だらけが浮かんでいる。
「あぁアレね。フォレストリーフは神秘的な森の都と言われているでしょ。そう言われる理由は精霊達が、他の種族から身を隠すように結界をしているの。エルフやハーフエルフのエルフ族しか精霊は見えないし、精霊もエルフ族しか興味を示さないし、力を貸さないの。だからアンタは精霊に気に入られた珍しい人間ね」
オレ達は冷たい夜風でいつの間にか落ち着きを取り戻していた。
そして、明日から王都へ戻る為、テントに入り眠る事にした……
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