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第一章 王国編第一部(初等部)
エピソード? アリアサイド 中編
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外に出ると少しだけ街が赤く染まりつつあり、時刻は十六時を回っていた。
私の本日の目的は済んだので後は街をブラブラと歩いて護衛達に見つけてもらおう。
「お嬢様! こちらにいらっしゃいましたか。急に見失いましたので何か事件に巻き込まれていないか心配しておりました。お嬢様を見失うなんて護衛として恥ずべき行為です。本当に申し訳ありません」
護衛達は皆青ざめた表情だった。
(ごめんなさい! どうしても外せない用事だったので……)
「すみませんでした……ついはしゃいでしまい…………それでは最後に学生通りに少しだけ行ってから帰りましょうか」
そして私は馬車の中から外の風景を何も考える事なく、ただ眺めていた。
「えっ? 何かしら行列が出来てるけど……こんな所に」
今まで見た事のない光景だったので、私は馭者に停まるよう伝えて、護衛を連れて行列を覗いてみた。
「あれはいったい何かしら?」
「いえ……我々にも分かりませんが……何やら学生が多いので……学生に人気のある何かがあるのでしょうか?」
護衛は私の質問に悩みながら答えていた。
「では、お兄様にこの事をお話したいので、私達も行きましょうか?」
「お嬢様! 私達が先導致しますので、私達から離れぬようお気をつけて下さい」
私は護衛の厳重ガードの中行列に並んだ。
(ん? 何かしら、この懐かしいジャンクフードの香りは?)
少しずつ私の順番が近づくにつれ、疑いが確信に変わっていった。
そして、私の順番となり護衛が一つ購入した……私は抑えきれない気持ちで毒見もさせずに一口ポテトを食べた…………
「えーっ!」
私にこんな大きな声が出る事と、このポテトの味、二つの意味で驚いた!
(これは私の母国にあるフライドポテトそのものだわ! この世界にはこのようなジャンクフードは見た事ないわ……もしかして私のような境遇の人がいるのかしら)
私の声を聞きつけて厨房の扉が開き、カウンター越しに少年が覗いていた。
(先程の声が厨房まで届いていたのね…………恥ずかしい…………)
「お嬢様! 急に声を上げてどうされました!」
護衛達もとても珍しい私の大声に驚いたようで、何かあったのではと心配そうに見つめている……
「いえ、あまりにも美味しかったので……」
(少し苦しい言い訳だが、本当に久しぶりに食べれて、とても美味しくて正直涙が出そうだわ)
「毒味もなしに、もう食べられたのですか? 万が一体調を崩されると……我々の立場にもなって下さい……」
護衛達は気が気でないだろう。護衛中に毒味をせずに食べる事を黙認して侯爵家令嬢が体調でも崩したら、間違いなく職を失うだろう…………私が原因でもお父様は厳しい方なので……護衛としての任務の最中に何故そのような状況になったのだと言って間違いなくクビだろう。
「ごめんなさい。同年代の方達も食べていたので、興味を持ってしまい軽率な行動をしてしまいました」
私は素直に護衛に謝った。
「いえ、我々も気が緩んでおりましたので……」
(気が緩んでちゃダメでしょ。でも護衛を撒いたり、突然ポテトを食べたりと本当に迷惑をかけてしまったわ)
そして夕方が近づいてきたので家に戻る事にした。
「ただいま戻りました」
お母様がエントランスで待っていて私を目一杯抱きしめられ、お母様のグラマラスな象徴が私を圧死寸前まで追い込んだ。
(いつか私もお母様のような体型になれるのだろうか?)
そんな事を考えるながら意識が遠のいていく寸前で、やっと私を解放してくれた。
「無事で良かったわ。お帰りなさい。今日は何だか楽しい事があったようねアリア」
お母様は微笑みながら私を見ていた。
「はい、お母様。王都の街はとても興味深く色々な物に出会えて楽しかったです」
私は元々は笑顔が溢れる天使のようだと言われていたようだが、この世界に来てからはスパイ時代の癖で、表情が乏しくなったと言われていた。
今日は少し表情が綻んでいて、お母様もその私の姿に嬉しかったのだろう。
私は専属のメイドに今日の出来事を伝えると
「お嬢様が美味しいと言ったフライドポテトを食べてみたいです!」
と言っていたので、私の世話をしている使用人達にフライドポテトを買ってくる事を約束した。
次の日、お父様が新しい護衛を雇ってきた。
前回の護衛より、グレードアップしており、騎士団から何名か引き抜いているようだった。また一人だけ、平民上がりなのか髪型や服装や礼儀等が違う変わった人がいた。
そして敷地内に屋内型訓練所を増設して、手合わせが行える正方形なリング、打ち込み用の案山子、弓矢の的当て、鏡でフォームを確認する場所など等、様々な訓練ができる場所に変わっていて、私には丁度良いタイミングでの出来事だった。
更に私自身がまた誘拐されないように必要最低限の護身術を学べれるようにと習い事に護身術が追加された。
(これで人が居ない時にスパイの頃と現在の動きの確認等が出来るわね)
そして、三日後の土曜日。
今日は武器屋に武器を受け取りに行く為に、お父様に外出のお願いをした。
外出理由は以前に学生通りで食べたフライドポテトが美味しかったので、私がお世話になっている使用人にも食べさせたいと伝えたら、お父様は笑顔で外出を許可してくれた。
朝食後、フライドポテトが売り切れにならない為にすぐに出発した。
目的地に着くと、初めてフライドポテトを買った日は改造した移動販売車だったのに、この四日間の間で立派なお店に変わっていた…………
(こんな短期間で二階建ての立派な店舗が立つ程売り上げているの? どんな人が経営しているのか興味深いわね……しかし今は売り切れる前に急がないと)
馬車から降ろしてもらい、お店に急ごうとするが、護衛達は周りに危険がないか確認しながらゆっくりと歩いている。
「早く買わないと売り切れてしまうわ」
私は護衛達にそう言って、お店に向かった。
「お嬢様、そんな開店早々に伺うのは……人の目もありますので、くれぐれも注意してくださいね」
身の危険と侯爵家の御令嬢としてのマナーの二つの意味で注意された。
(ちょっと、この作りは何? テイクアウト用と、イートイン用のカウンターが一体となり、外からでも、中でも購入できる。やはり私の母国のジャンクフードの店のシステムを真似ているわ!)
「お嬢様、そろそろ中に入りませぬか? お嬢様がこのような店に来るのは目立ってしまいます」
どうやら私はしばらくフライドポテトの購入を躊躇っているように見えていたらしい。
「………………えぇ…………そうするわ」
私は扉を開けて、店内に入った。
「えぇー!」
そこは、均一に机と椅子が並べられ、外にはテラス席がついていた。
この世界にはまだ無いレイアウトに驚きを隠せなかった……それは私と同じ境遇の人がいる疑惑がより確信に近づいた。
「お嬢様! 先程から一体どうなされたのですか?」
「すみません。このお店の内装や、外のお庭が珍しくて……恥ずかしながら驚いてしまいました」
相変わらず苦しい言い訳だが護衛達は私を箱入り娘だと思っているので納得していた。
私はカウンターに向かい注文をした。
「フライドポテト四十個で三十五個は持ち帰り用で、可能なら急いで貰えませんか? 出来立てを使用人達に食べさせたいので…………残りの五つはこちらで食べさせていただきます」
私の発言に、背の高い男の子のように見える少し自己主張が強い女性の象徴の持ち主が驚き、奥の部屋に駆け込んで行った。
そしてもう一人の女の子のような顔をした男の子は冷静に会計や商品に時間がかかるので、空いている席に自由に座るようにとスムーズな対応をしたいた。
(貴族慣れをしている? 言葉遣いや冷静な対応、品のある所作、伯爵家の御子息か?)
私の本日の目的は済んだので後は街をブラブラと歩いて護衛達に見つけてもらおう。
「お嬢様! こちらにいらっしゃいましたか。急に見失いましたので何か事件に巻き込まれていないか心配しておりました。お嬢様を見失うなんて護衛として恥ずべき行為です。本当に申し訳ありません」
護衛達は皆青ざめた表情だった。
(ごめんなさい! どうしても外せない用事だったので……)
「すみませんでした……ついはしゃいでしまい…………それでは最後に学生通りに少しだけ行ってから帰りましょうか」
そして私は馬車の中から外の風景を何も考える事なく、ただ眺めていた。
「えっ? 何かしら行列が出来てるけど……こんな所に」
今まで見た事のない光景だったので、私は馭者に停まるよう伝えて、護衛を連れて行列を覗いてみた。
「あれはいったい何かしら?」
「いえ……我々にも分かりませんが……何やら学生が多いので……学生に人気のある何かがあるのでしょうか?」
護衛は私の質問に悩みながら答えていた。
「では、お兄様にこの事をお話したいので、私達も行きましょうか?」
「お嬢様! 私達が先導致しますので、私達から離れぬようお気をつけて下さい」
私は護衛の厳重ガードの中行列に並んだ。
(ん? 何かしら、この懐かしいジャンクフードの香りは?)
少しずつ私の順番が近づくにつれ、疑いが確信に変わっていった。
そして、私の順番となり護衛が一つ購入した……私は抑えきれない気持ちで毒見もさせずに一口ポテトを食べた…………
「えーっ!」
私にこんな大きな声が出る事と、このポテトの味、二つの意味で驚いた!
(これは私の母国にあるフライドポテトそのものだわ! この世界にはこのようなジャンクフードは見た事ないわ……もしかして私のような境遇の人がいるのかしら)
私の声を聞きつけて厨房の扉が開き、カウンター越しに少年が覗いていた。
(先程の声が厨房まで届いていたのね…………恥ずかしい…………)
「お嬢様! 急に声を上げてどうされました!」
護衛達もとても珍しい私の大声に驚いたようで、何かあったのではと心配そうに見つめている……
「いえ、あまりにも美味しかったので……」
(少し苦しい言い訳だが、本当に久しぶりに食べれて、とても美味しくて正直涙が出そうだわ)
「毒味もなしに、もう食べられたのですか? 万が一体調を崩されると……我々の立場にもなって下さい……」
護衛達は気が気でないだろう。護衛中に毒味をせずに食べる事を黙認して侯爵家令嬢が体調でも崩したら、間違いなく職を失うだろう…………私が原因でもお父様は厳しい方なので……護衛としての任務の最中に何故そのような状況になったのだと言って間違いなくクビだろう。
「ごめんなさい。同年代の方達も食べていたので、興味を持ってしまい軽率な行動をしてしまいました」
私は素直に護衛に謝った。
「いえ、我々も気が緩んでおりましたので……」
(気が緩んでちゃダメでしょ。でも護衛を撒いたり、突然ポテトを食べたりと本当に迷惑をかけてしまったわ)
そして夕方が近づいてきたので家に戻る事にした。
「ただいま戻りました」
お母様がエントランスで待っていて私を目一杯抱きしめられ、お母様のグラマラスな象徴が私を圧死寸前まで追い込んだ。
(いつか私もお母様のような体型になれるのだろうか?)
そんな事を考えるながら意識が遠のいていく寸前で、やっと私を解放してくれた。
「無事で良かったわ。お帰りなさい。今日は何だか楽しい事があったようねアリア」
お母様は微笑みながら私を見ていた。
「はい、お母様。王都の街はとても興味深く色々な物に出会えて楽しかったです」
私は元々は笑顔が溢れる天使のようだと言われていたようだが、この世界に来てからはスパイ時代の癖で、表情が乏しくなったと言われていた。
今日は少し表情が綻んでいて、お母様もその私の姿に嬉しかったのだろう。
私は専属のメイドに今日の出来事を伝えると
「お嬢様が美味しいと言ったフライドポテトを食べてみたいです!」
と言っていたので、私の世話をしている使用人達にフライドポテトを買ってくる事を約束した。
次の日、お父様が新しい護衛を雇ってきた。
前回の護衛より、グレードアップしており、騎士団から何名か引き抜いているようだった。また一人だけ、平民上がりなのか髪型や服装や礼儀等が違う変わった人がいた。
そして敷地内に屋内型訓練所を増設して、手合わせが行える正方形なリング、打ち込み用の案山子、弓矢の的当て、鏡でフォームを確認する場所など等、様々な訓練ができる場所に変わっていて、私には丁度良いタイミングでの出来事だった。
更に私自身がまた誘拐されないように必要最低限の護身術を学べれるようにと習い事に護身術が追加された。
(これで人が居ない時にスパイの頃と現在の動きの確認等が出来るわね)
そして、三日後の土曜日。
今日は武器屋に武器を受け取りに行く為に、お父様に外出のお願いをした。
外出理由は以前に学生通りで食べたフライドポテトが美味しかったので、私がお世話になっている使用人にも食べさせたいと伝えたら、お父様は笑顔で外出を許可してくれた。
朝食後、フライドポテトが売り切れにならない為にすぐに出発した。
目的地に着くと、初めてフライドポテトを買った日は改造した移動販売車だったのに、この四日間の間で立派なお店に変わっていた…………
(こんな短期間で二階建ての立派な店舗が立つ程売り上げているの? どんな人が経営しているのか興味深いわね……しかし今は売り切れる前に急がないと)
馬車から降ろしてもらい、お店に急ごうとするが、護衛達は周りに危険がないか確認しながらゆっくりと歩いている。
「早く買わないと売り切れてしまうわ」
私は護衛達にそう言って、お店に向かった。
「お嬢様、そんな開店早々に伺うのは……人の目もありますので、くれぐれも注意してくださいね」
身の危険と侯爵家の御令嬢としてのマナーの二つの意味で注意された。
(ちょっと、この作りは何? テイクアウト用と、イートイン用のカウンターが一体となり、外からでも、中でも購入できる。やはり私の母国のジャンクフードの店のシステムを真似ているわ!)
「お嬢様、そろそろ中に入りませぬか? お嬢様がこのような店に来るのは目立ってしまいます」
どうやら私はしばらくフライドポテトの購入を躊躇っているように見えていたらしい。
「………………えぇ…………そうするわ」
私は扉を開けて、店内に入った。
「えぇー!」
そこは、均一に机と椅子が並べられ、外にはテラス席がついていた。
この世界にはまだ無いレイアウトに驚きを隠せなかった……それは私と同じ境遇の人がいる疑惑がより確信に近づいた。
「お嬢様! 先程から一体どうなされたのですか?」
「すみません。このお店の内装や、外のお庭が珍しくて……恥ずかしながら驚いてしまいました」
相変わらず苦しい言い訳だが護衛達は私を箱入り娘だと思っているので納得していた。
私はカウンターに向かい注文をした。
「フライドポテト四十個で三十五個は持ち帰り用で、可能なら急いで貰えませんか? 出来立てを使用人達に食べさせたいので…………残りの五つはこちらで食べさせていただきます」
私の発言に、背の高い男の子のように見える少し自己主張が強い女性の象徴の持ち主が驚き、奥の部屋に駆け込んで行った。
そしてもう一人の女の子のような顔をした男の子は冷静に会計や商品に時間がかかるので、空いている席に自由に座るようにとスムーズな対応をしたいた。
(貴族慣れをしている? 言葉遣いや冷静な対応、品のある所作、伯爵家の御子息か?)
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