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第一章 王国編第一部(初等部)

エピソード52 最速記録と依頼

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 フッフッフ! これでお終いだ!
 ショーンが皮をむき、リアナが切り刻む、そしてオレが火の魔道具に頼った油攻めをして、更にもう一度油攻めだ!
 そしてイキイキとしていたヤツはカラッカラにしてやったぜ。
 そこから直ぐに袋詰めにするリアナの手際の良さ!
 どうだ! これがフライドポテトだ!

「オーダ通り持ち帰り用のフライドポテト三十五個出来ました」

 リアナが急いでフィーネと手分けをして袋を数えて、モーガンが計算をする。

「お会計は銀貨一枚、銅貨五枚になります」

 カウンターからの声がこちらにも聞こえた。
 オレ達は真っ白に燃え尽きた…………かったが、しかしまだ一安心とはいかない! あとイートイン用が五個残っている。
 オレとショーンは阿吽の呼吸でラストスパートでピッチを上げた。いや揚げきった。
 
 「お会計は小銀貨一枚と銅貨五枚になります」

 カウンターから聞こえてくるモーガンの声で、やっとオレとショーンとリアナは椅子に腰をかけテーブルに身体を預けて身体を休ませていた。
 オレは時間を見ようと顔だけ動かした。
 時刻は十時四十分……何だろう今日も一日頑張ったと思える充実感は…………

「大量注文は事前予約していただきたいな」
「リアナ、その意見採用!」
「あぁ、ワシも疲れたけぇもう無理じゃ」

 オレ達がヘロヘロになって休んでいると、カウンターからモーガンが心配そうにやってきた。

「みんな大丈夫……じゃないね。とりあえず侯爵家の方々には失礼のないように対応出来たけど……一つ問題があって…………」

 モーガンが歯切れが悪い時は余程のことだ……

「実は侯爵家の御令嬢がテラス席でまだフライドポテトを食べていらっしゃって……その護衛の方達もついているけど……庭にはフィーネしかいないから……」

 ひょっとするとひょっとするかも……フィーネの言葉だから、無意識で無礼な事をしてしまうかも……
 
「わかったフィーネを呼んでくるよ」

「頼むよクライヴ」

 モーガンにフィーネの子守? を託されてオレは御令嬢たちに会わないように一旦外に出てから庭の方へ向かった。

 すると女の子の声が聞こえてきた……フィーネともう一人の…………

 オレはこっそりとテラス席を除くと、テラス席付近で立っている御令嬢の護衛がフライドポテトを手に持って食べていた。
 そしてテラス席には御令嬢とフィーネが座り、御令嬢が二個、フィーネが一個フライドポテトを食べながら談笑をしていた。

 何この状況? オレこの中に入るの無理無理!
 耳を澄まして聞いてみると途切れ途切れに声が聞こえてくる。

「……アさんは二個も…………しょうか」

「驚き…………ィーネさん……聞き…………るんですが………………ポテト…………………………が考えた………すか?」

「…………イヴ…………不思議な…………色々…………臆…………優………………頼りに………………」

「フフ…………ネさんは………………きですか?」  

「えっ! そ、そんな、わからないです。…………気に………………素直………………くて。……アさんは……人………………いるんですか?」

「……一度…………気に………………が…………したが………………もう…………ないと思います」

 何だか御令嬢も怒ってないようだし、ここはフィーネに任せようか。

 それからテラス席で談笑する二人の美少女の効果なのか、モーガン男の娘効果なのかわからないが、若い男達の行列と学院の一年と二年の関わりたくない女子生徒カオス達が並んでいた。

 時刻は十一時十分、前回のタイムより十分縮めて完売となった。
 オレは気がつかなかったが、いつの間にか侯爵家の御令嬢は居なくなっていて、フィーネに話を聞くと「美味しかったから、また来るって言ってたよ」と楽しそうに言った。

(珍しいなぁ、初対面の相手に打ち解けるのは)

 そして店内にいつまでも居座っていたカオス共はリアナに対応してしてもらった。

「あっ! リアナ様、百個頼んだら握手や抱きしめる事できるサービスとかありませんか?」
「私はクライヴくんに耳元で囁いてもらいたいです」
「真剣にモーガンくんに女装をさせたいのですが、どうすればその夢は叶いますか?」

 各々の主張がエグいよカオスさん…………

「中々難しい約束ばかりだな。でもぼくは、いつもフライドポテトを買いに来てくれる君達を見るのがぼくの癒しの時間なんだよ」

「「「「キャーキヤー」」」」
「もう無理です鼻血が……」
「「リアナ様、この子を運びますのでここで失礼します」」

 即撃リアナ様……ポテト組の男役はリアナだな……娘役はモーガンで…………


 いつものように片付けをして、次回の材料代の小銀貨六枚と銅貨一枚をショッパーニさんに渡した。
 これで次回の開店時には用意してもらう手筈が整った。

 そしてみんなに一人当たり小銀貨四枚と銅貨八枚の分け前を渡した。

 続いてみんなと言うか……リアナとショーンの希望していた冒険者協会に行って依頼を見る事になっていて、俺は大きな溜息一つして冒険者協会の扉を開いた。
 
 壁に貼ってある依頼書を眺める人や依頼の受付を待っている人、そして納品している人、騒がしいがピリピリした雰囲気は感じない……むしろ心地良くも感じるいつもの光景が広がっていた。

 早速リアナとショーンが依頼書が貼ってある壁に向かって行った。

「フフッ、二人ってああいうとこ似てるよね」

 モーガンは笑みを浮かべて二人を眺めていた。

「とりあえず椅子で座って待っとく?」

 俺の提案にモーガンとフィーネは頷いた。

 しばらくするとリアナ達が戻ってきた。

「みんな良いのを見つけたよ。採取依頼でこの前の森ぐらいの距離にある集落付近の川沿いなんだけど、薬草の採取の依頼なんだ。集落の側なんで人が行き来して安全だろう」

 リアナは少し興奮気味に説明をした。

「それで十本見つけて銀貨1枚じゃ。これならよかろう?」

 確かに悪くはない安全な旅だ。この王都周辺で野盗が出る事はまずないだろう。

「クライヴ、どうする悪くはないと思うよ」

「ああ、モーガンオレもそう思う」

 こうしてオレ達は二回目の依頼を受けて、近くの、飲食店で腹ごしらえをした……


 時刻は十二時十分……
「みんな忘れ物はないかい、水袋や念の為の食料も用意を忘れずに行こう」

「「「「おー」」」」

 モーガンの声かけとともにオレ達は出発した。


 王都から徒歩三十分の旅の間に、もし獣に出会った時の陣形をみんなで考えた。単体の場合は、ショーンが前衛で盾役、その後ろの前衛寄りの右側はリアナが斬り込み役、前衛と後衛の間の左側にオレが居て、モーガンと連携しながら前衛をカバーする役、真ん中のモーガンは指揮役、後衛はフィーネで空いた所を後方援護する陣形に決めた。

 もう一つは対多数を想定した陣形だ。
 まずはリアナとオレで注意を引きつけて、その間に逃げる。

(個人的には一番したくない)
 
 次に闘う場合は、前衛にショーンとリアナを配置して、ショーンは盾役でなるべく多くの敵の注意を引きつける。その後ろの前衛寄りの左側にオレ、その後ろにフィーネ、モーガンは変わらず真ん中で指揮を取る。

…………多分オレの勘違いで済めばいいのだが……フラグが立たないかい?
 あんまり細かく計画すると…………


 三十分で目的の川に着いた。この川沿いの薬草は………………

「なぁ、みんな。あの辺りに生えてるのって薬草だよな?」

「そうだね依頼書通りだから、間違いないね」

 モーガンもまさかこんなに簡単な依頼とは思っていなかったらしく、拍子抜けした様子だった。

「まぁ、依頼達成したし帰ろうぜ」

 オレは何もトラブルが起きなかった事に安堵しみんなに依頼の納品をする為に帰ろうと促した。

「そうだな、仕方ないが今日は帰ろうか」

 リアナが納得したその時!

「キャャャ!」

 集落の方向から女性の悲鳴が聞こえた。

「悲鳴? フィーネ。距離はわかるか?」

 オレは小声でフィーネに確認したが………………既にリアナは悲鳴のする方向に走っていた。

「ちょ! 団体行動!」

 オレ達も急いでリアナの後を追った。

(やっぱりフラグ立ってたのかぁ……)
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