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序章
エピソード11 脱出
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オレ達は、看守が来ないか扉の方を見ながら、これまでの経緯を話し合った。
どうやら女の子はアレクサンダー帝国に家族やその他貴族と旅行? に来ていたようで、何らかの事情があり男装をしていた。
「私はアネッサと申します。お名前を教えていただきたいのですが……」
改めてアネッサを見ると黒髪のボブヘアーにシャツとパンツスタイルなので確かに中性的に見える。
それにしても睫毛長っ! オーシャンブルーの青い目めっちゃ綺麗!この顔立ちからして将来この国でも頂点に近い所まで登れる美女になるのではないか。
少し脱線してしまったが、何か訳ありの様子から十中八九相手は多分偽名を使っているはずだ。
これ以上彼女に迷惑かけまいとらこちらも正直に名乗りたいが……俺の事がバレると彼女に密告されるかも知れない。それか普通に看守にバレてしまい殺される。
そんな事ばかり頭をよぎり、ヘタレが発動した。
「ボクは、この国の男爵家三男のスコットと申します! たまたま喫茶店のトイレであなたの誘拐現場を目撃しまして一緒に連れて来られたようです」
「災難でしたわね。スコット様。」
「いえいえアネッサ様こそ、旅行に来た身でありながら誘拐に巻き込まれ災難でしたね。普段は城下町は治安が良いはずなのですが……」
アネッサは何か考えるように話を続けた。
「そう言えば、捕まり意識を失う前に【第三皇子を捕まえた】と言う言葉が聞こえましたので、どうやら私は間違われたようですね」
「この国で第三皇子のスノウ様の噂は聞いていましたので、流石にこの格好は軽率でしたね」
そう言いながらアネッサは少し悲しそうな表情をしていた。
こんな時に何も言葉が出てこない自分が恥ずかしい。足は震えていて、武者震い並みの自己主張をしているのに…………というか王や皇太子達は基本黒目なんだけど犯人さ~ん! 王妃派貴族の仕業だと思うが間違えんなよ! 女の子に迷惑かけてるだろ!
そんなオレに気を遣ってか、第三皇子の噂話で気を紛らわそうとしてくれた。
「この国の第三皇子様はとても若く、聡明で民想いの方だと街の方々からお聞きしております。悪徳貴族が権力を傘に着て神父に対して莫大な利息の取り立てと暴力を振るっていたのを懲らしめた話を聞きました。また老朽化した教会の復旧では貴族や商人をまとめ上げて費用を出した話や、復旧によって孤児達が行き場を失わないようになった事など皆様笑顔で話しておりましたわ」
「ハハハ……とても凄い方ですね」
アネッサには悪いが、そんなの尾びれが付いた噂だよ。本当のオレは目の前の青い顔をしてブルブルしている男さ!
そんな話をしていると、お互いに固い話し方はやめフランクな感じに話すようになっていた。
それからどのくらい時間が経ったのだろう。
扉の向こうから足音が聞こえ、ガラの悪い男がやってきた。
「オラ! 皇子様メシだぞ、嬢ちゃんには悪いがこっちの乾パンでがまんしてくれ」
アネッサにはお皿が二つ渡されていて其々にパンと冷えたスープが入っていた。オレには乾パンだけだった。元々誘拐するのは一人の予定だったから計画が狂ったのかなぁ?
オレはガラの悪い男に対して悲しそうな表情で
「あの……せめてお水をいただけないでしょうか? パンが硬くて……無理なら我慢します…………」
と言ったら効果的面だった。
「ちっ! わぁ~ったよ。今回だけだからな」
男が去って行くのを見て、アネッサはオレに話し出した。
「次に男が来る時が脱出するチャンスよ」
「えっ! どうやって逃げるんだ」
「あなたが水を受け取った時にそのまま相手の目を目掛けて水をかけて! その後は私に任せて」
「一体どうやって」
「このお皿で思いっきり殴るの」
何かどえらい武闘派なのでしょうか?
「アネッサだけには無理をさせないよ。いざとなったらボクも闘う」
女の子の前なので調子こいて格好つけたが、ずっと膝から足先にかけた震えが止まらない。
部屋は薄暗いからアネッサには気づかれてないよな。
しばらくするとガラの悪い男が水が入ったコップを持ってきて、オレに渡してくれた。
「かたじけない」
まずオレは感謝の気持ちを伝えると、【なんだその言葉は?】と言いたそうに目を見開いたガラの悪い男を目掛けて思いっきり顔に目掛けて水をかける。
「うわ! 痛え! 何しやがんだこのクソガキ!」
目を押さえながらもオレに掴みかかろうとした瞬間! アネッサの突き出した足に引っかかって前のめりに転んだ。
そして流れるような動きでジャンプをして頭の後ろ側の首に目掛けて二枚の皿で殴った。
「痛ってえ! おいクソガキどもお仕置きが必要みていだなぁ!」
これはピンチだ。少しフラつきながら起き上がるようだが気絶させるまでのダメージを与える事ができていない。
このままではアネッサが危ない!
オレは急いで身体を起こそうとしていたガラの悪い男に対して、サッカーで培った経験を活かしたフリーキックを蹴るように心を鎮めてキックした。もちろん身体強化を重ねての顎への一撃だ。
するとガラの悪い男は顔を地面につけ気絶していた。
「ありがとう助かったよ。それよりスコットって強いんだね」
「アネッサこそ、驚いたよ。なんだか誘拐に慣れているみたいで」
「フフッ何それ。そんなにお転婆じゃないわよ」
クールな感じなアネッサが少し微笑んだ姿が神秘的に見えて瞳が逸らす事ができなかった。
室内にただオレの胸の鼓動だけ響いていた。
「スコット、どうしたの?バレる前に早く行きましょう」
「あぁ……一緒に逃げよう」
笑顔で応えたが、身体強化半端ないって。
太ももとふくらはぎと足首と足の甲が痛い痛い痛い痛い。
一秒間でこの痛み? もう無理無理、封印しよう。あまりの痛みのおかげで相手を傷つけた罪悪感は忘れていた。
ガラの悪い男が気絶している間に身体を調べるとこの部屋のカギとナイフが二本見つかった。
まずはカギを掛けて、さようならガラの悪い人、いや雇われたゴロツキさん。オレ達は扉の向こう側に行くよ。
扉を開けると螺旋階段があり、壁掛けの蝋燭が等間隔に付けられてオレ達二人の影を揺らしていた。
アネッサは床や壁等に耳を当てて人が居るかどうか探っているようだ。
オレにはさっぱりわからんけどね。そして、いつの間に勇敢な女の子について行くダメ男という構図ができていた。
螺旋階段を上り終え、一直線の廊下に出ると。突然アネッサが立ち止まった。
「シッ、ここから見える左の部屋で物音が複数聞こえるわ。ゴロツキ達が数名いそうね」
「よくこの位置からわかるんだな。オレには真似できないよ。」
オレも徐々にこの薄暗さにも目が慣れてきて、蝋燭の灯りを頼りにゆっくりと正面の扉を目指した。
「私が廊下側を見張っているから、スコットは正面にある扉をゆっくり開けて見張りがいないか確かめて」
アネッサが手慣れ過ぎてて、最初は言葉遣いから貴族令嬢かと思ったが……実は暗殺者とか??
オレが扉をそろ~りと開けつつ外にゴロツキが見張っていないが確認したが誰もいない。どうやら皆様先程の部屋で酒盛り真っ最中だと思われる。
アネッサに大丈夫だとサインを出そうと振り返ると、まさかの地獄絵図が広がっていた。
「ちょっ! アネッサ何してんの!」
「ん、部屋から出れないようにしただけよ」
ゴロツキ酒盛り真っ最中の部屋のドアがメラメラ燃えてます。その近くには壁掛けの蝋燭が三つ程転がっていた。多分だがアネッサから見た今のオレの表情は、放火犯の現行の瞬間を見て口をポカーンと開けてフリーズした状態と思われる。
「スコット、火の粉に巻き込まれないよう早く逃げましょう」
「あぁ、そうだね……逃げないとね」
言いたい事は沢山あったが、とにかくこの場所から出て周りを見渡した。外は暗闇に包まており、奥には教会の復旧で祝っていたであろう十字架の周りの飾り達が月の光に反射していた。
「どうやら此処はスラム街らしい。危険なエリアだからアネッサ必ず離れないでね」
「うん、わかったわ」
格好付けて手を握ったが、夜のスラムが怖くて手が震えていた。震えてるのを絶対バレていた。
でも何も気づいていないフリをしてくれていた。
むしろアネッサの方が恐怖を感じておらず全然動じてない。オレもそんな強いメンタルが欲しいよ。
「アネッサ! 取り敢えず教会まで駆け抜けるよ」
これで助かると思っていた矢先に、正面にナイフを持った怪しい人が立っていた。
どうやら女の子はアレクサンダー帝国に家族やその他貴族と旅行? に来ていたようで、何らかの事情があり男装をしていた。
「私はアネッサと申します。お名前を教えていただきたいのですが……」
改めてアネッサを見ると黒髪のボブヘアーにシャツとパンツスタイルなので確かに中性的に見える。
それにしても睫毛長っ! オーシャンブルーの青い目めっちゃ綺麗!この顔立ちからして将来この国でも頂点に近い所まで登れる美女になるのではないか。
少し脱線してしまったが、何か訳ありの様子から十中八九相手は多分偽名を使っているはずだ。
これ以上彼女に迷惑かけまいとらこちらも正直に名乗りたいが……俺の事がバレると彼女に密告されるかも知れない。それか普通に看守にバレてしまい殺される。
そんな事ばかり頭をよぎり、ヘタレが発動した。
「ボクは、この国の男爵家三男のスコットと申します! たまたま喫茶店のトイレであなたの誘拐現場を目撃しまして一緒に連れて来られたようです」
「災難でしたわね。スコット様。」
「いえいえアネッサ様こそ、旅行に来た身でありながら誘拐に巻き込まれ災難でしたね。普段は城下町は治安が良いはずなのですが……」
アネッサは何か考えるように話を続けた。
「そう言えば、捕まり意識を失う前に【第三皇子を捕まえた】と言う言葉が聞こえましたので、どうやら私は間違われたようですね」
「この国で第三皇子のスノウ様の噂は聞いていましたので、流石にこの格好は軽率でしたね」
そう言いながらアネッサは少し悲しそうな表情をしていた。
こんな時に何も言葉が出てこない自分が恥ずかしい。足は震えていて、武者震い並みの自己主張をしているのに…………というか王や皇太子達は基本黒目なんだけど犯人さ~ん! 王妃派貴族の仕業だと思うが間違えんなよ! 女の子に迷惑かけてるだろ!
そんなオレに気を遣ってか、第三皇子の噂話で気を紛らわそうとしてくれた。
「この国の第三皇子様はとても若く、聡明で民想いの方だと街の方々からお聞きしております。悪徳貴族が権力を傘に着て神父に対して莫大な利息の取り立てと暴力を振るっていたのを懲らしめた話を聞きました。また老朽化した教会の復旧では貴族や商人をまとめ上げて費用を出した話や、復旧によって孤児達が行き場を失わないようになった事など皆様笑顔で話しておりましたわ」
「ハハハ……とても凄い方ですね」
アネッサには悪いが、そんなの尾びれが付いた噂だよ。本当のオレは目の前の青い顔をしてブルブルしている男さ!
そんな話をしていると、お互いに固い話し方はやめフランクな感じに話すようになっていた。
それからどのくらい時間が経ったのだろう。
扉の向こうから足音が聞こえ、ガラの悪い男がやってきた。
「オラ! 皇子様メシだぞ、嬢ちゃんには悪いがこっちの乾パンでがまんしてくれ」
アネッサにはお皿が二つ渡されていて其々にパンと冷えたスープが入っていた。オレには乾パンだけだった。元々誘拐するのは一人の予定だったから計画が狂ったのかなぁ?
オレはガラの悪い男に対して悲しそうな表情で
「あの……せめてお水をいただけないでしょうか? パンが硬くて……無理なら我慢します…………」
と言ったら効果的面だった。
「ちっ! わぁ~ったよ。今回だけだからな」
男が去って行くのを見て、アネッサはオレに話し出した。
「次に男が来る時が脱出するチャンスよ」
「えっ! どうやって逃げるんだ」
「あなたが水を受け取った時にそのまま相手の目を目掛けて水をかけて! その後は私に任せて」
「一体どうやって」
「このお皿で思いっきり殴るの」
何かどえらい武闘派なのでしょうか?
「アネッサだけには無理をさせないよ。いざとなったらボクも闘う」
女の子の前なので調子こいて格好つけたが、ずっと膝から足先にかけた震えが止まらない。
部屋は薄暗いからアネッサには気づかれてないよな。
しばらくするとガラの悪い男が水が入ったコップを持ってきて、オレに渡してくれた。
「かたじけない」
まずオレは感謝の気持ちを伝えると、【なんだその言葉は?】と言いたそうに目を見開いたガラの悪い男を目掛けて思いっきり顔に目掛けて水をかける。
「うわ! 痛え! 何しやがんだこのクソガキ!」
目を押さえながらもオレに掴みかかろうとした瞬間! アネッサの突き出した足に引っかかって前のめりに転んだ。
そして流れるような動きでジャンプをして頭の後ろ側の首に目掛けて二枚の皿で殴った。
「痛ってえ! おいクソガキどもお仕置きが必要みていだなぁ!」
これはピンチだ。少しフラつきながら起き上がるようだが気絶させるまでのダメージを与える事ができていない。
このままではアネッサが危ない!
オレは急いで身体を起こそうとしていたガラの悪い男に対して、サッカーで培った経験を活かしたフリーキックを蹴るように心を鎮めてキックした。もちろん身体強化を重ねての顎への一撃だ。
するとガラの悪い男は顔を地面につけ気絶していた。
「ありがとう助かったよ。それよりスコットって強いんだね」
「アネッサこそ、驚いたよ。なんだか誘拐に慣れているみたいで」
「フフッ何それ。そんなにお転婆じゃないわよ」
クールな感じなアネッサが少し微笑んだ姿が神秘的に見えて瞳が逸らす事ができなかった。
室内にただオレの胸の鼓動だけ響いていた。
「スコット、どうしたの?バレる前に早く行きましょう」
「あぁ……一緒に逃げよう」
笑顔で応えたが、身体強化半端ないって。
太ももとふくらはぎと足首と足の甲が痛い痛い痛い痛い。
一秒間でこの痛み? もう無理無理、封印しよう。あまりの痛みのおかげで相手を傷つけた罪悪感は忘れていた。
ガラの悪い男が気絶している間に身体を調べるとこの部屋のカギとナイフが二本見つかった。
まずはカギを掛けて、さようならガラの悪い人、いや雇われたゴロツキさん。オレ達は扉の向こう側に行くよ。
扉を開けると螺旋階段があり、壁掛けの蝋燭が等間隔に付けられてオレ達二人の影を揺らしていた。
アネッサは床や壁等に耳を当てて人が居るかどうか探っているようだ。
オレにはさっぱりわからんけどね。そして、いつの間に勇敢な女の子について行くダメ男という構図ができていた。
螺旋階段を上り終え、一直線の廊下に出ると。突然アネッサが立ち止まった。
「シッ、ここから見える左の部屋で物音が複数聞こえるわ。ゴロツキ達が数名いそうね」
「よくこの位置からわかるんだな。オレには真似できないよ。」
オレも徐々にこの薄暗さにも目が慣れてきて、蝋燭の灯りを頼りにゆっくりと正面の扉を目指した。
「私が廊下側を見張っているから、スコットは正面にある扉をゆっくり開けて見張りがいないか確かめて」
アネッサが手慣れ過ぎてて、最初は言葉遣いから貴族令嬢かと思ったが……実は暗殺者とか??
オレが扉をそろ~りと開けつつ外にゴロツキが見張っていないが確認したが誰もいない。どうやら皆様先程の部屋で酒盛り真っ最中だと思われる。
アネッサに大丈夫だとサインを出そうと振り返ると、まさかの地獄絵図が広がっていた。
「ちょっ! アネッサ何してんの!」
「ん、部屋から出れないようにしただけよ」
ゴロツキ酒盛り真っ最中の部屋のドアがメラメラ燃えてます。その近くには壁掛けの蝋燭が三つ程転がっていた。多分だがアネッサから見た今のオレの表情は、放火犯の現行の瞬間を見て口をポカーンと開けてフリーズした状態と思われる。
「スコット、火の粉に巻き込まれないよう早く逃げましょう」
「あぁ、そうだね……逃げないとね」
言いたい事は沢山あったが、とにかくこの場所から出て周りを見渡した。外は暗闇に包まており、奥には教会の復旧で祝っていたであろう十字架の周りの飾り達が月の光に反射していた。
「どうやら此処はスラム街らしい。危険なエリアだからアネッサ必ず離れないでね」
「うん、わかったわ」
格好付けて手を握ったが、夜のスラムが怖くて手が震えていた。震えてるのを絶対バレていた。
でも何も気づいていないフリをしてくれていた。
むしろアネッサの方が恐怖を感じておらず全然動じてない。オレもそんな強いメンタルが欲しいよ。
「アネッサ! 取り敢えず教会まで駆け抜けるよ」
これで助かると思っていた矢先に、正面にナイフを持った怪しい人が立っていた。
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