テレ×2テレパシー

すばる♪

文字の大きさ
上 下
10 / 10

因果応報

しおりを挟む






夕暮れ、通学路。
いつものように、みんなと少し離れて歩くレン。後ろから足音が聞こえてくる。遅れてきた前方のグループの一部が、「待ってよー」と声を荒らげながら走ってきた。
レンの横を通り抜けていくと同時に、レンの肩を強く押した。

「あ、ごめんねえレンくん~」

よろけるレンにクラスメイトはいつものようにギャハハと馬鹿にして笑った。

大丈夫、怖くない。
そう念じながらふーっと息を吐き出して、いわれた通りの言葉を吐き出す。

「あのさ。」

予想を遥かに超える声量で声をだす。
前方にいたグループも、肩を押したグループも、どちらも振り返る。
夕日に照らされて、レンは無表情をガラリと替えた。

「もうお前らの言いなりになんかならないから。」

声を荒らげた頃にはもう、主格の首根っこを掴んでいた。超能力を使った動かぬ馬鹿力に
思わず唾を飲み込むいじめの主格たち。そのまま腕を引いて手を離す。突き飛ばされた主格を周りが慌てて起こした。みていたユウリ、ワカナやほかのクラスメイトも、冷や汗をかきはじめる。

「オレにつけた傷跡全部治せよ……!」

恐ろしいほどの低いトーンで、叫んで、
それだけいってレンは唖然とするクラスメイトを放って、その場をあとにした。





「レンくん!」

大役を終えたレンを見つけたメグは、声をかけた。

「ああ……。」

レンはメグの声をきき、振り向く。
レンの顔を見て安堵する。
主格達も、レンの姿をみて呆気に取られていた、これなら、悪戯や理不尽を受ける回数も少なくなるだろう。

よかった、と一息つくと、次の"原稿"を渡す。

「……、はい。」

「…………え?」

渡された原稿を見るや否や、レンは首を振ってメグに返した。



「大丈夫。これは原稿みなくてもいける。自分で話せる。」

「ほんと……?」

「…まあ、シビアな話だけどさ、だからこそ、頼りたくないなって。オレの思いとか、赤裸々のほうがリアルみ増すでしょ。」

ふふと笑みを浮かべ、行ってくるよと手を振った。

「行ってらっしゃい…。」

その後ろ姿をメグは見守った。
本人が言うんだから、とレンに託して。








「レン……!」
そのあと、レンをつけてユウリが声をかけた。


「レン、その、悪かったよ、俺もそんなつもりなかったんだけどつい言いすぎた。」

ユウリの方をじっとみつめたまま、レンは黙りふける。すぐに言いたい気持ちも、でも言葉がでない矛盾も、全部胸の奥にしまって。

「きっと、すごい怒ってると思う。俺ら、友達だったのに、レンの気持ち、考えてあげられなくてごめんね、」

そっとレンの体に触れると、レンは触れられた衝撃で牙を向けた。腕で乱暴にユウリの手を解くとユウリは驚いた表情を見せる。

「汚ねえんじゃねえの。」

「ちが……ちがう、」

「呪いうつるんじゃねえのかよ。」

「そ、それは…勢いに任せていったんだ、ほら、あいつら怖いから…その、俺ら昔仲良かったじゃん、レンなら、許してくれるかなってそれだけの」

「勝手なことほざいてんじゃねえぞ。どれだけ嫌な思いしたかわかってんのかよ、仲良しだったことを口実にすんじゃねえ。」

言葉を遮ってレンが怒鳴った。
温厚で自分と喧嘩なんてしたこともなかったレンが大きな声をあげるたび、震えるユウリ。すっかり縮こまってしまったところにレンは近寄って目線を合わせる。

「あのさ、そういうのずるいっていうんだよ、結局ユウリは強いやつにしかついてかないじゃん、オレが声上げないから、乱暴しないの知ってて漬け込んでいじめて、で声あげたらこれ。怖いのはユウリ。」

「…ごめん、なさい。」

「そんな奴にだれもついていきたいって思わない、オレは元に戻りたいとも思わない。自業自得だろ、どんまい。」

「ま、まってレン、」

「やだ。いまさら和解する気微塵もないから。じゃあね。」

「……。」
期待をもって接したユウリを簡単に振り切るレンの顔に迷いの字はなかった。レンなら言ったらうなづいてくれる、レンなら大丈夫。そんな気の緩みと浅はかな考えが思わぬ事態を招く。

完結させることが、ハッピーエンドになることが幸せではない。全てではない。
仲良くなるのが最善だが、それを選べば自分は変われない。言葉に押されて頷くのは優しさじゃない。

「あ、そうそう。」

言い残しを思い出しもう一度ユウリのことを振り返ったレン。

「変わらせてくれてありがとうね、犠牲はでかいけどお礼だけいっとく。」

昔の頃と同じレンの笑顔、ここ2年ほど見せなかっただけにひどく儚く、懐かしく、そして悔しい思い。取り戻せない時間と関係に絶望して、ユウリはやるせない思いでいっぱいだった。







「そっか、じゃあ、仲直りはしなかったんだね、」

「そう、以前のように絡まれてもこっちが困る。こっち側が相手に合わせなきゃいけないのはめんどい。」


「ははは…、さっぱりしてるのレンくんらしいね。」

つられてメグが笑うとへへっとレンも笑った。

「ああ、そうだ、レンでいいよ。呼びにくいでしょ。」

「じゃあレンって呼ぶね、わたしのこともメグでいいよ。私たち友達だもんね。」

 ここまでいってふと思い出す。レンとは「手を組んだ」だけで「友達」にはなっていない。言ってしまった、そんな顔をしているとレンが引っかかった、と笑った。

「本当抜けてるよね、いいよ、友達って響き好きじゃないけど。助かったから、ありがと。」

「な、なに!わざとひっかけたの!?もーーレンったら~~!!」

軽くあしらって、いたずらっぽく笑うレンは、出会った当初の面影からはかけ離れていた。きっとこれが本性なのだろう。だしたくてもだせなかった彼自身だ。休みの日に遊ぶ約束をして、二人とも帰路についた。




メグの助けもあり、無事に一波超えたレンは
次の日、いつものように登校して、教室の扉をあけた。
ざわつきが一瞬静かになるが、レンは知らんぷりで一番後ろの席に座った。昨日の様子をみた主犯たちは、なにも言わず、目を逸らして話を続ける。なにもされなかった、と満足するレンに、声が掛かる。

「レンくん。」

酷く懐かしい声に、レンはふと後ろを振り返った。
だが、後ろには誰もおらずただ教室の見慣れた景色が広がるだけだ。
ああまたか、と前を向く。頭が痛い。ランドセルから真新しい教科書とノートを取り出して、授業の準備をした。チャイムが鳴って先生が入ってくる。空は青く晴れ渡り、雲はひとつもなかった。




be continued.
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...