4 / 10
期待の新人
しおりを挟む「は、はい!」
目線を合わせたソウタは、男の子にあまり興味がないメグでも惚れてしまうほどのイケメンだ。思わず後ろに引いてしまうメグをよそにソウタはさらに近づく。
「だったら、来年中学だよね??オレは松田 颯太今は桜中学の一年生。メグちゃんの一個上なんだ。よろしくね!」
「ソウタ、距離近いわよ…」
「ごめんごめん。」
看護師さんが呆れながらそういうとソウタは笑いながら立ち上がった。
「ほら、レンも。」
といってあの子の方を向く。
「俺、あいつの兄ちゃんなの、まあ詳しく言うと一番上の兄ちゃん。」
「ソウタは長男、次男挟んでレンが三男」
「いっぱいいるんですね…!」
「全員で5人いるよ!男3の女が2!」
話を聞いていた看護師さんが口を挟む。松田家は大家族構成のようだ。
いつまで経っても本人がこちらにこないのをみて
「お~い、レンく~ん。」
と茶化しながらソウタがレンを呼びに行く。
「お前が最初に言い出したんだろーが。大丈夫。メグちゃん優しい子だよ、声掛けてみなきゃわからんだろ。」
ナースステーションのそとでソウタが説得する声が聞こえる。
その様子をみながら看護師さんがいった。
「昔はね、あんな子じゃなかったのよ、まあソウタとかよりは控えめだったかもしれないけど。なにも喋らないし、私達も手が付けられないのよ、年齢の問題かもしれないわね。」
喋らなくなった原因はまさしく昨日ワカナがいっていた、あの事件のことなのだろう。
しばらくして説得し疲れたソウタがやれやれと戻ってきた。
「どう??」
「ぜんっぜん。もう聞く耳も持ってねえ。全無視だよ。どっかいったし。」
そういってソウタはため息をついた。
それを聞いた看護師さんもやれやれといった様子だ。
「中学デビューだけは失敗させたくねえなあ」
ぼんやりと窓の外をみつめてソウタが呟く。ふとメグのほうを向いた。
「あのさ、メグちゃん。」
「はい…?」
「レンと、友達になってあげてくれないか??」
「レンくんと??」
「うん、きっとあいつのことだし、多分自分からは話しかけねえ。それに、たぶんすぐにはなってくれないとおもう。でも、俺もうあいつの暗い顔みたくなくて。」
悲しそうな顔をしてソウタが呟く。ほっとけないんだ、そんな風に聞こえた。
「わかりました、私でよければ。」
メグの反応にソウタは目を見開いた。
「ほんと?!」
「…はい。自信ないですけれど。」
ゆっくりでいいからね、なんなら、中学からでいいから。そんなソウタの優しい言葉に背中を押され、レンと友達になることを決意したメグであった。
とはいったものの、なにも接点がない上、自分から話すことをしない相手とどう友達になるべきなのだろうか。
一つ、いいことがある。
どうやら松田家はこの病院に隣接した家らしい。看護師さんともすっかり仲良くなったメグは、母親ついでに病院に出向くようになった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる