最愛の夫に、運命の番が現れた!

竜也りく

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ここどこ?

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なんで急にそんな事を言われたのか分からなくて、オレは周囲を見回した。だって、部屋も家具も天井もベッドも、いつもと何も変わらない。

「実は、ビスチェが気を失ってる間に、マルガーサの別邸に移動したんだよ」

「マルガーサって、子どもの頃、夏によく遊びに行った……?」

「そう、避暑地だね。ビスチェはマルガーサの湖で水遊びをするのが好きだっただろう? ビスチェがうなじを許してくれて真の番になれたと報告したら、父上が祝いにひとつ別邸を譲ってくれるというから、この邸を選んだんだ」

「……」

凄すぎて言葉が出なかった。

さすが財源も潤沢と名高いだけはある、太っ腹な贈り物……。

お祝いにお邸ひとつ贈っちゃうんだ……と信じられない気持ちで部屋を見渡して、オレはあれ? と思った。

「待って。でも家具も天井もベッドも、いつものオレ達の部屋じゃん」

オレがそう言った途端、ラルフが意味深な笑いを見せた。

「いつもの僕たちの部屋の方が、ここに合わせてそっくりに作ってあるんだよ」

「え……そうなの?」

「そう。子どもの頃は毎年みたいにここに来ていたからね。ここはビスチェがこの邸に来た時に使っていた部屋なんだ。ビスチェが気に入ってたみたいだから、僕たちの邸を作る時にここを再現したんだよ。ビスチェが少しでも落ち着けるようにね」

「だからなんか懐かしかったのか」

そんな風に細部にまで気を遣ってくれていたなんて、今まで知らなかった。ラルフの優しさや愛の深さを感じて、なんだかとても幸せだ。

「ラルフはずっとこんな風に、さりげなくオレを気遣ってくれてたんだな。……ありがとう、ラルフ」

「喜んでくれて嬉しいよ。ビスチェが喜ぶことを考えるのが僕の趣味で、生きがいだからね」

ラルフは嬉しそうにそう言って、オレを姫抱きでベッドから掬い上げた。

相変わらずすごい腕力だと思うけど、腰を痛めたら可哀相だからこっそり自分に軽量化の魔法をかけたのはナイショだ。

魔法の効果も相俟って軽々とオレを窓際まで運んだラルフは、オレを抱いたまま窓の傍に置かれたふかふかの長椅子に腰掛ける。

「ほらビスチェ、窓の外を見てごらん」

「わぁ!!! あの湖だ!」

「ここ数年は来ていなかったからね。これからは毎年夏はここですごそう」

「うん!」

「ここには僕たち以外は誰も来ないから、ふたりで湖で戯れる事もできるよ。今から行くかい?」

「えっ」

「誰にも邪魔されたくないから、朝に一度物資を届けて貰うだけで、それ以外はこの周辺には立ち入ることが出来ないようになっているんだ」
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