最愛の夫に、運命の番が現れた!

竜也りく

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ふざけんな!

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「ああ……やっぱりこれがビスチェの色だ。髪も瞳も魔力の色を移したみたいに優しい透明感のある水色で、日の光に透けてキラキラ煌めいて……この繊細な色を探すのは骨が折れたよ」

ほう……と満足気なため息をついて、ラルフは幸せそうに微笑む。

「けれど、うん、満足だ。ビスチェの瞳そのものだね」

そう言いながらラルフはタイピンを身につける。

「もちろん僕のタイピンを外すのも、ビスチェだけだからね。他のヤツには指一本触れさせない」

そんな事まで言い出すから、さすがに苦笑した。オレはともかくとして、アルファであるラルフがそこまで操立てする必要もない。

「そこまでしなくていいよ。タイピンをオレ以外は外せないなんて事にしたら、家に帰って来たって着替えもできないじゃないか」

「ビスチェに外して貰うから問題ないよ。ああ、でもビスチェが早く帰って来てくれると寛げる時間が増えて嬉しいね」

「そういう事か」

オレが魔術開発に夢中になって帰ってくるのが遅くなる事は頻繁にあって、ラルフからはよく寂しがられてた。ラルフの『運命の番』が発覚した日も遅く帰ってしまったから、きっとラルフはそれが不満なんだろう。

それはさすがに申し訳ないと思ってる。

ラルフは優しく微笑んで、オレの髪を撫でた。

「ビスチェが魔術を大好きなのは知ってるけど、僕の可愛い奥さんがもう少し僕と一緒にいる時間を増やしてくれたら嬉しいと思ってね」

愛する人にそう請われてねだるようにチュ、とおでこに軽くキスされたら断れる筈もない。

「うん、できるだけ早く帰ってくるようにするよ」

そう請け負った。

「オレさ、魔術が大好きだってのもあるけど、本当はこれまではあんまりラルフに依存しないようにしようって思ってたんだ」

「それは……いつか、僕の運命の番が現れるかも知れないから?」

「うん。いざその時になってみっともなく縋ってラルフを困らせたりしないように、夢中になれる物を持っておきたくて」

「まさか……」

ラルフが、目を見開いてオレを凝視する。

「まさかビスチェ、ビスチェの中では、魔術よりも僕の方が存在が大きいの……?」

不安そうに聞いてくるから、思わず大きな声が出た。

「当たり前だろ! ガキの頃から、オレがどんだけラルフひとすじだと思ってんの」

「ビスチェ……!!!!!」

ガバッと音を立ててラルフがオレを抱きしめる。

「僕ばっかり、好きなんだと思ってた……!」

「ふざけんな! ラルフが好きだからこそ、面倒くさいマナー教育とかも頑張ったっていうのに」
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