最愛の夫に、運命の番が現れた!

竜也りく

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美しい贈り物

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「ありがとう……! すごく上品で素敵だ」

「気に入ってくれて良かった」

「この石もすごいね。こんなにラルフの瞳の色とそっくりな石、よく見つけたな」

「それはもう吟味に吟味を重ねたからね」

そう言いながら、ラルフは小箱中のチョーカーを手に取った。

「チョーカーを贈るのは所有の証だって事は知っているよね? これは僕でないと外せないよ。僕の唯一の番……ビスチェ、これからはこれを身につけてくれるかい?」

オレを真剣な瞳で見つめて、そう囁いてくれるのが嬉しい。

所有の証。

さっきつけられた所有痕はオレの意思で消すことができるけれど、これはラルフでないと外せない。ラルフの瞳の色を映した宝石を、所有の証であるチョーカーとして常に身に纏う事を願われるなんて、なんて甘い束縛だろう。

胸がうずうずするような、恥ずかしくも嬉しい気持ちが込み上げて、ちょっと鼻がツンとした。

「ラルフ……もちろんだよ……!」

「ありがとう、ビスチェ」

微笑んだラルフが、オレの首にチョーカーを手ずからつけてくれる。その指は少しだけ震えていた。

「ああ……思った通りだ。ものすごくよく似合っている」

頬を紅潮させ、眩しいものでも見るように目を細めたりしているラルフがちょっと可愛い。こんなにも喜んでくれるなんて。

「オレも見たい」

「鏡を持ってこよう」

いそいそと壁際のワーキングデスクに向かい鏡を手に取ったのに、振り返ったままの姿勢でラルフはピシリと固まった。

「ラルフ?」

「全身を見ても、最高に美しい……!」

ワナワナと震え出した。

「ビスチェの真っ白な肌を、僕が贈った黒のチョーカーが守っている……! 天使……いや、小悪魔か……!」

「ラ、ラルフ?」

「ああ、僕の瞳の色とそっくりな石をあしらったのは正解だった。こんなに蠱惑的な姿を見たら皆ビスチェに邪な目を向けそうだが、この石を見れば嫌でも僕を思い出すだろう」

このブルーサファイアに、そんな意図があったとは……!

「もし側にいられない時でも、僕がビスチェを守るからね」

にっこりと笑われてしまえば、もう苦笑するしかない。きっとこのチョーカーは、いろんな意味でこれからオレを守ってくれるんだろう。

「ちなみに揃いで僕のタイピンも作ったけど、こっちはビスチェの瞳の色に合わせてアクアオーラにしたんだ」

嬉しそうにもうひとつ小箱を取り出して、ラルフが中から同じ意匠を凝らしたタイピンを取り出す。そして、オレの瞳の横にあててみて、うっとりと囁いた。
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