最愛の夫に、運命の番が現れた!

竜也りく

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親鳥みたいだ

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思わずうっすらと唇を開いたら、ラルフの舌がそのあわいを薄く撫でる。

そして、ハッとしたように唇が離れた。

「あ……」

もっとキスをくれると思ったのに、急に唇が逃げてしまって寂しい。

けれどラルフは自分の唇をおさえて眉間に皺を寄せた。

「ラルフ?」

「危なかった、ビスチェに食事を取らせたいと思って我慢していたのに、危うく押し倒すところだった」

「はは、そうだったんだ」

「ああ、ビスチェはもうまる三日以上まともに食事を取っていないからな。いくら補給水が優秀でもいい加減食事をとらないと身体に悪い」

そう言ってラルフはベッドサイドに置かれたトレイの上から丸い銀の覆いを取り除く。中からふわっと湯気が上がってまだ温かいミルク粥が姿を現した。

「ありがとう」

ミルク粥を貰おうと手を出したら、その手を取って口づけられる。ラルフはにっこりと笑って、そのままオレの手を大切そうに布団の中に押し込んだ。

「はい、口を開けて」

「今日はそこまでしなくても大丈夫だよ」

「ダメだよ、いつも言っているだろう? ほら、大人しく口を開けて」

ヒートで激しく求め合った後に目覚めた時、ラルフはいつもこうやって食事を口まで運んでくれる。

確かに意識がまだはっきりしていない事もあれば、手を動かすのさえ億劫な事も多いから、ありがたく口を開く事も多いんだけれど、今日は『特別な補給水』のおかげでいつもよりはずっと体に力が入るんだけど。

苦笑しながら口を開けたら、ラルフが慣れた様子でミルク粥を口に入れてくれる。

ゆっくりと咀嚼するオレを見ながら、ラルフは満足そうに微笑んだ。

「ああ、やっぱり可愛い。この時間は僕の至福の時間なんだから、奪わないでくれ」

「母鳥みたいだな」

「どちらかというと、番の衣食住全てを満足させたいアルファとしての欲求だと思う」

オレを熱の籠った目でみつめながら、ラルフは食べやすいテンポで食事を口に運んでくれる。ひと通り食べ終えてココアを飲んでいたら、ラルフがぽつりと呟いた。

「それにしても早々に『運命の番』とやらが現れてくれて、僕は幸運だったな」

「え」

「でなきゃ、僕はいつまでもビスチェに信じて貰えないままだった」

「ごめん……」

「どうやって分かって貰うかを考えるのも楽しかったけれど、やっぱりこうして『唯一』の座を僕にくれたと思うと感無量だ」

そう言って、本当に幸せそうにラルフが笑う。

その顔は今まで見たどんな顔よりも満足そうで、穏やかな幸せに満ちていた。
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