最愛の夫に、運命の番が現れた!

竜也りく

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気がついたら

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「とお……か……?」

朦朧とした頭がその言葉をゆっくりと咀嚼して、戦慄した。

「愛してるよ、ビスチェ……! 永遠に……!」

そんなに長期間、この勢いで貪られたら。

「む、ムリ……! 死んじゃう……!」

「大丈夫、ちゃんと大切に抱くからね」

優しくなだめるように言われ、噛まれたばかりのうなじを大切そうに撫でられると、多幸感でいっぱいになって身を委ねる事しか考えられなくなってしまう。

ほんの子供の頃から抱いていた不安が解消されて、最愛の夫と真の番になれたその日、まるで天国と地獄を同時に味わっていると感じるくらい、オレはめちゃくちゃに抱き潰された。

それはこれから生涯続いていく、最高に幸せで、淫らな日々の始まりだった。

***

次に意識がはっきりしたのは、それから四日目の朝だった。

「……」

うっすらと目を開けると、ラルフの幸せそうな笑顔が見える。

「おはよう、ビスチェ」

「ラルフ……」

「うん、声も出るな。この補給水は合格だ」

「何……?」

「ああ、ヒート熱に浮かされているビスチェも最高に淫らで美しいが、このあどけない表情もそそられる……! 僕のビスチェは最高だな」

恥ずかしい事を言いながらラルフが顔中に口付けを降らせてくる。くすぐったくてふんわり温かい気持ちになった。

「今までの補給水と違うのか……? 確かに声も出るし、体もいつもより楽な気がする」

「ああ。ヒートの時に愛し合いすぎて脱水症状になったり声が出なくなったり、満身創痍なオメガは多いからね。以前から開発が進められていた特別な補給水でね。治癒効果がかなり高いものなんだ」

そう言いながら、ラルフがオレを抱き起こしてくれる。その優しい手つきが嬉しい。

「いつもよりも夢中になって抱いてしまったからね。まる二日ほどは僕も記憶が無い」

「珍しいね……」

「ビスチェと本当の番になれたのが嬉しすぎて、昨日も補給水を持ってくる以外はずっとベッドでビスチェを愛でてしまった」

ふふ、と幸せそうに笑われると、オレも嬉しくて思わず笑みが零れる。

『特別な補給水』だと言われたその薄い桃色の水を口に含むと、ラルフは口移しで呑ませてくれる。きっとこうやって、オレの意識がない間もこの水を呑ませてくれていたんだろう。

ああ、確かに力が漲ってくるような気がする。

「んぅ……」

水を呑ませて離れるかと思ったラルフの唇は、そのままオレの唇をやわやわと食んでくれた。その仕草はけして強引ではなく、オレの気持ちをうかがうかのように慎重だ。
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