最愛の夫に、運命の番が現れた!

竜也りく

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番う覚悟が本当にあるのか?

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そして、さっきの感動の余韻は一気にかき消されて、真剣な空気が部屋を満たした。

ダニエルさんもさっきアリアナ嬢と抱き合っていた時の幸せそうな様子から一変、顔をこわばらせ、顔色もかなり悪く見える。

アルファ同士は牽制し合うことがあるというから、ラルフが威圧でもしてるんだろうかとちょっと不安に思っていたら、意を決した様子でダニエルさんが口火を切った。

「ミクス男爵の暴挙については、本当に申し訳ありません。男爵を止めていただいたこと、そしてこうしてアリアナを保護してくださったこと、本当に感謝致します」

「ああ、僕にとっても必要な事だったからね、そこは気にしないでくれたまえ」

「それで……お話とは」

そう尋ねる真剣な表情のダニエルさんを意味ありげに睨め上げて、ラルフが硬質な声で尋ねた。

「単刀直入に聞くが、君はアリアナ嬢と番う覚悟が本当にあるのか?」

「……!」

ヒュ、とダニエルさんが息をのむ音が聞こえた。冷や汗がドバッと出て、指先がふるふる震えてる。

それでもダニエルさんは顔を上げて、ラルフをしっかりと見据えた。

「……はい。そのために今日まで努力して参りました。もしアリアナがラルフ様の『運命の番』だとしても、その気持ちは変わりません」

「ダニエル……!」

上位貴族であるラルフがアリアナ嬢の『運命の番』かも知れないと思っていながらこの言葉を発するのが、どれほど勇気と覚悟してのいる事か。

ダニエルさんの勇気を振り絞った言葉に、アリアナ嬢は瞳からぽろぽろと涙を流す。

良かったねアリアナ嬢……! 

オレまでなんだか胸が熱くなってしまった。

「素晴らしい。君の本気さが分かって嬉しいよ」

ラルフが満足そうににっこりと笑う。

「アリアナ嬢にも異論はなさそうだ。僕もふたりの事を応援しているよ」

「ラルフ様……」

「ありがとうございます……!」

アリアナ嬢もダニエルさんも、心底ホッとした表情を見せる。そんな二人に、ラルフは満面の笑顔でこう言った。

「そうそう、もうそう長くしないうちにヒートを抑える薬も効果が切れる。早々にうなじを噛んで番ってしまってくれるとありがたいのだが」

「何言ってんの!!!???」

思わず全力でツッコんでしまった。

「ここここ恋人達のそーいうのに口挟むとか信じられないんですけど!?」

初対面の人にとんでもない事を言い出すなんて、ラルフったら何を考えてるんだ。二人とも真っ赤になっちゃってるじゃん!

なのに、ラルフときたら全く反省してない。
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