最愛の夫に、運命の番が現れた!

竜也りく

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つくづく同情する

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震えてしゃくりあげているのが可哀相で、僕はただ慰めることしかできない。

そりゃそうだよね。

恋人がいるのに、親には無理矢理ここに連れてこられてヒートにされて、しかも親が捕縛されてひとりで取り残されてる。そんな状況、考えただけで背筋が凍る。

可哀相でアリアナ嬢の背中をゆっくりとさすっていたら、僅かな時間席を外したラルフが戻ってきた。

「……ビスチェ、アリアナ嬢、移動しながら話をしよう」

泣きながらも頷く彼女を連れて馬車に乗り込み、少しずつ落ち着いて来た彼女の現況をオレ達はゆっくりと聞き取っていく。

「へぇ、じゃあ幼馴染なんだ。オレ達と一緒だね」

話しているうちにちょっとずつ打ち解けてきて、オレ達はごく自然に話せるようになっていた。

もちろんラルフとアリアナ嬢それぞれに結界と浄化を施してるから、オレ的には実は結構大変だったりする。

「はい。お互いのバース性が分かった時は嬉しくて」

「じゃあお相手はアルファなんだね」

「ええ。けれど彼は裕福な商家の生まれでしたが平民なので、なかなか父の了承が得られなくて……彼自身が興した商会がようやく軌道に乗ってきて、わたくしの家への融資を条件にすれば父の許しも得られるんじゃないかと……そんな時だったんです」

それでも融資を条件にしないとならないのか、と苦い気持ちになった。

オメガにはどうしたって生きにくい世の中だ。

「ラルフ様にお会いした時に『運命の番』かもとは思ったものの、わたくしにも愛する人がおります。ですからわたくしもお父様には知られないようにと思ったのですが」

「護衛の人が報告したって言ってたもんね……」

こくん、と力なく頷くアリアナ嬢。ほんと、つくづく同情する。

「本当に、こんな事に巻き込んでしまって……」

「君のせいじゃないよ。君も今日は疲れただろう? 少しでも眠れるといいけど」

「家族に……なんと話せば良いのか……」

悲しそうに目を伏せる彼女が可哀相で痛ましい顔をしていたら、ラルフがとんでもない事を言い出した。

「君の家族には私から説明してあるから心配いらない」

「えっ……」

「さすがに、事が事だからな。アルフォンスに通信させて貰った」

「お兄様に……」

「ちなみに、今向かっているのは君の邸ではなく君の恋人、ダニエルの邸だ」

「ええっ!!!」

オレもアリアナ嬢も驚きすぎて言葉を失った。

「こんな時だからこそ、恋人に会いたいものだろう? 僕ならば家族よりもビスチェに会って抱きしめて貰いたいからね」
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