最愛の夫に、運命の番が現れた!

竜也りく

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愛されて、いるのですね

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ただその手はひどく震えていて、彼女が今現在酷い症状に必死にあらがっているのが感じられる。

アリッサちゃんが手を添えて、なんとかローズティーを飲ませて数分後、ようやく彼女の頬から赤みが引いて呼吸が緩やかになってきた。

「少し、おさまってきた?」

「はい……」

オレが尋ねると、アリアナ嬢は弱々しく頷く。ヒート特有の妖艶さが落ち着いてきたら、アリアナ嬢は清楚だけれど意思が強い、そんな目をしていた。

「話せそうか?」

「はい。この度は父が、本当にご迷惑を……」

憔悴しきった様子だけど、それでもアリアナ嬢は気丈に謝罪の言葉を述べる。あのミクス男爵の娘だとは思えないくらい、しっかりしたお嬢さんだと思った。

「ああ、なんなんだあの男は。さすがにあの強引さは迷惑だった。というか明確に犯罪だぞ、あんなの」

めっちゃハッキリ言うじゃん、とオレはラルフを二度見する。

「だが、今聞きたいのはアリアナ嬢、貴女がどう考えているかだ」

「はい」

「先ほどから言っているが、僕には生涯愛すると誓った伴侶がいる。貴女は僕と顔を合わせた時に、逃げるように立ち去ったが……貴女にも大切な相手がいるのではないか」

「……」

きゅ、と唇を噛んで、アリアナ嬢は迷うような目をした。それはそうだろう。

親は明らかにラルフと縁づいて貰いたいと思っているのだ。しかも捕縛されて行ったわけで、オレが彼女の立場だったとしても、きっとどう言えばいいのか迷うに違いない。

「正直な気持ちを言って欲しい。悪いようにはしないから」

ラルフから重ねて問われて、しばらく逡巡していた彼女は、キッと凛々しく顔を上げた。

「実は……わたくしにも、心に決めた方がおります」

「……!」

「よく打ち明けてくれた」

ラルフの声にも、ホッとしたような雰囲気が混ざった。ラルフなりに確信めいたものはあったようだけど、それでも不安だったのかも知れない。

「君と、その心に決めた人との現況を聞かせて貰っても良いだろうか」

「はい……!」

良かった。ラルフの雰囲気が一気に柔らかくなった。

これできっとラルフがうまくやってくれるに違いない。なんせオレのラルフは、誰よりも頼りになる男なんだから。

オレは安心していいよ、と言いたくて、ボロボロと涙を溢しはじめたアリアナ嬢の涙をハンカチで拭い、背中をそっとさすった。

こみあげるものがあったのだろう、アリアナ嬢が声を上げて泣き始める。

抑えようと我慢してはいるみたいだけど、抑えきれずに声も涙もあふれ出てくるみたいだ。
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