最愛の夫に、運命の番が現れた!

竜也りく

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【ラルフ視点】肚を決めるしかあるまい

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「君の父上……ミクス男爵は、アリアナ嬢に薬を盛ってヒートを誘発させ、僕をラット状態にして無理矢理番わせようと企んだのだよ。……この意味が、分かるかい?」

一瞬の間の後、悲鳴のような声が聞こえてきた。

「……っも、申し訳ありません……! 申し訳、ありません……!!!」

多分通信機の向こうで土下座してる。父親がバカで欲だけが強い男だと、家族は苦労するだろう。可哀想に。

だが、それで甘い顔をするわけにもいかない。

「悪いが僕も、伯爵家としても、この暴挙を許す気は無い」

「は、はい……!」

「とはいえ、今回の件はミクス男爵がひとりで暴走しているわけで、アリアナ嬢もいわば被害者だ。……彼女には、思い合う恋人もいるようじゃないか。名はダニエルだったかな」

「っ、そこまで、ご存知で……」

「流石にこんな事態になって、調べさせて貰ったよ。君の父親はふたりを引き離してアリアナ嬢を僕の番にしたいと思っていたようだけれど、僕としては思い合う恋人同士の仲を引き裂きたいなどとは思わない。僕にも、大切で愛しい人がいるからね。ちなみにアルフォンス、君の見解はどうかな」

「わっ、私は、妹はダニエルと沿わせてやりたいと思っています」

「そうか。理由を聞いても?」

「ダニエルとアリアナはほんの子供の頃から仲が良くて……今も互いを思い合っています。ダニエルはいいヤツですし商才もある。俺……私は、ずっとふたりが幸せになれるよう、父を説得していましたから」

「そうか、では君が当主になればふたりは問題なく番になれるわけだな」

「!!!?」

「伯爵家の嫡男に悪意を持ってヒートの女性を引き合わせ番にしようと目論んだんだ、当然の事ながら君の父親は罪人として裁かれる。それどころか、僕が騒げば家自体が取り潰されるだろうね」

「……」

「アルフォンス、父親が乱心したとして家督は君が継ぐしかない。本来駒として使われた女性も罪を得ることが多いが、それならばアリアナ嬢は守ることができるだろう」

通信機向こうで逡巡する様子なのが容易に想像できる。

急にこんな事態になって、思考が追いつかないんだろう。可哀想だが、覚悟を決めて貰うしかない。

「アルフォンス、こうなっては君が肚を決めるしかあるまい。家族と使用人を守るつもりがあるならな」

少しだけ、何も言わずに彼の言葉を待った。

僕も伯爵家の嫡男だ。ある日こういう事が起こったら、同じように戸惑い、やがて全てを背負う事を決めるのだろうと思う。
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