最愛の夫に、運命の番が現れた!

竜也りく

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【ラルフ視点】下準備は入念に

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着替えを済ませて寝室から出ると、執事のローグがちょうどこちらへと向かってくるところだった。

「アルフォンスへの連絡はついたか」

「はい。上位回線を繋ぎましたので、すぐに信頼して貰えたようです。かなり驚いてはいましたが」

「それはそうだろうな」

この国には身分を明示しての特別な通信網がある。身分を騙っての詐欺事件が頻繁におこるからだ。

親しい友人間ではわざわざそんなものは使わないが、傍受を防ぐこともできるため、こういう込み入った話をするには適している。無論、少々コストはかかるがそれで問題が解決できるならば安いものだ。

「書斎に準備しております。先方には要件については改めて連絡する旨伝えておりますが、すぐに繋ぎますか?」

「いや、先に父上に話だけ通しておこう」

言いながら書斎のドアを開ける。

「畏まりました」

ローグが父上付きの執事に通信機で確認をとれば、すぐに「おつなぎします」との返答が入る。僕から緊急で通信が入るなんて事は稀だから、父上もきっとなにかあったと察してくれたんだろう。

「ご無沙汰しております」

「どうした、ビスチェから離婚でも切り出されたか」

通信機の向こうでニヤニヤしてる顔が目に浮かぶようだ。下手な事を言ったら一生からかわれそうだ。外ではいかめしい雰囲気を出しているくせに、一歩家に入るとコレだから困る。

「その場合は落ち着いて挨拶などはしていられません」

「それもそうだな。まっすぐ本邸に来て土下座しそうだ。で、何があった?」

楽しそうに笑って、父上が先を促す。

僕の説明に、相槌をうつ父上の声がどんどん冷えていく。やがて、氷のように冷たくなった。

「……それで? その『運命の番』とやらをどうするつもりだ」

「どうもこうもありませんよ。運命だろうと何だろうと、僕の気持ちに変わりはありません。ビスチェ以上に大切な人など、生涯現れない」

「そうか、ならばいい」

ちょっとホッとした声なのが腹立たしい。父上まで、僕のビスチェへの愛を疑うというのか。

「ちなみに、その無礼な下衆への対応は? 相応の始末はつけろよ。ああいう輩は甘い顔をするとどこまでもつけあがるぞ」

「もちろんです。実はその事で了承を得たくお電話したのです」

僕は、これからやろうとしている事をざっくりと説明する。父上は黙って聞いていてくれたが、すべてを聞き終わるとふむ、と小さく声を漏らした。

「いいだろう。ミクス男爵といえば良い噂は聞かない男だ。所属の部署も持て余しているようだしな」
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