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オレの秘策

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やっぱり『運命の番』には、本来抗い難い魅力があるんだろう。それでもオレを選んでくれるっていうラルフの事、オレも一生大切にしたい。

「ビスチェ……」

「ラルフ、オレを選んでくれてありがとう。もう離婚しようなんて絶対に言わない。一生、一緒にいよう?」

「ビスチェ……! 嬉しい。嬉しいよ、ビスチェ!!!」

ラルフが、オレがプロポーズした瞬間と同じくらいキラッキラの笑顔を見せた。

「あっ……」

同時にオレの中のラルフも一気に質量を増した。

「ごめんね、つい」

ごめんね、なんて言ってるけど、ラルフの表情はただただ嬉しそうで、これまで見た中でも最高に幸せに溢れている。

生涯を共にするという僕の言葉だけで、ラルフをこんなにも笑顔にできるのか。

これほど求められているっていうのに、あんなに『運命の番』が現れる日を恐れていた自分がバカみたいだと思った。もっとラルフの事、素直に信じていれば良かったんだな。

「ビスチェ……!」

満面の笑顔でオレに口づけようとラルフが顔を近づけてきて……。

「ぐああああ!!!!!」

またも、苦し気に吠えた。

「ラ、ラルフ!?」

「ぐ、ううう……っ、くそ……っ、どれだけ邪魔すれば気が済むんだ……!!!」

「ひえ……」

オレのラルフが、人を殺しそうな顔してる……!

見たこともない凶悪な表情に震えてたら、バタバタと慌てたような足音が近づいてくる。いつもは穏やかで静かな伯爵家において、こんなことは滅多にない。

「ラルフ様! 大丈夫ですか!? 男爵がなにやら薬を使って、娘をヒートに……!」

「分かっている! 一瞬でも早く摘まみだせ!!!」

なるほど、ヒートか。

『運命の番』のヒートなんて、抗える術もないはずだ。

ふーっ!!! ふーっ!!! と荒い息をついて、オレの首元に鼻をつっこんで耐えているラルフがあまりにも辛そうで、オレは震えているラルフのたくましい体を一生懸命に抱きしめた。

ラルフも、縋り付くみたいにオレを抱き返してくれるのが嬉しい。

「くそ……! くそ……! 卑劣な真似を……!」

ラルフの体がどんどんと熱くなって、オレの中の熱杭も猛々しく震えている。『運命の番』のヒートに引きずられて、ラットになりそうな自分と必死で戦っているようだった。

『運命の番』なんていう特別じゃなくても、オメガのヒートには逆らえないって聞くのに、ここまで耐えていられるなんて、信じられない精神力だ。

「こんな卑劣な手に乗るものか……! 僕が抱きたいのは、ビスチェだけだ……!」
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