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【ラルフ視点】分からせてあげる

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「たくさんの相反する感情が常に同居してるから、僕はいつも自分の中で葛藤してるよ。でも、そんな風に複雑な感情が生まれるのって不思議なことにビスチェにだけなんだよね」

「……それ、少しだけ、分かるかも」

恥ずかしそうに、ビスチェが呟く。

やっと共感の方向性で返事が返ってきた事に、僕は少しだけ安堵した。

「ラルフに本当に『運命の番』が現れて……これでラルフは誰よりも幸せになれるって思うと嬉しいのに。なのに……」

くすん、と小さく鼻が鳴る音が聞こえて、心臓が締め付けられるほど愛しくなる。

「なのに……?」

「オレ……」

言い淀むビスチェから、ぐすっ、ぐすっととさらに悲しい音が聞こえてくる。

慰めるように優しく髪を撫でたら、ビスチェは僕の背におずおずと手を回して、シャツをキュっと掴んできた。

「ごめん、ラルフ。オレ……」

俺を見上げた目には既に限界まで涙が湛えられていて、見る間にボロボロと大粒の涙が零れ落ちる。

「オレ、もうラルフとお別れなんだと思うと、悲しくて……っ」

「ビスチェ……!!!」

けなげすぎて、もう我慢できなかった。

「お別れなわけないだろう……!」

強引に強く口づける。

「ふっ……あ、んぅ……」

甘い口内を味わおうとして、ビスチェが泣いている事を思い出して、しぶしぶ唇を開放した。

代わりにまだ涙が次々に伝っていく目尻に、頬に、何度も何度も口づける。いつものように口づけでビスチェの気をそらしながら衣服を解いていく。

白くて細い裸体は昨日と変わらずに僕を魅了する。

やはり『運命の番』なんて、僕のビスチェに対する欲に影響を与えるものじゃないんだ。

息が出来る程度の軽い口付けを躱しながらビスチェのなめらかな肌に触れれば、触れたところから熱をもちしっとりと汗ばんでくる。

その吸い付くような肌触りに僕の手もついついビスチェの肌をまさぐってしまう。

愛しい。愛しい。

身体の奥底から、ビスチェへの思いが、欲が、泉の水のように湧き上がってくる。

「僕がビスチェを手放すだなんて、できるわけがない。こんなに愛しているのに、まだ分からないの?」

「だって」

「だって……? いいよ、分からせてあげる」

「あっ」

後ろの孔にそっと触れるだけで、僕を受け入れようと指先を食んでくるのに。

「待って、待ってラルフ」

僕と離れたくない、と正直に訴えてくる体とはうらはらに、まだ頭のどこかで僕が『運命の番』と番う方が幸せなんじゃないかと疑っている様子なのが憎らしい。
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