最愛の夫に、運命の番が現れた!

竜也りく

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【ラルフ視点】自分のバカさ加減にうんざりする

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……と、そこまで過去の幸せな記憶を思い出して、自分の失態に今更ながらに気がついた。

そうか。浮かれ過ぎて、僕はあの時ビスチェの「結婚は『運命の番』が現れるまでのつなぎ」発言に、明確に「違う」と言っていなかったのかも知れない。

ビスチェを前にした時の自分のバカさ加減にはいい加減うんざりする。

しかしその一方でなぜだ、という気持ちも拭えない。

結婚してからのこの二年、僕は好きだ、愛してるの言葉はもちろん、表情も行動も時間も財力も、持てる全てを使ってビスチェに愛を伝えてきた筈だ。

ビスチェだって、いつも恥ずかしそうにはしていても、僕の重すぎる愛を受け止めていてくれたじゃないか。

悔しい気持ちを抱えながら、僕は思いのたけを込めてビスチェの珠の肌を撫で、くちゅくちゅと音を立てながら舌を吸う。

こんなにも愛しているのに。

ねぇビスチェ、僕らはこれまでだってこうして、触れ合った部分から溶け合ってしまいそうなほど濃厚に愛し合ってきただろう?

なのになぜ、ここにきて僕が『運命の番』ごときに惑わされると思うのか。

その答えを探して、『運命の番』だと思われる娘と出会った瞬間の事を思い返す。

あの時。

……確かに、驚いてあの娘を凝視したのは確かだ。

かつて嗅いだことのない馥郁たる香りが強く鼻腔を刺激して、目を上げたらあの娘と目があった。

ビスチェには「まだ決まったわけじゃない」と言ったものの、正直に言ってあの娘は『運命の番』だと僕も思う。

なんせあの瞬間にそうだと直感した。

体の奥底に眠る本能を引きずり出されるような、暴力的な衝動。

だが、ビスチェに今この瞬間も感じている、込み上げてくるような愛しさや、大切にしたい、守りたいという庇護欲とは全くの別物だった。

急にビスチェの顔が見たくなって、チュ、と小さなリップ音を立ててビスチェの唇を開放してやる。

さんざん口内を蹂躙されて、ビスチェは完全に蕩けた顔をしていた。

毎日「愛している」と思っているのに、顔を見るたび、言葉を交わすたび、口付けを交わすたび、身体を交えるたびに、また新たな愛しさが込み上げてくるというのに。

「ねぇビスチェ」

「……」

ビスチェはまだ夢見心地な表情で、僕を見上げる。その頬をそっと撫でた。

「僕は結婚してからずっと、全力でビスチェに愛を伝えてきたつもりだよ。何が信じられないの?」

「だってお前……キラキラした目で『運命の番』がどーのこーのって、しょっちゅう言ってたし……」
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