最愛の夫に、運命の番が現れた!

竜也りく

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【ラルフ視点】悔しい気持ち

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僕のほの暗い決意になんて微塵も気づかず、ビスチェは僕を見上げて真剣な顔でこんなことを言い出す。

「たださ、今のオレじゃお前の嫁には相応しくないから、アカデミー卒業するまでにはちゃんと勉強もマナーも恥ずかしくない程度には頑張るからさ。そしたらおじさんにも受け入れて貰えるんじゃねぇかと思って」

ビスチェ……!

感動で震えた。

僕の妻になるために、僕の父に認めて貰うために、毛ほどの興味もないマナーや勉強を頑張ってくれるというのか。魔術以外は心底どうでもいいと思っているくせに。

けなげなのはビスチェだろう……!

「別に今のままのビスチェでも、大歓迎だと思うけど。僕の家族もビスチェの事は大好きだって、ビスチェだって知ってるだろう?」

「さすがに嫁ともなると違うだろ。このままってワケにはいかねぇよ」

無理をさせたくなくて今のままでいい、と伝えたというのに、それじゃビスチェの気が済まないらしい。

僕のためなら大好きな魔術への時間を割いて時間を捻出してくれる気があると言うことは、僕は間違いなく人間の中ではビスチェから一番大事にされているに違いない。

僕のライバルは魔術だけだ。

いっその事、一生かかっても解けないような魅力的な魔術に生まれれば良かった。それなら一生ビスチェに熱い眼差しを向けて貰えるのに。

しかしまさかビスチェの口からプロポーズして貰えるとは。

ビスチェが言ってくれた言葉を思い出して噛みしめつつ、幸福感に包まれる。

「……あれ?」

そして、ふと気がついた。

「どうした」

「待って……今ビスチェ、後継の問題もあるって言ったか?」

「言ったよ。あるだろ?」

「ある!!! それってつまり、ビスチェは僕の子を産んでくれる気があるって事でいいんだよね!?」

「おま……! そ、そういう言い方すんなよ……!」

真っ赤になってるビスチェ、可愛い。

「でも、そういう事だろう?」

ニッコリと満面の笑みを作ってビスチェの顔を覗き込めば、真っ赤な顔のままちょっと唇を尖らせて唸るように言う。

「そ、そうだけど……!」

嬉しくて心臓が破裂するかと思った。ビスチェが僕とのそんな未来を思い描いてくれていたなんて。

空は晴れ、小鳥が歌い、世界の全てが俺を祝福してくれているように感じる。

場所がアカデミーの中庭だったから、ぎゅうぎゅうに抱き締めてバードキスを雨のように降らせるだけに留めておいたけど、あれが自室だったりしたらビスチェの貞操はあの瞬間に儚くなってしまっただろう。
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