最愛の夫に、運命の番が現れた!

竜也りく

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【ラルフ視点】けなげなのはビスチェだ

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そう思ってつかず離れず、ビスチェに近づこうとする不埒なアルファは陰で徹底的に排除していたある日。

それまでの悩ましげだった雰囲気を一掃したように晴れやかな顔をしたビスチェが現れた。

にっこにこで僕に駆け寄ってくる姿を見るのは久しぶりだ。

魔力の色を移したような淡い水色のショートヘアがふわふわゆれるのも可愛いし、相変わらず折れそうに華奢な手足も愛しくてたまらない。儚げに見えてもおかしくないのに、好奇心いっぱいの瞳と表情が生命力に溢れた印象につながっている。

ああ、最高に可愛い。

なんて可愛いんだ、僕のビスチェ。

感動する僕に、ビスチェは輝くような笑顔でこう言った。

「なぁラルフ、オレと結婚しない!?」

「えっ、する!! 結婚する!」

思わず即答した。

まさかビスチェからプロポーズしてくれるなんて……!

突然訪れた幸福に打ち震える思いだったが、僕を見上げるビスチェの様子を見て感動してる場合じゃない、と表情を引き締めた。

僕があまりにも一瞬でプロポーズを快諾したものだから、ビスチェの方が目をまんまるにして驚いている。

誤解しないでくれ、何も考えてないわけじゃないんだ。

もちろん突然の事で、一瞬息が止まるかと思う程度にはびっくりしたが、絶対にこのチャンスを逃してはならないという切迫感の方が強くて即答しただけで、本心からの返答であったことだけは信じて欲しい。

ビスチェを安心させるためにも、僕はとりあえず、久しぶりの会話を楽しむことにした。

「すごく嬉しいよ。けれど、どうしてまた急にプロポーズしてくれたのかな」

ちょっぴり表情が緩んだビスチェが、えへん、とでも言いたげな得意そうな顔をして見せた。可愛い。

「お前さ、昔っから『運命の番』に憧れてるじゃん」

「まぁ、憧れはあるけど」

それは、その『運命』がビスチェならって意味で、他の有象無象だった場合は別にどうだっていい。

「でもお前って仮にも伯爵家の嫡男だろ? お前がいくら『運命の番』との出会いを待ちたくても後継の問題もあるし難しいだろ。オレなら『運命の番』が見つかるまでの間の繋ぎに最適じゃねぇかと思って」

「ああ、そういう事……」

落胆した。

どうやらビスチェは、いまだに僕が『運命の番』とやらをけなげに待ち続けていると思い込んでいるらしい。

僕がビスチェを『繋ぎ』に使うような男だと思われているのは心外だが、まぁいい。結婚してしまえばこっちのものだ。毎日愛を囁いて、溺れるくらい愛情に浸してやる。
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