最愛の夫に、運命の番が現れた!

竜也りく

文字の大きさ
上 下
13 / 73

え、今ラルフが言ったの?

しおりを挟む
「ラルフはさ、オレですらすごく大切にしてくれたじゃん。優しくて生真面目で……そんなお前が、最愛の『運命の番』がいるのに他のヤツなんて抱けるわけがないだろ」

それが分かってたから、いつかラルフに『運命の番』が見つかった時にラルフを困らせたりしないよう、あえて『番』にはなっていないんだから。

ラルフにうなじを噛ませたりしないで、本当に良かった。

「離婚したらさ、オレはもうお前に発情期の相手を頼んだりしない。だから本当に心配しなくても良いんだ」

「離婚っ……!!!???」

ラルフが驚愕の表情を浮かべるけれど、さすがに離婚するしかないと思う。

愛人なんて相手が可哀相だし、ラルフの性格的にもそれはできないだろう。それにオレだって、仲睦まじいふたりを傍で見守るなんて絶対に無理だから。

「そりゃそうなるだろ。ラルフが子どもの頃からずーーーーっと憧れてた『運命の番』がやっと見つかったんだ。約束通りオレは身を引くよ」

「いや、待ってくれ、ビスチェ! 僕はそんな……!」

「大丈夫だって」

慌てるラルフを押しとどめて、オレはこれまでに考えて来たことを冷静に伝えていく。

「オレの事は心配しなくても大丈夫。はヒートを抑えるための薬も副作用が少ないのが出てるし、なんなら別なヤツに相手を頼んだっていいわけだし。ラルフを困らせるつもりなんて最初からないんだよ」

「別なヤツ……?」

ピリ、と空気に亀裂が入ったみたいな気がした。

「ラルフ?」

「もしかして、そいつにはここを噛ませるつもり?」

オレのうなじを指先でスリスリと撫でながら、ラルフが微笑む。笑顔なのに、なんかえらく怖かった。

「い、いや、それはまだ分かんないけど」

「そう、分かんないんだ。僕にはいつも、絶対に噛んじゃダメって言うのに?」

え、めっちゃ怖い。

今まで生きてきた中で一番怖い笑顔かも知れない。

「いや、だって、本当に番ったりしたらさ、ラルフに『運命の番』が現れたらオレ、その後詰むじゃん。実際こうして現れたわけだし」

そう言った途端、ラルフの目が半目になった。

「運命の番、運命の番ってうるさいな」

「へ?」

信じられない言葉を聞いた気がして、オレはラルフを凝視した。

え、今ラルフが言ったの?

いや、まさか。

声だっていつもと違ったし、きっと聞き間違いだよな。

そうだよ、だってラルフはこんな地を這うような怖い声ださない。

けれどラルフは表情が抜け落ちたような顔をしてこう言った。

「口を開けば『運命の番』『運命の番』って……もうその言葉は聞き飽きたよ」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

【完結】愛してるから。今日も俺は、お前を忘れたふりをする

葵井瑞貴
BL
『好きだからこそ、いつか手放さなきゃいけない日が来るーー今がその時だ』 騎士団でバディを組むリオンとユーリは、恋人同士。しかし、付き合っていることは周囲に隠している。 平民のリオンは、貴族であるユーリの幸せな結婚と未来を願い、記憶喪失を装って身を引くことを決意する。 しかし、リオンを深く愛するユーリは「何度君に忘れられても、また好きになってもらえるように頑張る」と一途に言いーー。 ほんわか包容力溺愛攻め×トラウマ持ち強気受け

【完結】何一つ僕のお願いを聞いてくれない彼に、別れてほしいとお願いした結果。

N2O
BL
好きすぎて一部倫理観に反することをしたα × 好きすぎて馬鹿なことしちゃったΩ ※オメガバース設定をお借りしています。 ※素人作品です。温かな目でご覧ください。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。 1日2話ずつ投稿します。

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです

捨てられオメガの幸せは

ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。 幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

処理中です...