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え、今ラルフが言ったの?
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「ラルフはさ、オレですらすごく大切にしてくれたじゃん。優しくて生真面目で……そんなお前が、最愛の『運命の番』がいるのに他のヤツなんて抱けるわけがないだろ」
それが分かってたから、いつかラルフに『運命の番』が見つかった時にラルフを困らせたりしないよう、あえて『番』にはなっていないんだから。
ラルフにうなじを噛ませたりしないで、本当に良かった。
「離婚したらさ、オレはもうお前に発情期の相手を頼んだりしない。だから本当に心配しなくても良いんだ」
「離婚っ……!!!???」
ラルフが驚愕の表情を浮かべるけれど、さすがに離婚するしかないと思う。
愛人なんて相手が可哀相だし、ラルフの性格的にもそれはできないだろう。それにオレだって、仲睦まじいふたりを傍で見守るなんて絶対に無理だから。
「そりゃそうなるだろ。ラルフが子どもの頃からずーーーーっと憧れてた『運命の番』がやっと見つかったんだ。約束通りオレは身を引くよ」
「いや、待ってくれ、ビスチェ! 僕はそんな……!」
「大丈夫だって」
慌てるラルフを押しとどめて、オレはこれまでに考えて来たことを冷静に伝えていく。
「オレの事は心配しなくても大丈夫。はヒートを抑えるための薬も副作用が少ないのが出てるし、なんなら別なヤツに相手を頼んだっていいわけだし。ラルフを困らせるつもりなんて最初からないんだよ」
「別なヤツ……?」
ピリ、と空気に亀裂が入ったみたいな気がした。
「ラルフ?」
「もしかして、そいつにはここを噛ませるつもり?」
オレのうなじを指先でスリスリと撫でながら、ラルフが微笑む。笑顔なのに、なんかえらく怖かった。
「い、いや、それはまだ分かんないけど」
「そう、分かんないんだ。僕にはいつも、絶対に噛んじゃダメって言うのに?」
え、めっちゃ怖い。
今まで生きてきた中で一番怖い笑顔かも知れない。
「いや、だって、本当に番ったりしたらさ、ラルフに『運命の番』が現れたらオレ、その後詰むじゃん。実際こうして現れたわけだし」
そう言った途端、ラルフの目が半目になった。
「運命の番、運命の番ってうるさいな」
「へ?」
信じられない言葉を聞いた気がして、オレはラルフを凝視した。
え、今ラルフが言ったの?
いや、まさか。
声だっていつもと違ったし、きっと聞き間違いだよな。
そうだよ、だってラルフはこんな地を這うような怖い声ださない。
けれどラルフは表情が抜け落ちたような顔をしてこう言った。
「口を開けば『運命の番』『運命の番』って……もうその言葉は聞き飽きたよ」
それが分かってたから、いつかラルフに『運命の番』が見つかった時にラルフを困らせたりしないよう、あえて『番』にはなっていないんだから。
ラルフにうなじを噛ませたりしないで、本当に良かった。
「離婚したらさ、オレはもうお前に発情期の相手を頼んだりしない。だから本当に心配しなくても良いんだ」
「離婚っ……!!!???」
ラルフが驚愕の表情を浮かべるけれど、さすがに離婚するしかないと思う。
愛人なんて相手が可哀相だし、ラルフの性格的にもそれはできないだろう。それにオレだって、仲睦まじいふたりを傍で見守るなんて絶対に無理だから。
「そりゃそうなるだろ。ラルフが子どもの頃からずーーーーっと憧れてた『運命の番』がやっと見つかったんだ。約束通りオレは身を引くよ」
「いや、待ってくれ、ビスチェ! 僕はそんな……!」
「大丈夫だって」
慌てるラルフを押しとどめて、オレはこれまでに考えて来たことを冷静に伝えていく。
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「別なヤツ……?」
ピリ、と空気に亀裂が入ったみたいな気がした。
「ラルフ?」
「もしかして、そいつにはここを噛ませるつもり?」
オレのうなじを指先でスリスリと撫でながら、ラルフが微笑む。笑顔なのに、なんかえらく怖かった。
「い、いや、それはまだ分かんないけど」
「そう、分かんないんだ。僕にはいつも、絶対に噛んじゃダメって言うのに?」
え、めっちゃ怖い。
今まで生きてきた中で一番怖い笑顔かも知れない。
「いや、だって、本当に番ったりしたらさ、ラルフに『運命の番』が現れたらオレ、その後詰むじゃん。実際こうして現れたわけだし」
そう言った途端、ラルフの目が半目になった。
「運命の番、運命の番ってうるさいな」
「へ?」
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え、今ラルフが言ったの?
いや、まさか。
声だっていつもと違ったし、きっと聞き間違いだよな。
そうだよ、だってラルフはこんな地を這うような怖い声ださない。
けれどラルフは表情が抜け落ちたような顔をしてこう言った。
「口を開けば『運命の番』『運命の番』って……もうその言葉は聞き飽きたよ」
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