最愛の夫に、運命の番が現れた!

竜也りく

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確かめなきゃって思って

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これはオレに何か言いたいことがあって、「絶対に分かって貰うからな」と主張するときの、いわばお仕置きの体勢だ。

顔が近くて恥ずかしい上に、懇切丁寧に要望だのお叱りだのを受けた上、最終的にはめちゃくちゃに抱かれてドロドロに溶かされるという恐ろしい展開を、今まで既に三回は体験済みだったりする。

よく考えたら半年に一度くらいはお仕置きされてるオレって一体……って遠い目になるけど、ラルフの目力が強すぎてすぐに現実に引き戻されてしまった。

だって、無言で見つめてくるラルフからめっちゃ圧を感じる。

困ったなぁ。

帰って来るなりエントランスでラルフに捕獲されたんだ。つまりマークに会えてすらいない。マークに追いかけて貰った、ラルフの『運命の番』の情報だって欠片すら聞けてないんだよ。

お怒りのラルフに交渉材料がないのはすごくマズい。

あ、いや、ちゃんと調べてるよって言えばいいのか。そう気がついたオレは、おずおずと口火を切った。

「あ、あのさラルフ。今日のあの、お前の『運命の番』のことなんだけど」

「まだそうだと決まったわけじゃない」

「そ、そうだけど……」

ラルフが急にあまりにも不機嫌な声を出すから、ついビクついてしまう。

なんでそんなに怒ってるんだよ……。

いつもはこっちが困るくらい優しいのに、今日は信じられないくらいラルフからイライラしたような気配が伝わってきて怖い。

「でもさ、やっぱり気になるじゃん。確かめなきゃって思って、マークに追いかけて貰ったんだ」

「確かめてどうするんだい?」

ラルフ目の奥に、剣呑な光が宿ったのが見えた。

「え、だって」

「ビスチェはもしもあのオメガが僕の『運命』だったら、どうするつもり?」

「そ、そりゃ、約束通り身を引くよ」

「ふぅん、そう。じゃあ発情期はどうするつもり? 番がいないオメガの発情期は、熱が発散できなくてそれはそれは辛いと聞くよ?」

そう言いながらもラルフがエロい手つきでオレの首やチョーカーを撫でてくるから、ちょっとだけゾクゾクしてしまった。でも、ここで流されるわけにはいかない。

気持ちを強く持つんだ、オレ!

自分にそう言い聞かせて、オレはわざと明るい顔で笑って見せた。心配性のラルフが少しでも安心してくれるように。

「心配しなくても大丈夫! ラルフが誰よりも誠実なヤツだってのはオレが一番良く分かってるから!」

ラルフが怪訝そうに眉をひそめるけど、本当に心配しなくても大丈夫なんだ。オレだってちゃんと考えてる。
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