12 / 73
確かめなきゃって思って
しおりを挟む
これはオレに何か言いたいことがあって、「絶対に分かって貰うからな」と主張するときの、いわばお仕置きの体勢だ。
顔が近くて恥ずかしい上に、懇切丁寧に要望だのお叱りだのを受けた上、最終的にはめちゃくちゃに抱かれてドロドロに溶かされるという恐ろしい展開を、今まで既に三回は体験済みだったりする。
よく考えたら半年に一度くらいはお仕置きされてるオレって一体……って遠い目になるけど、ラルフの目力が強すぎてすぐに現実に引き戻されてしまった。
だって、無言で見つめてくるラルフからめっちゃ圧を感じる。
困ったなぁ。
帰って来るなりエントランスでラルフに捕獲されたんだ。つまりマークに会えてすらいない。マークに追いかけて貰った、ラルフの『運命の番』の情報だって欠片すら聞けてないんだよ。
お怒りのラルフに交渉材料がないのはすごくマズい。
あ、いや、ちゃんと調べてるよって言えばいいのか。そう気がついたオレは、おずおずと口火を切った。
「あ、あのさラルフ。今日のあの、お前の『運命の番』のことなんだけど」
「まだそうだと決まったわけじゃない」
「そ、そうだけど……」
ラルフが急にあまりにも不機嫌な声を出すから、ついビクついてしまう。
なんでそんなに怒ってるんだよ……。
いつもはこっちが困るくらい優しいのに、今日は信じられないくらいラルフからイライラしたような気配が伝わってきて怖い。
「でもさ、やっぱり気になるじゃん。確かめなきゃって思って、マークに追いかけて貰ったんだ」
「確かめてどうするんだい?」
ラルフ目の奥に、剣呑な光が宿ったのが見えた。
「え、だって」
「ビスチェはもしもあのオメガが僕の『運命』だったら、どうするつもり?」
「そ、そりゃ、約束通り身を引くよ」
「ふぅん、そう。じゃあ発情期はどうするつもり? 番がいないオメガの発情期は、熱が発散できなくてそれはそれは辛いと聞くよ?」
そう言いながらもラルフがエロい手つきでオレの首やチョーカーを撫でてくるから、ちょっとだけゾクゾクしてしまった。でも、ここで流されるわけにはいかない。
気持ちを強く持つんだ、オレ!
自分にそう言い聞かせて、オレはわざと明るい顔で笑って見せた。心配性のラルフが少しでも安心してくれるように。
「心配しなくても大丈夫! ラルフが誰よりも誠実なヤツだってのはオレが一番良く分かってるから!」
ラルフが怪訝そうに眉をひそめるけど、本当に心配しなくても大丈夫なんだ。オレだってちゃんと考えてる。
顔が近くて恥ずかしい上に、懇切丁寧に要望だのお叱りだのを受けた上、最終的にはめちゃくちゃに抱かれてドロドロに溶かされるという恐ろしい展開を、今まで既に三回は体験済みだったりする。
よく考えたら半年に一度くらいはお仕置きされてるオレって一体……って遠い目になるけど、ラルフの目力が強すぎてすぐに現実に引き戻されてしまった。
だって、無言で見つめてくるラルフからめっちゃ圧を感じる。
困ったなぁ。
帰って来るなりエントランスでラルフに捕獲されたんだ。つまりマークに会えてすらいない。マークに追いかけて貰った、ラルフの『運命の番』の情報だって欠片すら聞けてないんだよ。
お怒りのラルフに交渉材料がないのはすごくマズい。
あ、いや、ちゃんと調べてるよって言えばいいのか。そう気がついたオレは、おずおずと口火を切った。
「あ、あのさラルフ。今日のあの、お前の『運命の番』のことなんだけど」
「まだそうだと決まったわけじゃない」
「そ、そうだけど……」
ラルフが急にあまりにも不機嫌な声を出すから、ついビクついてしまう。
なんでそんなに怒ってるんだよ……。
いつもはこっちが困るくらい優しいのに、今日は信じられないくらいラルフからイライラしたような気配が伝わってきて怖い。
「でもさ、やっぱり気になるじゃん。確かめなきゃって思って、マークに追いかけて貰ったんだ」
「確かめてどうするんだい?」
ラルフ目の奥に、剣呑な光が宿ったのが見えた。
「え、だって」
「ビスチェはもしもあのオメガが僕の『運命』だったら、どうするつもり?」
「そ、そりゃ、約束通り身を引くよ」
「ふぅん、そう。じゃあ発情期はどうするつもり? 番がいないオメガの発情期は、熱が発散できなくてそれはそれは辛いと聞くよ?」
そう言いながらもラルフがエロい手つきでオレの首やチョーカーを撫でてくるから、ちょっとだけゾクゾクしてしまった。でも、ここで流されるわけにはいかない。
気持ちを強く持つんだ、オレ!
自分にそう言い聞かせて、オレはわざと明るい顔で笑って見せた。心配性のラルフが少しでも安心してくれるように。
「心配しなくても大丈夫! ラルフが誰よりも誠実なヤツだってのはオレが一番良く分かってるから!」
ラルフが怪訝そうに眉をひそめるけど、本当に心配しなくても大丈夫なんだ。オレだってちゃんと考えてる。
157
お気に入りに追加
1,221
あなたにおすすめの小説

もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載

【完結】愛してるから。今日も俺は、お前を忘れたふりをする
葵井瑞貴
BL
『好きだからこそ、いつか手放さなきゃいけない日が来るーー今がその時だ』
騎士団でバディを組むリオンとユーリは、恋人同士。しかし、付き合っていることは周囲に隠している。
平民のリオンは、貴族であるユーリの幸せな結婚と未来を願い、記憶喪失を装って身を引くことを決意する。
しかし、リオンを深く愛するユーリは「何度君に忘れられても、また好きになってもらえるように頑張る」と一途に言いーー。
ほんわか包容力溺愛攻め×トラウマ持ち強気受け

【完結】何一つ僕のお願いを聞いてくれない彼に、別れてほしいとお願いした結果。
N2O
BL
好きすぎて一部倫理観に反することをしたα × 好きすぎて馬鹿なことしちゃったΩ
※オメガバース設定をお借りしています。
※素人作品です。温かな目でご覧ください。



【完結】乙女ゲーの悪役モブに転生しました〜処刑は嫌なので真面目に生きてたら何故か公爵令息様に溺愛されてます〜
百日紅
BL
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でしたーー。
最後は処刑される運命の悪役モブ“サミール”に転生した主人公。
死亡ルートを回避するため学園の隅で日陰者ライフを送っていたのに、何故か攻略キャラの一人“ギルバート”に好意を寄せられる。
※毎日18:30投稿予定

捨てられオメガの幸せは
ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。
幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる