11 / 73
これは怒られるヤツ
しおりを挟む
「ビスチェ!」
オレが邸に帰るなり邸内がバタバタと慌ただしくなって、扉がバン! と開かれたかと思うとラルフが全速力で駆けてきた。
わざわざエントランスまで出迎えに来てくれたのか、なんて悠長な事を考えている間にかき抱かれて、隙間もなくなるくらいぎゅうっと強く抱きしめられる。
「ただいま、ラルフ」
「どこに行っていたんだ……!」
ラルフが切実な声を出すから、オレはちょっと慌てた。
「ごめん、魔研に行ってたんだ」
国立魔術研究所、略して魔研。
「たしか行き先はちゃんと伝えてから行ったと思うけど」
「それは聞いた。でもこんな時間まで……遅すぎじゃないか? 今日は元々休みの筈だろう」
ちょっとだけ、ラルフの声に苛立ちが混ざる。
ラルフはオレが休みの日に魔研に行くのをあまり好まない。働き過ぎだってよく叱られるけど、魔法は趣味みたいなもんだから、別に無理してるワケじゃ無いんだけどな。
「ラルフ、怒ってる?」
「……怒ってはいない。でも、こんな日くらい家で待ってくれてるだろうと思ったから……」
悲しい、と本当に悲しそうに言われて申し訳なくなった。
確かにもう日が暮れてから相当時間が経っている。ラルフを相当待たせてしまったのかも知れない。
顔を合わせる勇気がなかなか出なくてついつい遅くなってしまったけれど、今日はあんな事があった日だからこそ、こんなに遅くなるべきじゃなかった。
「ごめんね。オレもラルフと今後のこと話し合わなきゃな、って思ってたんだけど、なんか……どうしても落ち着かなくて」
言い訳みたいに呟くオレの言葉をかき消すように、オレの腹の虫が盛大にうなる。
なんでこんな時に。空気読んでほしい。なんて腹の虫に苦情を言ってる場合じゃなかった。
だってラルフの眉間に深い皺が寄ってる。
これはヤバい。絶対に怒られるヤツ……!
「まさかビスチェ、こんな時間まで夕食もとっていないのか!?」
「コーヒーは飲んだんだけど」
「それは食事じゃない! アリッサ、すぐに食事を用意するよう伝えてくれないか?」
こうなったラルフはもう誰にも止められない。ラルフは昔っからオレに関しては過保護だ。
オレはラルフに見張られながら栄養たっぷりの食事をとらされ、ついでに風呂に連行されて手ずから丸洗いされ、そのまま寝室までお姫様抱っこで運び込まれた。
豪奢なレザーベッドのふっかふかなヘッドボードにゆったりと背を預けたラルフは、自分の膝の上にオレを向かい合わせで座らせて、真正面から見つめてくる。
オレが邸に帰るなり邸内がバタバタと慌ただしくなって、扉がバン! と開かれたかと思うとラルフが全速力で駆けてきた。
わざわざエントランスまで出迎えに来てくれたのか、なんて悠長な事を考えている間にかき抱かれて、隙間もなくなるくらいぎゅうっと強く抱きしめられる。
「ただいま、ラルフ」
「どこに行っていたんだ……!」
ラルフが切実な声を出すから、オレはちょっと慌てた。
「ごめん、魔研に行ってたんだ」
国立魔術研究所、略して魔研。
「たしか行き先はちゃんと伝えてから行ったと思うけど」
「それは聞いた。でもこんな時間まで……遅すぎじゃないか? 今日は元々休みの筈だろう」
ちょっとだけ、ラルフの声に苛立ちが混ざる。
ラルフはオレが休みの日に魔研に行くのをあまり好まない。働き過ぎだってよく叱られるけど、魔法は趣味みたいなもんだから、別に無理してるワケじゃ無いんだけどな。
「ラルフ、怒ってる?」
「……怒ってはいない。でも、こんな日くらい家で待ってくれてるだろうと思ったから……」
悲しい、と本当に悲しそうに言われて申し訳なくなった。
確かにもう日が暮れてから相当時間が経っている。ラルフを相当待たせてしまったのかも知れない。
顔を合わせる勇気がなかなか出なくてついつい遅くなってしまったけれど、今日はあんな事があった日だからこそ、こんなに遅くなるべきじゃなかった。
「ごめんね。オレもラルフと今後のこと話し合わなきゃな、って思ってたんだけど、なんか……どうしても落ち着かなくて」
言い訳みたいに呟くオレの言葉をかき消すように、オレの腹の虫が盛大にうなる。
なんでこんな時に。空気読んでほしい。なんて腹の虫に苦情を言ってる場合じゃなかった。
だってラルフの眉間に深い皺が寄ってる。
これはヤバい。絶対に怒られるヤツ……!
「まさかビスチェ、こんな時間まで夕食もとっていないのか!?」
「コーヒーは飲んだんだけど」
「それは食事じゃない! アリッサ、すぐに食事を用意するよう伝えてくれないか?」
こうなったラルフはもう誰にも止められない。ラルフは昔っからオレに関しては過保護だ。
オレはラルフに見張られながら栄養たっぷりの食事をとらされ、ついでに風呂に連行されて手ずから丸洗いされ、そのまま寝室までお姫様抱っこで運び込まれた。
豪奢なレザーベッドのふっかふかなヘッドボードにゆったりと背を預けたラルフは、自分の膝の上にオレを向かい合わせで座らせて、真正面から見つめてくる。
166
お気に入りに追加
1,221
あなたにおすすめの小説

もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載

【完結】何一つ僕のお願いを聞いてくれない彼に、別れてほしいとお願いした結果。
N2O
BL
好きすぎて一部倫理観に反することをしたα × 好きすぎて馬鹿なことしちゃったΩ
※オメガバース設定をお借りしています。
※素人作品です。温かな目でご覧ください。



【完結】乙女ゲーの悪役モブに転生しました〜処刑は嫌なので真面目に生きてたら何故か公爵令息様に溺愛されてます〜
百日紅
BL
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でしたーー。
最後は処刑される運命の悪役モブ“サミール”に転生した主人公。
死亡ルートを回避するため学園の隅で日陰者ライフを送っていたのに、何故か攻略キャラの一人“ギルバート”に好意を寄せられる。
※毎日18:30投稿予定

捨てられオメガの幸せは
ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。
幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。

末っ子王子は婚約者の愛を信じられない。
めちゅう
BL
末っ子王子のフランは兄であるカイゼンとその伴侶であるトーマの結婚式で涙を流すトーマ付きの騎士アズランを目にする。密かに慕っていたアズランがトーマに失恋したと思いー。
お読みくださりありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる