最愛の夫に、運命の番が現れた!

竜也りく

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これは怒られるヤツ

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「ビスチェ!」

オレが邸に帰るなり邸内がバタバタと慌ただしくなって、扉がバン! と開かれたかと思うとラルフが全速力で駆けてきた。

わざわざエントランスまで出迎えに来てくれたのか、なんて悠長な事を考えている間にかき抱かれて、隙間もなくなるくらいぎゅうっと強く抱きしめられる。

「ただいま、ラルフ」

「どこに行っていたんだ……!」

ラルフが切実な声を出すから、オレはちょっと慌てた。

「ごめん、魔研に行ってたんだ」

国立魔術研究所、略して魔研。

「たしか行き先はちゃんと伝えてから行ったと思うけど」

「それは聞いた。でもこんな時間まで……遅すぎじゃないか? 今日は元々休みの筈だろう」

ちょっとだけ、ラルフの声に苛立ちが混ざる。

ラルフはオレが休みの日に魔研に行くのをあまり好まない。働き過ぎだってよく叱られるけど、魔法は趣味みたいなもんだから、別に無理してるワケじゃ無いんだけどな。

「ラルフ、怒ってる?」

「……怒ってはいない。でも、こんな日くらい家で待ってくれてるだろうと思ったから……」

悲しい、と本当に悲しそうに言われて申し訳なくなった。

確かにもう日が暮れてから相当時間が経っている。ラルフを相当待たせてしまったのかも知れない。

顔を合わせる勇気がなかなか出なくてついつい遅くなってしまったけれど、今日はあんな事があった日だからこそ、こんなに遅くなるべきじゃなかった。

「ごめんね。オレもラルフと今後のこと話し合わなきゃな、って思ってたんだけど、なんか……どうしても落ち着かなくて」

言い訳みたいに呟くオレの言葉をかき消すように、オレの腹の虫が盛大にうなる。

なんでこんな時に。空気読んでほしい。なんて腹の虫に苦情を言ってる場合じゃなかった。

だってラルフの眉間に深い皺が寄ってる。

これはヤバい。絶対に怒られるヤツ……!

「まさかビスチェ、こんな時間まで夕食もとっていないのか!?」

「コーヒーは飲んだんだけど」

「それは食事じゃない! アリッサ、すぐに食事を用意するよう伝えてくれないか?」

こうなったラルフはもう誰にも止められない。ラルフは昔っからオレに関しては過保護だ。

オレはラルフに見張られながら栄養たっぷりの食事をとらされ、ついでに風呂に連行されて手ずから丸洗いされ、そのまま寝室までお姫様抱っこで運び込まれた。

豪奢なレザーベッドのふっかふかなヘッドボードにゆったりと背を預けたラルフは、自分の膝の上にオレを向かい合わせで座らせて、真正面から見つめてくる。
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