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【マーク視点】ラルフ様なら、きっと

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ラルフ様が端的に聞いてくる。

紳士なだけあって機嫌が悪かろうと使用人にあたってきたりはしないのがラルフ様のいいところだ。ただアルファゆえの威圧感はどうしても増し増しになるから、こっちが勝手にびびってしまうと。

これはもう仕方がない。悲しきベータの性だ。

内心ビビリつつも、俺は入手した情報を順序よく伝えていく。

「あの女性は男爵家の令嬢のようです。名はアリアナ」

邸の場所と家紋を見せれば、ラルフ様は苦い顔で「ミクス男爵の娘か……」と呟いた。

ラルフ様の様子から察するに、多分ミクス男爵はあまり冷静な話し合いが出来る人物ではないんだろう。俺も同感だ。

「恋人はダニエルという名の男のようですが、男爵と思われる男はふたりの交際を良くは思っていなかったようです。庶民だと唾棄するような口調でした」

「だろうな。ミクス男爵についてはいい噂を聞かないしな。実力もないのに野心だけ強い男だと」

「女性本人は恋人との関係性を続けたいように感じましたが、『運命の番』がラルフ様だと知った父親の方が完全に舞い上がっておりまして」

「彼女と出会ったのが、僕だと認識されているのか」

「アリアナ嬢の護衛が報告したようです」

「無駄に仕事のできる……!」

ラルフ様は器用にも褒めながら悔しがっている。

「今日の移動、家紋入りの馬車でしたもんね……」

ラルフ様に同情しつつ、あの下卑た笑いを思い出してつい渋~い顔になってしまった。

「どうした」

「いやー……ミクス男爵、でしたっけ? すげぇ嫌な感じだったんですよ」

あんなのに家も顔も知られてて、その上娘の結婚相手としてロックオンされるだなんて、俺だって怖気が走る。

「なんかニタァって笑って、『運命の番』なら本能で惹かれ合うからやりようはいくらでもある、って言ってて。とんでもなくえげつない事考えてそうで、俺……早くラルフ様に伝えなきゃと思って慌てて帰って来たんですよね」

「なるほど、よく知らせてくれた」

ラルフ様眉がキリリと引き締まる。俺が感じた嫌な感じは、的確に感じ取って貰えたみたいだ。

「いえ、お役に立てたならよかったっす」

「ビスチェに余計な心配をさせたくない。今日はもう上がってくれ。明日以後ビスチェに報告する際は、あの女には恋人がいて仲睦まじい様子だったとだけ報告すれば良い」

「そこは事実ですのでそのようにお伝えします」

俺だってふたりにはずっとずっと仲睦まじくいて欲しい。

ラルフ様ならきっと、この状況をなんとか捻じ伏せて、ビスチェ様と幸せになれる道を探ってくれるに違いない。

そう信じるしかなかった。
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