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【マーク視点】嫌なものを見た
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『運命の番』が見つかるなんて本当の本当に稀な事なのに、どっちにも恋人や伴侶がいるなんて、世の中うまくいかないものなんだなぁ。
でも、ある意味これで良かったのか。
相手がフリーだと、しつこく言い寄られて面倒な事になりかねない。そうなったら泥沼だ。
頼むから、その恋人を大事にしてくれ。そしてラルフ様とビスチェ様の幸せを邪魔しないで欲しい。
そう願いつつ、恋人らしき男と別れ自邸へと帰る様子の女性の方を追って来てみれば、それなりにでかい邸についた。家紋から察するに男爵位を保持する家だろう。
邸の場所と家紋は記録したから、必要があれば割り出せばいい。今は彼らの反応を探る方が優先だろう。
そう判断し、彼女が邸に入るのを見届けてから、隠密魔法を駆使してまずは庭へと入り込む。
邸の中へ侵入できる経路を探していたら、突然窓も吹っ飛びそうな、爆音みたいな笑い声が響いてきた。音の出所に近づいて身を隠したまま中を覗けば、窓の向こう側ではでっぷり太った……いや、少々恰幅が良過ぎる紳士が、腹を抱えて笑っている。
身なりから考えて、この邸の主人である可能性が高そうだ。
「でかしたぞラッタ! しかしなんとまぁ、アジュガイル伯爵家の嫡男で、しかも次期宰相の呼び声も高いラルフ様の『運命』だとはさすが我が娘! アリアナをあんな庶民などにやすやすと嫁がせなくて本当に良かった」
「しかしアリアナ様は、『運命の番』よりも、ダニエル様との婚姻をお望みのようですが」
あの娘についていた護衛の報告に、邸の主人はなんとも嫌な笑みを浮かべた。
「ふん、そうであろうなぁ。アリアナは『運命の番に会った』事などおくびにも出さん。しかしやりようなどいくらでもある。本当に『運命の番』であれば本能で惹かれ合うもの。すべてをかなぐり捨てて番うというからなぁ」
うわぁ。
下卑た笑いを目にして、ベータの俺ですらゾクっとした。
なんか良からぬ事を企んでいそうで怖い。一刻も早く戻って報告せねば、と気が急いた。どっちかっつうとこれはラルフ様の方に伝えるべき案件な気がする。
***
そうして急ぎ邸に戻った俺を待ち受けていたのは、やはりラルフ様だった。
しかも機嫌が超絶に悪い。
この機嫌の悪さは多分、帰ってきたらビスチェ様が外出してたとかそんなとこだろう。なんで大人しく邸でラルフ様を待っててくれないんだ、ビスチェ様……。
「遅かったなマーク。ビスチェにあの女を追うように言われただろう。何か掴んだか?」
でも、ある意味これで良かったのか。
相手がフリーだと、しつこく言い寄られて面倒な事になりかねない。そうなったら泥沼だ。
頼むから、その恋人を大事にしてくれ。そしてラルフ様とビスチェ様の幸せを邪魔しないで欲しい。
そう願いつつ、恋人らしき男と別れ自邸へと帰る様子の女性の方を追って来てみれば、それなりにでかい邸についた。家紋から察するに男爵位を保持する家だろう。
邸の場所と家紋は記録したから、必要があれば割り出せばいい。今は彼らの反応を探る方が優先だろう。
そう判断し、彼女が邸に入るのを見届けてから、隠密魔法を駆使してまずは庭へと入り込む。
邸の中へ侵入できる経路を探していたら、突然窓も吹っ飛びそうな、爆音みたいな笑い声が響いてきた。音の出所に近づいて身を隠したまま中を覗けば、窓の向こう側ではでっぷり太った……いや、少々恰幅が良過ぎる紳士が、腹を抱えて笑っている。
身なりから考えて、この邸の主人である可能性が高そうだ。
「でかしたぞラッタ! しかしなんとまぁ、アジュガイル伯爵家の嫡男で、しかも次期宰相の呼び声も高いラルフ様の『運命』だとはさすが我が娘! アリアナをあんな庶民などにやすやすと嫁がせなくて本当に良かった」
「しかしアリアナ様は、『運命の番』よりも、ダニエル様との婚姻をお望みのようですが」
あの娘についていた護衛の報告に、邸の主人はなんとも嫌な笑みを浮かべた。
「ふん、そうであろうなぁ。アリアナは『運命の番に会った』事などおくびにも出さん。しかしやりようなどいくらでもある。本当に『運命の番』であれば本能で惹かれ合うもの。すべてをかなぐり捨てて番うというからなぁ」
うわぁ。
下卑た笑いを目にして、ベータの俺ですらゾクっとした。
なんか良からぬ事を企んでいそうで怖い。一刻も早く戻って報告せねば、と気が急いた。どっちかっつうとこれはラルフ様の方に伝えるべき案件な気がする。
***
そうして急ぎ邸に戻った俺を待ち受けていたのは、やはりラルフ様だった。
しかも機嫌が超絶に悪い。
この機嫌の悪さは多分、帰ってきたらビスチェ様が外出してたとかそんなとこだろう。なんで大人しく邸でラルフ様を待っててくれないんだ、ビスチェ様……。
「遅かったなマーク。ビスチェにあの女を追うように言われただろう。何か掴んだか?」
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