最愛の夫に、運命の番が現れた!

竜也りく

文字の大きさ
上 下
9 / 73

【マーク視点】嫌なものを見た

しおりを挟む
『運命の番』が見つかるなんて本当の本当に稀な事なのに、どっちにも恋人や伴侶がいるなんて、世の中うまくいかないものなんだなぁ。

でも、ある意味これで良かったのか。

相手がフリーだと、しつこく言い寄られて面倒な事になりかねない。そうなったら泥沼だ。

頼むから、その恋人を大事にしてくれ。そしてラルフ様とビスチェ様の幸せを邪魔しないで欲しい。

そう願いつつ、恋人らしき男と別れ自邸へと帰る様子の女性の方を追って来てみれば、それなりにでかい邸についた。家紋から察するに男爵位を保持する家だろう。

邸の場所と家紋は記録したから、必要があれば割り出せばいい。今は彼らの反応を探る方が優先だろう。

そう判断し、彼女が邸に入るのを見届けてから、隠密魔法を駆使してまずは庭へと入り込む。

邸の中へ侵入できる経路を探していたら、突然窓も吹っ飛びそうな、爆音みたいな笑い声が響いてきた。音の出所に近づいて身を隠したまま中を覗けば、窓の向こう側ではでっぷり太った……いや、少々恰幅が良過ぎる紳士が、腹を抱えて笑っている。

身なりから考えて、この邸の主人である可能性が高そうだ。

「でかしたぞラッタ! しかしなんとまぁ、アジュガイル伯爵家の嫡男で、しかも次期宰相の呼び声も高いラルフ様の『運命』だとはさすが我が娘! アリアナをあんな庶民などにやすやすと嫁がせなくて本当に良かった」

「しかしアリアナ様は、『運命の番』よりも、ダニエル様との婚姻をお望みのようですが」

あの娘についていた護衛の報告に、邸の主人はなんとも嫌な笑みを浮かべた。

「ふん、そうであろうなぁ。アリアナは『運命の番に会った』事などおくびにも出さん。しかしやりようなどいくらでもある。本当に『運命の番』であれば本能で惹かれ合うもの。すべてをかなぐり捨てて番うというからなぁ」

うわぁ。

下卑た笑いを目にして、ベータの俺ですらゾクっとした。

なんか良からぬ事を企んでいそうで怖い。一刻も早く戻って報告せねば、と気が急いた。どっちかっつうとこれはラルフ様の方に伝えるべき案件な気がする。

***

そうして急ぎ邸に戻った俺を待ち受けていたのは、やはりラルフ様だった。

しかも機嫌が超絶に悪い。

この機嫌の悪さは多分、帰ってきたらビスチェ様が外出してたとかそんなとこだろう。なんで大人しく邸でラルフ様を待っててくれないんだ、ビスチェ様……。

「遅かったなマーク。ビスチェにあの女を追うように言われただろう。何か掴んだか?」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。 1日2話ずつ投稿します。

【完結】愛してるから。今日も俺は、お前を忘れたふりをする

葵井瑞貴
BL
『好きだからこそ、いつか手放さなきゃいけない日が来るーー今がその時だ』 騎士団でバディを組むリオンとユーリは、恋人同士。しかし、付き合っていることは周囲に隠している。 平民のリオンは、貴族であるユーリの幸せな結婚と未来を願い、記憶喪失を装って身を引くことを決意する。 しかし、リオンを深く愛するユーリは「何度君に忘れられても、また好きになってもらえるように頑張る」と一途に言いーー。 ほんわか包容力溺愛攻め×トラウマ持ち強気受け

【完結】何一つ僕のお願いを聞いてくれない彼に、別れてほしいとお願いした結果。

N2O
BL
好きすぎて一部倫理観に反することをしたα × 好きすぎて馬鹿なことしちゃったΩ ※オメガバース設定をお借りしています。 ※素人作品です。温かな目でご覧ください。

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです

【完結】乙女ゲーの悪役モブに転生しました〜処刑は嫌なので真面目に生きてたら何故か公爵令息様に溺愛されてます〜

百日紅
BL
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でしたーー。 最後は処刑される運命の悪役モブ“サミール”に転生した主人公。 死亡ルートを回避するため学園の隅で日陰者ライフを送っていたのに、何故か攻略キャラの一人“ギルバート”に好意を寄せられる。 ※毎日18:30投稿予定

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

処理中です...