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オレに何ができるのかな
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「えっ、する!! 結婚する……!」
勢いで言っちまえ! とばかりに為されたオレのプロポーズに、ラルフは食い気味に肯定の返事をする。
コイツ、オレから何か頼まれると条件反射みたいに「うん!」って言うけど、いつかオレから言われるままにバカ高い物でもうっかり買っちゃいそうで怖い。
自分でも『結婚』なんて大事な事を即答した事に気がついたのか、はにかんだように微笑んだ。
「あ、でも、なんで急に。どうしたんだい?」
照れ臭そうな顔のまま、ラルフが改めて理由を聞いてくる。
「えっとお前さ、『運命の番』に憧れてるじゃん」
「……まぁ、憧れはあるけど」
「でもお前って仮にも伯爵家の嫡男だろ? お前がいくら『運命の番』との出会いを待ちたくても後継の問題もあるし難しいだろ。オレなら『運命の番』が見つかるまでの間の繋ぎに最適じゃねぇかと思って」
「ああ、そういう事……」
なんか半目でがっかりした顔されたっけ。
それでも結局はオレの提案を快く受け入れてくれて、オレとラルフはアカデミー卒業と同時に結婚したんだ。
その時にオレがラルフに約束したのはひとつだけ。
ラルフに『運命の番』が現れたら、潔く身を引くこと。
それだけだった。
「いやー、まさかこんなに早く『運命の番』が現れるなんてな」
思わずそんな呟きが漏れていた。
ずっとずっとガキの頃の、アイツが『うんめいのつがい』って言ってた時のキラキラした瞳を思い出す。
一生見つからないって人がほとんどだっていうのに、やっぱり純粋に『運命の番』に会いたいって思ってると会えるものなんだろうか。
ラルフはきっと、やっと出逢えた『運命の番』をそれはそれは大事にするだろう。だって、親友のオレでさえ、アイツはとても大切にしてくれた。
愛情も安心も信頼も……たくさんの思い出も、濃厚な夜も、全てを与えてくれたと思う。
結婚してからの二年間、ずっと楽しくて幸せで、本当はこんな日がずっと続けばいいって思ってたけど、『運命の番』にはさすがに敵わない。
ラルフは優しいから、一度は結婚したオレを裏切るような気がして、今日は『運命の番』を追う事に躊躇していたんだろう。
でも、結婚前からちゃんと約束してた事だから、負い目なんて感じずにこの得難いチャンスを掴んで欲しい。
アイツが幸せになる分、おんなじくらいオレも幸せにならないと、アイツはきっと納得しないだろう。
オレに何ができるのかな。
自分の首を守っているチョーカーをそっと撫でて、オレは冷めてしまったコーヒーをゆっくりと飲み干した。
勢いで言っちまえ! とばかりに為されたオレのプロポーズに、ラルフは食い気味に肯定の返事をする。
コイツ、オレから何か頼まれると条件反射みたいに「うん!」って言うけど、いつかオレから言われるままにバカ高い物でもうっかり買っちゃいそうで怖い。
自分でも『結婚』なんて大事な事を即答した事に気がついたのか、はにかんだように微笑んだ。
「あ、でも、なんで急に。どうしたんだい?」
照れ臭そうな顔のまま、ラルフが改めて理由を聞いてくる。
「えっとお前さ、『運命の番』に憧れてるじゃん」
「……まぁ、憧れはあるけど」
「でもお前って仮にも伯爵家の嫡男だろ? お前がいくら『運命の番』との出会いを待ちたくても後継の問題もあるし難しいだろ。オレなら『運命の番』が見つかるまでの間の繋ぎに最適じゃねぇかと思って」
「ああ、そういう事……」
なんか半目でがっかりした顔されたっけ。
それでも結局はオレの提案を快く受け入れてくれて、オレとラルフはアカデミー卒業と同時に結婚したんだ。
その時にオレがラルフに約束したのはひとつだけ。
ラルフに『運命の番』が現れたら、潔く身を引くこと。
それだけだった。
「いやー、まさかこんなに早く『運命の番』が現れるなんてな」
思わずそんな呟きが漏れていた。
ずっとずっとガキの頃の、アイツが『うんめいのつがい』って言ってた時のキラキラした瞳を思い出す。
一生見つからないって人がほとんどだっていうのに、やっぱり純粋に『運命の番』に会いたいって思ってると会えるものなんだろうか。
ラルフはきっと、やっと出逢えた『運命の番』をそれはそれは大事にするだろう。だって、親友のオレでさえ、アイツはとても大切にしてくれた。
愛情も安心も信頼も……たくさんの思い出も、濃厚な夜も、全てを与えてくれたと思う。
結婚してからの二年間、ずっと楽しくて幸せで、本当はこんな日がずっと続けばいいって思ってたけど、『運命の番』にはさすがに敵わない。
ラルフは優しいから、一度は結婚したオレを裏切るような気がして、今日は『運命の番』を追う事に躊躇していたんだろう。
でも、結婚前からちゃんと約束してた事だから、負い目なんて感じずにこの得難いチャンスを掴んで欲しい。
アイツが幸せになる分、おんなじくらいオレも幸せにならないと、アイツはきっと納得しないだろう。
オレに何ができるのかな。
自分の首を守っているチョーカーをそっと撫でて、オレは冷めてしまったコーヒーをゆっくりと飲み干した。
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