最愛の夫に、運命の番が現れた!

竜也りく

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リフレッシュできたかも

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「かしこまりました」

美人でクールでカッコいい彼女を心の中でアリッサちゃん呼びしているのは内緒だ。

「お帰りは何時頃でしょうか」

「うーん、分かんないなぁ。目処がついたら連絡するよ」

「かしこまりました」

アリッサちゃんの口元が、僅かに弧を描く。

こりゃ帰ってこないかもな、って思われたんだろうけど、さすがに今日は帰ってくるよ。だってラルフと今後の事を話し合わなきゃいけないだろうし。

アリッサちゃんが手配してくれた車に乗って、オレは魔術師塔へと吸い込まれていく。

なんでもできるラルフは王城の文官。いずれは先頭切って国を動かす人物になるんだろう。そしてオレは、好きで好きでたまらない魔術を極めるために、魔術の研究、開発を担う国家機関『国立魔術研究所』に在籍している。

今はまだ下っ端で、数えきれないほどの魔術を調べまくって覚えまくって、改良を施していくのが仕事だ。

側から見たら眠くなるような仕事かも知れない。けれど、未知の魔術に出会うたびワクワクする。そしていつか培った知識を使って、国を動かすようになったラルフを、オレが編み出す魔術で助けてやるのがオレの野望だ。

そう。ラルフの隣に立てなくなっても、オレには魔術がある。

魔術を研究してれば楽しいし、間接的にでもラルフの笑顔に貢献できるんだ。そんなに悲観する事じゃ無い。

自分を鼓舞しながら、昨日の続きに手をかけた。

今日は本当なら休みだから、人もいなくて集中できる。今研究していたのは古来から伝わる生活魔術の一種だけど、書き写しに書き写しを重ねてきたのかなんだかスペルが複雑で、魔術を展開しようとすると途中でプスン、と小さな音を立てて霧散してしまうのだ。

だから本当はどんな魔術なのか誰も知らない、というめちゃくちゃ面白い案件だった。

こんがらがってそうな所を改良して、多分正しいだろう方向に導いていくのは楽しいし、急ぎの案件でもない。今日みたいな日にはうってつけの仕事だった。

古代魔術の文献を積み上げて、魔法陣に似たところがないか、構造が同じところがないかを調べながらああでもない、こうでもないと考えていたら、いつの間にか窓の外が真っ暗になっていた。

「結構リフレッシュできたかも」

ふう、と大きく息をついてから立ち上がり、コーヒーを淹れてから自席に戻る。

今なら、冷静にオレとラルフのこれからについて考えられる。

アイツは優しいヤツだ。

オレが悲しんでるって分かったら、きっと気兼ねしてしまうだろう。

ラルフだけが幸せになればいいんじゃない。道は違えど、オレも、ラルフも、どっちも幸せになれる方法を探すしかないと思うんだ。
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