アイツが女装やめたら世界が滅びるんだってさ

左側

文字の大きさ
上 下
3 / 12

3 風呂が憎いっ!

しおりを挟む
今の時間は夜だが、まだ深夜って程じゃない。

本来だったらクソ第三王子は常に女装をしているんだ。
だからいつもなら、今頃は可愛らしいフリっフリのドレスを着ているか、風呂にでも入っている頃……、……風呂?

クソっ、そういう事かっ。
風呂に入る為にドレスを脱いでいたところを襲撃されたから、コイツは全裸なのか。
女装をしていなかったから、コイツの難ありな性格が剥き出しになったのか!


カケラも女装をしていない今のコイツは。
一糸纏わぬ全裸のコイツは。

完全に、男! ……元々が男なんだから当たり前か。


だが、悪いな。お前をこのまま男でいさせてやるワケには行かねぇんだよ。
女装していない時間が延びれば延びるだけ、魔王が復活する確率が高まるとかで、世界が危険らしいからな。
風呂に入るぐらいの時間なら女装を中断しても問題無いが。風呂に入って、襲撃されて、今も全裸って事は。結構な時間、女装をしていないって事だろ。



「……で? 近衛も侍従も食うなって言うなら? 俺はナニを食えばイイ?」
「この時間からの夜食は肌に悪いぞ? 水でも飲んでろ。」

こうしている間にも、クソ王子の機嫌は荒くれ続ける。
腕組みして不機嫌に顔を歪めている姿を見せ付けている。

コッチこそ舌打ちしたくなったのを堪えきったオレは。
クソ王子の長髪に着けられているはずの、キラっキラで可愛らしいバレッタが外れている事に気が付いた。何処にも見当たらない。
よくよく見直してみればクソ王子の身体には、いつも必ず何かしらを身に着けているはずのアクセサリー類……ネックレスやブレスレットの全てが無かった。


おいコラっ、なんで全部、外してる……、あぁ、そうか、風呂に……。



あああぁぁぁっ、風呂が……、風呂が憎いいぃっっ!



「お前さぁ? 俺を世話すんのが仕事じゃねぇのか? 身代わりぐらい用意しろよ、なァ、騎士サマぁ~?」
「下半身の世話は仕事じゃねぇ。煽るな。」

わざとらしく煽って来るクソ王子から、オレは顔を背けた。
クソ王子のまだ勃起中の逸物を視界から追い出しながら、ポケットの中を探る。
指先にその存在を確認してシッカリと掴んだ。

クリーム色でモッコモコのシュシュ。

念の為に持って来て良かった。
後はこれを、どうやってコイツの頭に着けるかだ。


「……エルドレッド。」

クソ王子が珍しくオレの名を呼んだ。
声が低い。
余計な煽り文句も垂れ流して来ない。
ちょっと危険なサインだ。


「エルディ。」
「チッ……なんだ?」

舌打ちした瞬間。クソ王子に顔を掴まれ、強引に正面へ向き直される。
と、ヤバい感じでニヤ付いた笑顔がすぐ間近にあった。


「お前はしょっちゅう纏わり付いて来るから、いつでも食えると思って放置してたんだけど……なァ?」

纏わり付く、は言い過ぎだろ。
コッチは仕事してンだよ。


「案外……今がその時、なんじゃねェ?」
「馬鹿言うな。いいから、まずは服を着ろ。」

あぁこれはマズいぞ。
さっさとコイツに可愛らしい服を着せねぇと。


「ヴァレンタイン第三王子殿下。……殿下は今、大変に混乱しておられるのです。速やかに服をお召しになり…」
「ハァ~?」

お互いにちょっとでも落ち着こうと、オレもクソ王子の名を呼んだ。
これでもコイツは王子殿下だと自分に言い聞かせ、口調も真っ当な世話役っぽいものに戻す。

どうやらクソ王子にはほんの少しも効果が無かったようだ。
いよいよ本格的にマズいかも、なんだが。


「…落ち着かれたら、部屋の出入口に掛けた障壁をお取り除きくださるよう、お願い致します。外で近衛の方達がお待ちです。彼等に襲撃者を引き渡しましょう。」
「今更そんな、気取った物言いで指図すんな。」
「近衛も、侍従も、皆が殿下を心配しております。殿下がどう…」
「…黙れ。」

尚もへこたれずに続ける勤勉なオレの口を、クソ王子が遠慮無く唇で塞いできた。
オレはポケットの中でシュシュを力一杯に握り込む。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

ヤクザと捨て子

幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子 ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。 ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。

僕の穴があるから入りましょう!!

ミクリ21
BL
穴があったら入りたいって言葉から始まる。

処理中です...