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3 風呂が憎いっ!
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今の時間は夜だが、まだ深夜って程じゃない。
本来だったらクソ第三王子は常に女装をしているんだ。
だからいつもなら、今頃は可愛らしいフリっフリのドレスを着ているか、風呂にでも入っている頃……、……風呂?
クソっ、そういう事かっ。
風呂に入る為にドレスを脱いでいたところを襲撃されたから、コイツは全裸なのか。
女装をしていなかったから、コイツの難ありな性格が剥き出しになったのか!
カケラも女装をしていない今のコイツは。
一糸纏わぬ全裸のコイツは。
完全に、男! ……元々が男なんだから当たり前か。
だが、悪いな。お前をこのまま男でいさせてやるワケには行かねぇんだよ。
女装していない時間が延びれば延びるだけ、魔王が復活する確率が高まるとかで、世界が危険らしいからな。
風呂に入るぐらいの時間なら女装を中断しても問題無いが。風呂に入って、襲撃されて、今も全裸って事は。結構な時間、女装をしていないって事だろ。
「……で? 近衛も侍従も食うなって言うなら? 俺はナニを食えばイイ?」
「この時間からの夜食は肌に悪いぞ? 水でも飲んでろ。」
こうしている間にも、クソ王子の機嫌は荒くれ続ける。
腕組みして不機嫌に顔を歪めている姿を見せ付けている。
コッチこそ舌打ちしたくなったのを堪えきったオレは。
クソ王子の長髪に着けられているはずの、キラっキラで可愛らしいバレッタが外れている事に気が付いた。何処にも見当たらない。
よくよく見直してみればクソ王子の身体には、いつも必ず何かしらを身に着けているはずのアクセサリー類……ネックレスやブレスレットの全てが無かった。
おいコラっ、なんで全部、外してる……、あぁ、そうか、風呂に……。
あああぁぁぁっ、風呂が……、風呂が憎いいぃっっ!
「お前さぁ? 俺を世話すんのが仕事じゃねぇのか? 身代わりぐらい用意しろよ、なァ、騎士サマぁ~?」
「下半身の世話は仕事じゃねぇ。煽るな。」
わざとらしく煽って来るクソ王子から、オレは顔を背けた。
クソ王子のまだ勃起中の逸物を視界から追い出しながら、ポケットの中を探る。
指先にその存在を確認してシッカリと掴んだ。
クリーム色でモッコモコのシュシュ。
念の為に持って来て良かった。
後はこれを、どうやってコイツの頭に着けるかだ。
「……エルドレッド。」
クソ王子が珍しくオレの名を呼んだ。
声が低い。
余計な煽り文句も垂れ流して来ない。
ちょっと危険なサインだ。
「エルディ。」
「チッ……なんだ?」
舌打ちした瞬間。クソ王子に顔を掴まれ、強引に正面へ向き直される。
と、ヤバい感じでニヤ付いた笑顔がすぐ間近にあった。
「お前はしょっちゅう纏わり付いて来るから、いつでも食えると思って放置してたんだけど……なァ?」
纏わり付く、は言い過ぎだろ。
コッチは仕事してンだよ。
「案外……今がその時、なんじゃねェ?」
「馬鹿言うな。いいから、まずは服を着ろ。」
あぁこれはマズいぞ。
さっさとコイツに可愛らしい服を着せねぇと。
「ヴァレンタイン第三王子殿下。……殿下は今、大変に混乱しておられるのです。速やかに服をお召しになり…」
「ハァ~?」
お互いにちょっとでも落ち着こうと、オレもクソ王子の名を呼んだ。
これでもコイツは王子殿下だと自分に言い聞かせ、口調も真っ当な世話役っぽいものに戻す。
どうやらクソ王子にはほんの少しも効果が無かったようだ。
いよいよ本格的にマズいかも、なんだが。
「…落ち着かれたら、部屋の出入口に掛けた障壁をお取り除きくださるよう、お願い致します。外で近衛の方達がお待ちです。彼等に襲撃者を引き渡しましょう。」
「今更そんな、気取った物言いで指図すんな。」
「近衛も、侍従も、皆が殿下を心配しております。殿下がどう…」
「…黙れ。」
尚もへこたれずに続ける勤勉なオレの口を、クソ王子が遠慮無く唇で塞いできた。
オレはポケットの中でシュシュを力一杯に握り込む。
本来だったらクソ第三王子は常に女装をしているんだ。
だからいつもなら、今頃は可愛らしいフリっフリのドレスを着ているか、風呂にでも入っている頃……、……風呂?
クソっ、そういう事かっ。
風呂に入る為にドレスを脱いでいたところを襲撃されたから、コイツは全裸なのか。
女装をしていなかったから、コイツの難ありな性格が剥き出しになったのか!
カケラも女装をしていない今のコイツは。
一糸纏わぬ全裸のコイツは。
完全に、男! ……元々が男なんだから当たり前か。
だが、悪いな。お前をこのまま男でいさせてやるワケには行かねぇんだよ。
女装していない時間が延びれば延びるだけ、魔王が復活する確率が高まるとかで、世界が危険らしいからな。
風呂に入るぐらいの時間なら女装を中断しても問題無いが。風呂に入って、襲撃されて、今も全裸って事は。結構な時間、女装をしていないって事だろ。
「……で? 近衛も侍従も食うなって言うなら? 俺はナニを食えばイイ?」
「この時間からの夜食は肌に悪いぞ? 水でも飲んでろ。」
こうしている間にも、クソ王子の機嫌は荒くれ続ける。
腕組みして不機嫌に顔を歪めている姿を見せ付けている。
コッチこそ舌打ちしたくなったのを堪えきったオレは。
クソ王子の長髪に着けられているはずの、キラっキラで可愛らしいバレッタが外れている事に気が付いた。何処にも見当たらない。
よくよく見直してみればクソ王子の身体には、いつも必ず何かしらを身に着けているはずのアクセサリー類……ネックレスやブレスレットの全てが無かった。
おいコラっ、なんで全部、外してる……、あぁ、そうか、風呂に……。
あああぁぁぁっ、風呂が……、風呂が憎いいぃっっ!
「お前さぁ? 俺を世話すんのが仕事じゃねぇのか? 身代わりぐらい用意しろよ、なァ、騎士サマぁ~?」
「下半身の世話は仕事じゃねぇ。煽るな。」
わざとらしく煽って来るクソ王子から、オレは顔を背けた。
クソ王子のまだ勃起中の逸物を視界から追い出しながら、ポケットの中を探る。
指先にその存在を確認してシッカリと掴んだ。
クリーム色でモッコモコのシュシュ。
念の為に持って来て良かった。
後はこれを、どうやってコイツの頭に着けるかだ。
「……エルドレッド。」
クソ王子が珍しくオレの名を呼んだ。
声が低い。
余計な煽り文句も垂れ流して来ない。
ちょっと危険なサインだ。
「エルディ。」
「チッ……なんだ?」
舌打ちした瞬間。クソ王子に顔を掴まれ、強引に正面へ向き直される。
と、ヤバい感じでニヤ付いた笑顔がすぐ間近にあった。
「お前はしょっちゅう纏わり付いて来るから、いつでも食えると思って放置してたんだけど……なァ?」
纏わり付く、は言い過ぎだろ。
コッチは仕事してンだよ。
「案外……今がその時、なんじゃねェ?」
「馬鹿言うな。いいから、まずは服を着ろ。」
あぁこれはマズいぞ。
さっさとコイツに可愛らしい服を着せねぇと。
「ヴァレンタイン第三王子殿下。……殿下は今、大変に混乱しておられるのです。速やかに服をお召しになり…」
「ハァ~?」
お互いにちょっとでも落ち着こうと、オレもクソ王子の名を呼んだ。
これでもコイツは王子殿下だと自分に言い聞かせ、口調も真っ当な世話役っぽいものに戻す。
どうやらクソ王子にはほんの少しも効果が無かったようだ。
いよいよ本格的にマズいかも、なんだが。
「…落ち着かれたら、部屋の出入口に掛けた障壁をお取り除きくださるよう、お願い致します。外で近衛の方達がお待ちです。彼等に襲撃者を引き渡しましょう。」
「今更そんな、気取った物言いで指図すんな。」
「近衛も、侍従も、皆が殿下を心配しております。殿下がどう…」
「…黙れ。」
尚もへこたれずに続ける勤勉なオレの口を、クソ王子が遠慮無く唇で塞いできた。
オレはポケットの中でシュシュを力一杯に握り込む。
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