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本編3 残念な男
32・毎晩ロイズの部屋の前で佇んでた為に風邪をひいた @泉州
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廊下で倒れたあの時以来、オレはロイズと会ってねぇ。
オレから会いには行き難くてよ。
思いっきり無様な姿を晒しちまったからな。
ロイズに会う前に、もうちょいチカラを付けてからって思ったんだ。
そんで……当たり前だがロイズからオレに会いに来る事も無かった。
屋外で鍛練してる時に、たまぁに廊下の窓から、ロイズが歩いてる姿が見えたり……それ以外でもロイズのあんな姿やこんな姿を、オレが一方的に見掛けるだけだった。
そうやって二週間が経過しようって頃のある日。
「ゲホっ…くっ……、ぐ……ゲホゲホっ!」
「風邪……ですかね?」
「ゴホ…っ、違っ…」
「…風邪だな。」
昼間に、鍛練場って名称のグラウンドの片隅で咳き込んでる所をイーシャに見付かったオレは、何か知らんが強引に自室へと連れ戻された。
しかもカカシャまでやって来て、二人掛かりでだ。
部屋着に着替えさせられたオレは、まだ陽も高いってのに、寝かし付けられた。
「ぐ…ふっ、違っ……、風邪じゃ…ゲホガボッ…」
「ほら見ろ。だから言わんこっちゃねぇ。」
ベッドに寝かされたオレの額に、イーシャが自分の掌を乗せる。
咄嗟にオレは口元を手で覆い隠した。
いくら何でも咳き込んだ飛沫をイーシャの手に飛び散らかしたら酷いだろよ。
「ふむ……熱は無いようだな。だが今日は鍛錬禁止だ。休め。」
「ご飯をちゃんと食べないからですよ。」
「ぐ、ふっ…食って、る……ゲホゲホっ!」
熱が出てねぇなら別にいいだろがよ。
ちょっと咳が出てるだけで概ね元気だし、咳の所為で喉咽は痛むがそれだけだ。
「全然ちゃんと、食べてないですよぉ。この世界に来てから、ちっとも食堂に来てないじゃないですか。」
それにカカシャの言い方じゃあ、まるでオレが普段、全く食堂を利用してねぇみたいだがよ。
さすがにオレだって、飲まず食わずで鍛錬なんかしねぇぞ?
朝は一応、毎日じゃなくても、たまには食堂に行ってる。かなり早い時間帯だから、カカシャとは行き合わないってだけだ。
夜はついウッカリ、忘れちまう事が多いんだが……。
「たま…に、ゴホっ……行ってる。」
「ご飯は毎回、食べるもんですよっ、もう。……ボクがお部屋に持って行くから、仕方なく食べてるだけでしょ……。」
「ぞれは……ゲフっ、……手間、掛けさせて…っ、悪い…」
「手間が掛かるからって理由で言ってるんじゃないですからっ。」
桃色の髪を光らせてカカシャがぷりぷりする。
腰の両サイドに手を当てて仁王立ちのツモリなんだろうが、表情が子供っぽい。
ちょっと声を掛けるだけであんだけビビッてたのが嘘みてぇな慣れっぷりだ。
「そうっ、か……悪い。」
「……悪いと思ってるなら、ちゃんと食べて休んでくださいね。」
まぁ、ずっと怖がられ続けるよりはイイってもんか。
異世界で他に知り合いもいねぇオレだからな。
こんだけ気に掛けて貰って、ありがてぇわ。
「ところで…イー……っ、ゲホゲホゲホぉっ!」
「オイオイ、無理して喋るな。」
「ゴホン……なぁ、そろそろオレ…仕事した方が良くねぇか? オレ、この世界に来てからまだ、何にもしてねぇんだが?」
「病人が妙な気ぃ遣うんじゃねぇよ。」
「今すぐじゃなくていい。……風邪が治ってから、でも。」
ちょっと喋ろうとしただけで盛大に咳込んじまったからな。
オレは風邪をひいたって事を素直に認めた。
だが……オレが何故、風邪をひいたか。
その心当たりだけは絶対に、言わんでおこうと思ってる。
愛するロイズと会えない日々が続いてるオレだったが。
実はこの二週間、オレがロイズの姿を見てねぇ日は無かったんだ。
既にロイズは神官兵士として、ここで働いてる立場だからな。
合わせる顔が無ぇとか言いつつオレは、ロイズの気配を感じるたびに、コソコソと陰に隠れながらロイズを眺めまわす毎日だった。
それだけでも気色悪いって自覚はあるんだが。
更にオレは毎晩、ロイズの部屋の前で……ロイズの部屋だと分かってる窓が見える位置に佇んでた。
さっ、流石に一晩中じゃねぇぞ?
自分の部屋で疲れるまで、寝るまで自主練をしてから、一応はちゃんと寝てるんだ。
だが夜中に目が覚めた後はどうも寝られなくて、それで、住居館の二階にあるロイズの部屋を見に行ってた。
朝になってロイズの姿を窓越しに見てから、食堂で朝食をかっこんで、ロイズが食堂に入って来る所を見ながら鍛錬場に向かう。
それがオレのルーティーンになってた。
明け方の外気は冷てぇからな。
たぶんオレの風邪はそれが原因だろうな。
明日から余分にもう一枚、何か羽織って行く事にすっか。
オレから会いには行き難くてよ。
思いっきり無様な姿を晒しちまったからな。
ロイズに会う前に、もうちょいチカラを付けてからって思ったんだ。
そんで……当たり前だがロイズからオレに会いに来る事も無かった。
屋外で鍛練してる時に、たまぁに廊下の窓から、ロイズが歩いてる姿が見えたり……それ以外でもロイズのあんな姿やこんな姿を、オレが一方的に見掛けるだけだった。
そうやって二週間が経過しようって頃のある日。
「ゲホっ…くっ……、ぐ……ゲホゲホっ!」
「風邪……ですかね?」
「ゴホ…っ、違っ…」
「…風邪だな。」
昼間に、鍛練場って名称のグラウンドの片隅で咳き込んでる所をイーシャに見付かったオレは、何か知らんが強引に自室へと連れ戻された。
しかもカカシャまでやって来て、二人掛かりでだ。
部屋着に着替えさせられたオレは、まだ陽も高いってのに、寝かし付けられた。
「ぐ…ふっ、違っ……、風邪じゃ…ゲホガボッ…」
「ほら見ろ。だから言わんこっちゃねぇ。」
ベッドに寝かされたオレの額に、イーシャが自分の掌を乗せる。
咄嗟にオレは口元を手で覆い隠した。
いくら何でも咳き込んだ飛沫をイーシャの手に飛び散らかしたら酷いだろよ。
「ふむ……熱は無いようだな。だが今日は鍛錬禁止だ。休め。」
「ご飯をちゃんと食べないからですよ。」
「ぐ、ふっ…食って、る……ゲホゲホっ!」
熱が出てねぇなら別にいいだろがよ。
ちょっと咳が出てるだけで概ね元気だし、咳の所為で喉咽は痛むがそれだけだ。
「全然ちゃんと、食べてないですよぉ。この世界に来てから、ちっとも食堂に来てないじゃないですか。」
それにカカシャの言い方じゃあ、まるでオレが普段、全く食堂を利用してねぇみたいだがよ。
さすがにオレだって、飲まず食わずで鍛錬なんかしねぇぞ?
朝は一応、毎日じゃなくても、たまには食堂に行ってる。かなり早い時間帯だから、カカシャとは行き合わないってだけだ。
夜はついウッカリ、忘れちまう事が多いんだが……。
「たま…に、ゴホっ……行ってる。」
「ご飯は毎回、食べるもんですよっ、もう。……ボクがお部屋に持って行くから、仕方なく食べてるだけでしょ……。」
「ぞれは……ゲフっ、……手間、掛けさせて…っ、悪い…」
「手間が掛かるからって理由で言ってるんじゃないですからっ。」
桃色の髪を光らせてカカシャがぷりぷりする。
腰の両サイドに手を当てて仁王立ちのツモリなんだろうが、表情が子供っぽい。
ちょっと声を掛けるだけであんだけビビッてたのが嘘みてぇな慣れっぷりだ。
「そうっ、か……悪い。」
「……悪いと思ってるなら、ちゃんと食べて休んでくださいね。」
まぁ、ずっと怖がられ続けるよりはイイってもんか。
異世界で他に知り合いもいねぇオレだからな。
こんだけ気に掛けて貰って、ありがてぇわ。
「ところで…イー……っ、ゲホゲホゲホぉっ!」
「オイオイ、無理して喋るな。」
「ゴホン……なぁ、そろそろオレ…仕事した方が良くねぇか? オレ、この世界に来てからまだ、何にもしてねぇんだが?」
「病人が妙な気ぃ遣うんじゃねぇよ。」
「今すぐじゃなくていい。……風邪が治ってから、でも。」
ちょっと喋ろうとしただけで盛大に咳込んじまったからな。
オレは風邪をひいたって事を素直に認めた。
だが……オレが何故、風邪をひいたか。
その心当たりだけは絶対に、言わんでおこうと思ってる。
愛するロイズと会えない日々が続いてるオレだったが。
実はこの二週間、オレがロイズの姿を見てねぇ日は無かったんだ。
既にロイズは神官兵士として、ここで働いてる立場だからな。
合わせる顔が無ぇとか言いつつオレは、ロイズの気配を感じるたびに、コソコソと陰に隠れながらロイズを眺めまわす毎日だった。
それだけでも気色悪いって自覚はあるんだが。
更にオレは毎晩、ロイズの部屋の前で……ロイズの部屋だと分かってる窓が見える位置に佇んでた。
さっ、流石に一晩中じゃねぇぞ?
自分の部屋で疲れるまで、寝るまで自主練をしてから、一応はちゃんと寝てるんだ。
だが夜中に目が覚めた後はどうも寝られなくて、それで、住居館の二階にあるロイズの部屋を見に行ってた。
朝になってロイズの姿を窓越しに見てから、食堂で朝食をかっこんで、ロイズが食堂に入って来る所を見ながら鍛錬場に向かう。
それがオレのルーティーンになってた。
明け方の外気は冷てぇからな。
たぶんオレの風邪はそれが原因だろうな。
明日から余分にもう一枚、何か羽織って行く事にすっか。
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