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本編1 警戒される男
4・お呼びじゃねぇか、そりゃ失礼したな @泉州
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胡散臭い事、爆盛なオレの言葉に。
静まり返ってた周囲が一拍置いてから、またザワ付き出す。
耳をそばだてなくても「勇者だと…」、「そんなまさか…」ってドヨメキが。
隠す気が無いって雰囲気と一緒に、オレの耳にガンガン聞こえて来る。
それも仕方ねぇか。
もしオレが逆の立場だったら絶対、そんな話を信じねぇもんな。精々、頭の可笑しな奴が来た、って思うのが目に浮かぶぜ。
異世界だからって受け入れられるとか考えてたが、舞台を地球に置き換えて考えてみりゃ……あぁ、これは確かに……。
今この状況のオレって……痛い奴、だな。
だが……不思議な事に誰も。オレが異世界から来た、って点について「嘘だ」って言う奴はいなかった。
何となく『勇者』って単語には色々と思う所があるみたいだがな。
さて、ここで突っ立ってるのも居たたまれねぇ。
一応…な? 一応念の為、最後に言葉で確認して、それでもう……決めようぜ。
「なぁ、アンタって王子サマ?」
「ドゥーサンイーツ王国の第三王子、ティーロッカと申します、異世界人様。」
「ちょっと聞きたいんだが……。」
オレの言葉に。
王子の護衛っぽい連中がイラッとするのを感じた。
ハイハイ、王子様が名乗ったのにスルーしてんじゃねぇよ、って事だろ?
だがオレはテンパってんだ。気分の落差が激しいってヤツだ。
異世界に来る前はオレ、勇者になって第二の人生。……とか考えて、ガキみてぇにちょっとワクワクしてたんだ。
だが実際に来てみて、呼ばれてもいなきゃ、望まれてもいねぇのが分かったら。
そりゃ恥ずかしいだろが。
用事が無ぇんなら、さっさとこの場から退場させて貰いてぇんだよ。
あぁそうだ。
せっかくだから神様に貰った『説明を受ける能力』だけでも使ってみるか。
「えぇと……『勇者が質問する』ぞ? この場にいる誰かが勇者を呼んだんじゃねぇのか?」
「残念ですが、それは無いでしょう。この国では、異世界から召喚する術は失われているのです。」
「じゃあもう一つ『勇者が質問する』が……ここでは何をしてた?」
「此処へは特礼拝(とくれいはい)の為に参りました。町により頻度は異なりますが、数ヶ月置きに各地の大聖堂で行われる、神々への祈りの儀式です。」
今、使おうとした時に分かったんだが。
どうやらこの能力は「勇者が質問する」という言葉がキーになってるようだ。
質問された方は、質問に対する事実を説明してくれる、ってな。
どこまで説明してくれんのか。誰にでも使えんのか。質問に対する答えの精度は信頼出来ンのか。その他色々……まぁ細かいトコは、も~ちっと検証が必要だな。
オレからの質問に、事実を簡潔に説明した……してしまった王子が、ハッとした顔になる。
勇者能力を使われたって事に気付いてハッとしたのか。それとも自分が答えちまった事に焦ったのか。……これも検証が必要だな。
もっとも、オレがこれからも勇者能力を使うかどうか、怪しいんだが。
まぁそれは、ともかく……。
あぁ~……そっか、うん……。
神様とは言え、きっと何か手違いでも……あったんだろなぁ……。
「そうか、分かった。」
今の答えで、オレが呼ばれてない事実は明らかになった。
室内にいる連中も、王子も、オレを出迎える為に集まったんじゃなく、定期的なお祈りをしてただけだ。
それが分かればもうここに留まる理由は無い。
王子に対する態度も併せて、取っ捕まる前にさっさと出てった方が良さそうだな。
しかもどうやら今、オレが乗っかってるご立派なステージは、よくよく見たら、何やら有難い感じの宗教的な何かみたいだぞ。
これは早く降りねぇと、バチが当たるだろ。
ご立派なステージから飛び降りると、カターン……! と、やたら靴の音が響く。
天井が高い所為でやけに反響して、周囲でイラ付いたりザワ付いたりしてた連中が押し黙った。
別に黙らせたくてワザと大きな音を立てたんでもねぇのに、ゆっくり歩き出したオレを、誰も口を開かないままで見てる。
注目を浴びて落ち着かない気持ちだが、ここから出るまでの辛抱だって、自分に言い聞かせて足を動かした。
王子との距離が近くなると、護衛達から張り詰めた緊張感が伝わって来る。
別にオレは、王子に何か用があるワケじゃなく、出口へ向かう通り道にたまたま、王子がいるだけだ。
足を止めずに、なるべく自然な感じで、オレは王子を通り過ぎる。
そうだ、挨拶ぐらいはしねぇとな。
「邪魔したな。」
「あの……、どちらへ?」
「……どっか。」
それを聞いた王子が、さっきの桃色少年ばりに目を見開いた。
静まり返ってた周囲が一拍置いてから、またザワ付き出す。
耳をそばだてなくても「勇者だと…」、「そんなまさか…」ってドヨメキが。
隠す気が無いって雰囲気と一緒に、オレの耳にガンガン聞こえて来る。
それも仕方ねぇか。
もしオレが逆の立場だったら絶対、そんな話を信じねぇもんな。精々、頭の可笑しな奴が来た、って思うのが目に浮かぶぜ。
異世界だからって受け入れられるとか考えてたが、舞台を地球に置き換えて考えてみりゃ……あぁ、これは確かに……。
今この状況のオレって……痛い奴、だな。
だが……不思議な事に誰も。オレが異世界から来た、って点について「嘘だ」って言う奴はいなかった。
何となく『勇者』って単語には色々と思う所があるみたいだがな。
さて、ここで突っ立ってるのも居たたまれねぇ。
一応…な? 一応念の為、最後に言葉で確認して、それでもう……決めようぜ。
「なぁ、アンタって王子サマ?」
「ドゥーサンイーツ王国の第三王子、ティーロッカと申します、異世界人様。」
「ちょっと聞きたいんだが……。」
オレの言葉に。
王子の護衛っぽい連中がイラッとするのを感じた。
ハイハイ、王子様が名乗ったのにスルーしてんじゃねぇよ、って事だろ?
だがオレはテンパってんだ。気分の落差が激しいってヤツだ。
異世界に来る前はオレ、勇者になって第二の人生。……とか考えて、ガキみてぇにちょっとワクワクしてたんだ。
だが実際に来てみて、呼ばれてもいなきゃ、望まれてもいねぇのが分かったら。
そりゃ恥ずかしいだろが。
用事が無ぇんなら、さっさとこの場から退場させて貰いてぇんだよ。
あぁそうだ。
せっかくだから神様に貰った『説明を受ける能力』だけでも使ってみるか。
「えぇと……『勇者が質問する』ぞ? この場にいる誰かが勇者を呼んだんじゃねぇのか?」
「残念ですが、それは無いでしょう。この国では、異世界から召喚する術は失われているのです。」
「じゃあもう一つ『勇者が質問する』が……ここでは何をしてた?」
「此処へは特礼拝(とくれいはい)の為に参りました。町により頻度は異なりますが、数ヶ月置きに各地の大聖堂で行われる、神々への祈りの儀式です。」
今、使おうとした時に分かったんだが。
どうやらこの能力は「勇者が質問する」という言葉がキーになってるようだ。
質問された方は、質問に対する事実を説明してくれる、ってな。
どこまで説明してくれんのか。誰にでも使えんのか。質問に対する答えの精度は信頼出来ンのか。その他色々……まぁ細かいトコは、も~ちっと検証が必要だな。
オレからの質問に、事実を簡潔に説明した……してしまった王子が、ハッとした顔になる。
勇者能力を使われたって事に気付いてハッとしたのか。それとも自分が答えちまった事に焦ったのか。……これも検証が必要だな。
もっとも、オレがこれからも勇者能力を使うかどうか、怪しいんだが。
まぁそれは、ともかく……。
あぁ~……そっか、うん……。
神様とは言え、きっと何か手違いでも……あったんだろなぁ……。
「そうか、分かった。」
今の答えで、オレが呼ばれてない事実は明らかになった。
室内にいる連中も、王子も、オレを出迎える為に集まったんじゃなく、定期的なお祈りをしてただけだ。
それが分かればもうここに留まる理由は無い。
王子に対する態度も併せて、取っ捕まる前にさっさと出てった方が良さそうだな。
しかもどうやら今、オレが乗っかってるご立派なステージは、よくよく見たら、何やら有難い感じの宗教的な何かみたいだぞ。
これは早く降りねぇと、バチが当たるだろ。
ご立派なステージから飛び降りると、カターン……! と、やたら靴の音が響く。
天井が高い所為でやけに反響して、周囲でイラ付いたりザワ付いたりしてた連中が押し黙った。
別に黙らせたくてワザと大きな音を立てたんでもねぇのに、ゆっくり歩き出したオレを、誰も口を開かないままで見てる。
注目を浴びて落ち着かない気持ちだが、ここから出るまでの辛抱だって、自分に言い聞かせて足を動かした。
王子との距離が近くなると、護衛達から張り詰めた緊張感が伝わって来る。
別にオレは、王子に何か用があるワケじゃなく、出口へ向かう通り道にたまたま、王子がいるだけだ。
足を止めずに、なるべく自然な感じで、オレは王子を通り過ぎる。
そうだ、挨拶ぐらいはしねぇとな。
「邪魔したな。」
「あの……、どちらへ?」
「……どっか。」
それを聞いた王子が、さっきの桃色少年ばりに目を見開いた。
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