逆ざまぁされ要員な僕でもいつか平穏に暮らせますか?

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第二章 入学試験を受ける前まで戻って

34 思い違い

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メインディッシュはお魚のソテーと、お肉のステーキ。

それまでの料理が結構なボリュームだったから、食べ切れるか不安だったんだけど。僕の様子を見て気付いたオーウェン様が従業員に知らせて、僕の分は小さめにするよう注文してくれたお陰で、どうにか残さずに食べられた。

食べ終わったら、ついホッとしちゃうくらいだから、実は結構ギリギリだったかも。

せっかく僕のために用意してくれたから、遺したくなかったんだ。



「はぁ……お腹いっぱい。」

「何言ってるの、ユア。まだデザートがあるよ?」

「は、はぁい……。」

あんなにいっぱい食べたのに、まだ終わりじゃなかったみたい。

食べられるか心配になったデザートは、好きな物を選べるようになってて一安心。

僕が選んだのはフルーツゼリー。

オーウェン様も僕と同じ物を選んでて、ジェニ様はそれにフルーツタルトも追加で。


「ユアは特待生として入学するんでしたね? 今、何歳なんですか?」

「確か、ユアの誕生日は6月末だったよね。誕生日もおめでとうっ。」

ティーカップをソーサーに戻しながら、オーウェン様が僕に尋ねた。

タルトを突つきながら、ジェニ様がお祝いの言葉をくれる。


「はい、こないだ誕生日を過ぎたので、18歳になりました。」

「なるほど、18歳……ですか……。」

「えっ、ホントに?」

何かを思案するような顔でオーウェン様が頷く。

その横でジェニ様は何故か、凄く驚いたみたい。

フォークを動かしてた手が止まって…


「えっ、18歳っ? 本当に?」

「そ、そうだよ?」

「えぇっ、嘘っ、ユアが…」

「どうしました?」

ジェニ様は凄く動揺してるみたい。

だけど僕もオーウェン様も理由が良く分からない。


「どうもこうもっ!」

とうとうジェニ様は立ち上がった。

信じられないものを見る目で僕を見下ろす。


どうしよう、ジェニ様がこんなに……。

……怒ってる? 僕は……何かしちゃったの?

嫌だ、嫌いにならないで……!



「嘘でしょ、ユア…っ、……ボクより年上ぇっ?」


…………え?


「そうなりますね。」

「なりますね、じゃないよっ。こんな可愛いのに、年上って……。ボク、絶対、同じくらいだけど年下だろうなって思ってたのに。ビックリだよっ。」


…………本当、に? 驚いた、だけ……?


「貴方よりユアの方が余程、しっかりしているように見えますよ。」

「酷いよ、リュエヌ。そんなにハッキリ言わなくたって…」

「ひとの年齢で大袈裟に驚くのはどうかと思いますよ? ほら、御覧なさい。貴方が大声を出して立ち上がるから、ユアが驚いてしまったでしょう。」

呆れた声のリュエヌ様が僕を指し示す。

僕の方を向いたジェニ様は、何故か慌てて駆け寄って来る。


「ゴメンっ、ゴメンね、ユア。」

「え……ぁ、あの…っ。」

「急に声を荒げるから、怯えさせたんじゃないですか? 機嫌を悪くさせたと…」

「そんなことないっ。ボク、ビックリして……ゴメン、ユア、泣かないで。」

「あ……。」

そう言われて僕は、自分が目に涙をいっぱいに溜めてることに気付いた。


やだな、いつの間に……。

……でも。

これまでの人生であった、それまで凄く優しくしてくれてたのに、急に手の平を返して断罪された過去を思い出して……。ジェニ様がやっぱり、これまでの "いつもと違う人" なのかなって……あぁ違う。そうじゃない。

単純に怖かった。

嫌われたのかもって、思ったら……怖くて、悲しくなったんだ。


だけどリュエヌ様との遣り取りを見て、ジェニ様は驚いただけって分かったら。

なんだか急に、目が熱くなっちゃったみたい……。


「ご、ごめ…っなさ……、僕もビックリ、して。」

「ゴメンね、ユア。泣かせるつもり、無かったんだよ。……大丈夫?」

「ん……、大丈夫。」

ハンカチで顔をゴシゴシ擦って、僕はどうにか笑顔を作った。


こんな程度で泣くなんて。

面倒臭くって、自分でも呆れちゃう。


「ね、…ねぇ、ところで……僕の方が年上ってことは、ジェニ様は何歳なの?」

雰囲気が沈んじゃうのは申し訳なくて。

僕は出来るだけ明るく尋ねた。


「ボクは17最だよ。」

「私は19歳です。今のところは。」

「えっ?」

「もぉ、リュエヌは聞かれてないでしょ?」

「どうせ流れで私の年齢も聞くでしょうから時間の節約ですよ。」

「オーウェン様はジョルジェーニ様と同じ学年で、……今度、2年生ですよね? 王子殿下も、一緒ですよね?」


今度は僕が驚く番だ。

ジェニ様、オーウェン様、ジンジェット様、アルファルファ様に、王子殿下も。僕が入学した年には、みんな2年生だった。

だから当然みんな同じ年齢だと思ってたから。


あぁでも、そう言えば……入学条件は、受験日が基準で満16歳以上、だったかな。

実際、隣国から来た僕は、受験日には17歳で、入学前の今は18歳。


だったら他の新入生も、絶対に16歳、とは限らないよね。



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