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劇場のこけら落としにて
こけら落としにて・20 ◇第一皇子クリスティ視点
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「それではせっかくのお申し出ですから、遠慮なく呼ばせて頂きますね。……レイモンド様、お会い出来て光栄です。わたしの方も気軽にゲーラと呼んでください。クリスティ殿下から篤く応援して頂いているお陰で、どうにか一端の役者を続けられています。」
「……謙虚な方ですね。」
レイとゲーラさんが握手をして、一言二言交わしてる。
それを俺はコッソリ大喜びで見守ってた。
内心は結構……いや、かなりニヤニヤしてるけど、顔に表れてない事を期待したい。
この二人が一緒にいる所を、ずっと見たいと思ってたから。
だってさぁ、……ねぇ?
長文台詞の言い方とか、視線の涼し気な感じとか、クールな顔立ちとか。髪色が銀色系って所も。
似てるんだよ、レイとゲーラさん。
年齢的にはゲーラさんの方がレイより七歳年上だからさ。ゲーラさんを見ると、まるで数年後のレイの姿をちょっと先取りしたみたいに感じるんだよ。
ちょっと得したような、でもなんか、変な感じ。
数年後のレイも、絶対に格好良いって確定だな。
そうだ。せっかくだからさ。
ゲーラさんからレイに、何かアドバイスとか貰おうかな。
残念だけど俺は全然、役に立たなかったから。
「ところでゲーラさん。彼は……私よりも年齢は若いのですが、既に宰相閣下の仕事の補助などもしている優秀な人物なのですよ。ただ、忙しい為、なかなか劇場に足を運べないようで。」
「おや、それはとても残念な事ですね。忙しい方にこそ、劇場で心も身体も癒して欲しいものです。」
「私も同感です。そこで、私からゲーラさんにお願いがあります。」
「クリスティ殿下のお願いとあらば何なりと。」
「ゲーラさんからレイに、劇場の楽しみ方などを……何かお勧めやアドバイスがあれば、お願いしたいと思って。」
「なるほど。一役者の戯れ言ですが、良ければお話ししましょう。」
甘い笑顔のゲーラさんを前にして、俺はお金を払いたい衝動に駆られた。
流石にそれを本当にやっちゃうとハシタナイから、グッと我慢する。
ゲーラさんと向き合ってるレイは、実にクールな微笑を浮かべた。
こっちも鑑賞料金が発生しても不思議じゃないくらい、凄く魅力的だ。
お金を払おうとしたらきっと怒られるだろうから、グッと我慢する。
俺は二人から、ほんの少しだけ後ろに下がって。
ゲーラさんとレイが話しやすいように、お互いの顔が見えやすくした。
此処の方が、イイ男二人の姿を纏めて眺めやすいポジションだし。
ちょっとくらい俺の表情が変化しても、バレ難いだろうって計算も込みだ。
とりあえず了承は貰ったし、後はゲーラさんに任せとけば良いだろう。
レイとゲーラさん、会話する二人の美声を存分に堪能してようっと。
もし、レイがゲーラさんの話を聞いて、劇場に興味を持ってくれたなら。
その内二人で(護衛は人数に含まず)劇場デートとか誘ってみようかな。
俺は恋愛劇ってあんまり好きじゃないけどさ。
それでもレイと一緒なら。内容が悲恋じゃなければきっと、いつもより楽しめそうな気がするぞ。
「劇場になかなか足を運べない理由の一つとして……、……。……、……。……、劇場側も色々と工夫をしています。」
「……ふむ。」
「例えば…………。……、……『夜間公演』がありますよ。」
「なるほど。それならば、……、……。」
「……、……。是非どうぞ。」
「……大変でしょう。」
「……、…………。ご心配なく。」
「老舗……、……。」
「……、……。……。……の真っ只中ですよ。」
へぇ~え、そうだったんだ~。
って……ゴメン。
美声を聞いてはいるんだけど、話の内容は聞こえてなかった。
なんか夜間公演について話してるっぽい……って程度しか。
でもまぁ……、いっか。このまま聞いてるフリで。
ゲーラさんが優しく話をして、それをレイが頷きながら聞いてる。
その構図を見られただけで、俺は大満足だ。
挨拶の時の二人も良かったけどさ。
今はなんか、こう……先輩・後輩な雰囲気が漂ってて。
シチュエーション的に、なんか凄く、イイよな。
レイって凄い格好良くて、美形実力派役者のゲーラさんと並んでも遜色無くて……。
「……。……クリスティ殿下にはもちろん、プラチナチケットをお送りしますよ。」
「えっ……、それは楽しみです。いつも有難う。」
急にゲーラさんが俺に笑顔を向けた。
話を聞いてなかった事がバレないよう、反射的に俺も笑顔で返す。
あ……ヤバい。取り繕った微笑に出来なかった。
これ、ジェフにバレたら間違いなく怒られる案件だぞ。
ジ~ッと無言で見て来るレイの視線が痛い。
もしかしたらバレてるかな?
お前、聞いてなかったろ。……って思ってるかな?
お願いだから、ジェフには言わないで~。
「是非ともレイモンド様と一緒に、観にいらしてください。」
「えぇ、是非……! そうしますっ。」
わぁ~いっ、やったあ~っ。
何でか知らないけど、ゲーラさんが俺とレイの劇場デートを後押ししてくれたぞ。
すっかり浮かれ切った俺は、たった今さっきの反省と焦りを忘れ去った。
つまり……。ニヤニヤしちゃって仕方なかった、って事だ。
「……謙虚な方ですね。」
レイとゲーラさんが握手をして、一言二言交わしてる。
それを俺はコッソリ大喜びで見守ってた。
内心は結構……いや、かなりニヤニヤしてるけど、顔に表れてない事を期待したい。
この二人が一緒にいる所を、ずっと見たいと思ってたから。
だってさぁ、……ねぇ?
長文台詞の言い方とか、視線の涼し気な感じとか、クールな顔立ちとか。髪色が銀色系って所も。
似てるんだよ、レイとゲーラさん。
年齢的にはゲーラさんの方がレイより七歳年上だからさ。ゲーラさんを見ると、まるで数年後のレイの姿をちょっと先取りしたみたいに感じるんだよ。
ちょっと得したような、でもなんか、変な感じ。
数年後のレイも、絶対に格好良いって確定だな。
そうだ。せっかくだからさ。
ゲーラさんからレイに、何かアドバイスとか貰おうかな。
残念だけど俺は全然、役に立たなかったから。
「ところでゲーラさん。彼は……私よりも年齢は若いのですが、既に宰相閣下の仕事の補助などもしている優秀な人物なのですよ。ただ、忙しい為、なかなか劇場に足を運べないようで。」
「おや、それはとても残念な事ですね。忙しい方にこそ、劇場で心も身体も癒して欲しいものです。」
「私も同感です。そこで、私からゲーラさんにお願いがあります。」
「クリスティ殿下のお願いとあらば何なりと。」
「ゲーラさんからレイに、劇場の楽しみ方などを……何かお勧めやアドバイスがあれば、お願いしたいと思って。」
「なるほど。一役者の戯れ言ですが、良ければお話ししましょう。」
甘い笑顔のゲーラさんを前にして、俺はお金を払いたい衝動に駆られた。
流石にそれを本当にやっちゃうとハシタナイから、グッと我慢する。
ゲーラさんと向き合ってるレイは、実にクールな微笑を浮かべた。
こっちも鑑賞料金が発生しても不思議じゃないくらい、凄く魅力的だ。
お金を払おうとしたらきっと怒られるだろうから、グッと我慢する。
俺は二人から、ほんの少しだけ後ろに下がって。
ゲーラさんとレイが話しやすいように、お互いの顔が見えやすくした。
此処の方が、イイ男二人の姿を纏めて眺めやすいポジションだし。
ちょっとくらい俺の表情が変化しても、バレ難いだろうって計算も込みだ。
とりあえず了承は貰ったし、後はゲーラさんに任せとけば良いだろう。
レイとゲーラさん、会話する二人の美声を存分に堪能してようっと。
もし、レイがゲーラさんの話を聞いて、劇場に興味を持ってくれたなら。
その内二人で(護衛は人数に含まず)劇場デートとか誘ってみようかな。
俺は恋愛劇ってあんまり好きじゃないけどさ。
それでもレイと一緒なら。内容が悲恋じゃなければきっと、いつもより楽しめそうな気がするぞ。
「劇場になかなか足を運べない理由の一つとして……、……。……、……。……、劇場側も色々と工夫をしています。」
「……ふむ。」
「例えば…………。……、……『夜間公演』がありますよ。」
「なるほど。それならば、……、……。」
「……、……。是非どうぞ。」
「……大変でしょう。」
「……、…………。ご心配なく。」
「老舗……、……。」
「……、……。……。……の真っ只中ですよ。」
へぇ~え、そうだったんだ~。
って……ゴメン。
美声を聞いてはいるんだけど、話の内容は聞こえてなかった。
なんか夜間公演について話してるっぽい……って程度しか。
でもまぁ……、いっか。このまま聞いてるフリで。
ゲーラさんが優しく話をして、それをレイが頷きながら聞いてる。
その構図を見られただけで、俺は大満足だ。
挨拶の時の二人も良かったけどさ。
今はなんか、こう……先輩・後輩な雰囲気が漂ってて。
シチュエーション的に、なんか凄く、イイよな。
レイって凄い格好良くて、美形実力派役者のゲーラさんと並んでも遜色無くて……。
「……。……クリスティ殿下にはもちろん、プラチナチケットをお送りしますよ。」
「えっ……、それは楽しみです。いつも有難う。」
急にゲーラさんが俺に笑顔を向けた。
話を聞いてなかった事がバレないよう、反射的に俺も笑顔で返す。
あ……ヤバい。取り繕った微笑に出来なかった。
これ、ジェフにバレたら間違いなく怒られる案件だぞ。
ジ~ッと無言で見て来るレイの視線が痛い。
もしかしたらバレてるかな?
お前、聞いてなかったろ。……って思ってるかな?
お願いだから、ジェフには言わないで~。
「是非ともレイモンド様と一緒に、観にいらしてください。」
「えぇ、是非……! そうしますっ。」
わぁ~いっ、やったあ~っ。
何でか知らないけど、ゲーラさんが俺とレイの劇場デートを後押ししてくれたぞ。
すっかり浮かれ切った俺は、たった今さっきの反省と焦りを忘れ去った。
つまり……。ニヤニヤしちゃって仕方なかった、って事だ。
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