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劇場のこけら落としにて
こけら落としにて・14 ◇第一皇子クリスティ視点
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「結構早めに着いたね。」
「そうですね。」
あ~あ、もうウェンサバ劇場に着いちゃった。
上演開始は午後五時半、だぞ? でも今、まだ午後四時過ぎじゃん。
貴賓室に案内して貰う以上、身分の高い者が時間ギリギリに到着するのは良くないって分かってるけどさ。いくら何でも早過ぎたなぁ。
これから部屋に通されて、そこでお茶でも出して貰って……はぁ。一時間も無駄に過ごすのかぁ。
だから俺、芝居を観に来るの、嫌なんだよなぁ。
こけら落とし公演の演目も……よりにもよって『五大悲劇』のアレだし。
正直言ったら今日のお楽しみは、ウェンサバ劇場の美味しい軽食と、レイに会えるって事だね。
「あぁそうだ。もう来てるのかなぁ……、……レオとレイは。」
「ええっ!」
「あれ? 知らない? ダディと宰相も一緒なんだから分かってると思ってた。」
「そんな……っ、きっ、……聞いてませんよっ!」
「あれぇ~? …………あ。ゴメン、伝えるの忘れてたぁ~。」
「くっ…クリスぅっ……!」
そっかぁ、ジェフは知らなかったのかぁ。
知ってるもんだと思ってたから、俺はわざわざ伝えてなかったよ。
ゴメン、言えば良かったね。
って言うか、さ? レオとレイが来たって、ジェフは別にどうって事ないだろ?
定例の食事会で何回も喋ってるんだし、そもそもレオとは一学年違いで同じ学園に通ってたんだし、いくらジェフが緊張屋さんでも、いい加減にもう慣れてもいいと思うよ?
ジェフは今日の公演を楽しみにしてたんだから、いつも通り、レオとレイを気にしないで、芝居の世界に没入すればいいだけじゃん。
俺はホラ。あの……、レイと会えるってなったら、さ。
そりゃあ身支度にも気合が入るってもんだけどさ。
今日も着飾りつつ、お腹周りを締め付け過ぎない服を着て来たし、さ。
キィ~………、ガタン。
コンコン。
「到着致しました。」
「ありがとう、開けて構わない。」
馬車が停まって、御者から声を掛けられる。
俺は背筋を伸ばしながら、コッソリ溜息を吐いた。
あぁ~、本当に着いちゃった。
外では劇場の支配人がたぶん待ってるだろうから、第一皇子っぽくしなきゃ。
「これはこれは、両殿下。お忙しいところを……、…。」
「こちらこそ、今日の日を迎えられる事、嬉しく思います。…。」
劇場に一歩、足を踏み入れた途端。
案の定、恭しく声を掛けられた。
丁寧に対応してくれる支配人には悪いんだけど、そこそこの挨拶で良いよね。
あんまり力を入れて喋って、劇場側へのプレッシャーになってもアレだし。
ちょちょっと話したら、ジェフに振っとこう。
「…、期待しています。……ねぇ、ジェフリー?」
「今日のこけら落とし公演は、何日も前から楽しみにしていました。」
いつもは緊張屋さんのジェフだけど、公人として、ちゃんとしなきゃいけない場面はちゃんとしてるなぁ。
もう既に気もそぞろな俺と違って、ね。
さっそく貴賓室に案内されるっぽい。
開演までどうやって時間を潰そうかなって考えてたら。
馬車寄せに、リカリオ侯爵家の馬車が停まった。
中から出て来た二人の姿に、周囲の来場者が視線を奪われてる。
きっ、……来たあぁ~~~っ! レイだあぁ~っ!
劇場に早く着きすぎてどうしようかと思ってたけど、レイもこの時間に来るなら、心配する必要は無かったな。
それだけ長く一緒に居られるから、これはこれで良かったぞっ。
実は最近、さぁ……。
そのぉ……、結っ構~、イイっ感じの、雰囲気…なんだよねぇ。
誰と、って……もちろんレイと、だぞぅ?
学園感謝祭で結構、ぐっと距離が縮まった、って言うかさ。
芝居が始まるまでの退屈な時間、レイに付き合って貰おうっと。
「……ご機嫌よう。……リカリオ侯爵家のお二人。」
思わず手を振りそうになったのを我慢して、俺は精一杯気取ってみた。
声を掛ける前に、素早くジェフとお互いをチェックし合ったから大丈夫なハズ。
これでも頑張って良さげな衣装を選んで来たから、ちょっとはいいなって、思ってくれれば嬉しい。
俺、人形皇子って呼ばれるんだから容姿はそれなりに自信あるんだけど。
やっぱりホラ。好きな相手がどう思うか、が重要だろ?
「そうですね。」
あ~あ、もうウェンサバ劇場に着いちゃった。
上演開始は午後五時半、だぞ? でも今、まだ午後四時過ぎじゃん。
貴賓室に案内して貰う以上、身分の高い者が時間ギリギリに到着するのは良くないって分かってるけどさ。いくら何でも早過ぎたなぁ。
これから部屋に通されて、そこでお茶でも出して貰って……はぁ。一時間も無駄に過ごすのかぁ。
だから俺、芝居を観に来るの、嫌なんだよなぁ。
こけら落とし公演の演目も……よりにもよって『五大悲劇』のアレだし。
正直言ったら今日のお楽しみは、ウェンサバ劇場の美味しい軽食と、レイに会えるって事だね。
「あぁそうだ。もう来てるのかなぁ……、……レオとレイは。」
「ええっ!」
「あれ? 知らない? ダディと宰相も一緒なんだから分かってると思ってた。」
「そんな……っ、きっ、……聞いてませんよっ!」
「あれぇ~? …………あ。ゴメン、伝えるの忘れてたぁ~。」
「くっ…クリスぅっ……!」
そっかぁ、ジェフは知らなかったのかぁ。
知ってるもんだと思ってたから、俺はわざわざ伝えてなかったよ。
ゴメン、言えば良かったね。
って言うか、さ? レオとレイが来たって、ジェフは別にどうって事ないだろ?
定例の食事会で何回も喋ってるんだし、そもそもレオとは一学年違いで同じ学園に通ってたんだし、いくらジェフが緊張屋さんでも、いい加減にもう慣れてもいいと思うよ?
ジェフは今日の公演を楽しみにしてたんだから、いつも通り、レオとレイを気にしないで、芝居の世界に没入すればいいだけじゃん。
俺はホラ。あの……、レイと会えるってなったら、さ。
そりゃあ身支度にも気合が入るってもんだけどさ。
今日も着飾りつつ、お腹周りを締め付け過ぎない服を着て来たし、さ。
キィ~………、ガタン。
コンコン。
「到着致しました。」
「ありがとう、開けて構わない。」
馬車が停まって、御者から声を掛けられる。
俺は背筋を伸ばしながら、コッソリ溜息を吐いた。
あぁ~、本当に着いちゃった。
外では劇場の支配人がたぶん待ってるだろうから、第一皇子っぽくしなきゃ。
「これはこれは、両殿下。お忙しいところを……、…。」
「こちらこそ、今日の日を迎えられる事、嬉しく思います。…。」
劇場に一歩、足を踏み入れた途端。
案の定、恭しく声を掛けられた。
丁寧に対応してくれる支配人には悪いんだけど、そこそこの挨拶で良いよね。
あんまり力を入れて喋って、劇場側へのプレッシャーになってもアレだし。
ちょちょっと話したら、ジェフに振っとこう。
「…、期待しています。……ねぇ、ジェフリー?」
「今日のこけら落とし公演は、何日も前から楽しみにしていました。」
いつもは緊張屋さんのジェフだけど、公人として、ちゃんとしなきゃいけない場面はちゃんとしてるなぁ。
もう既に気もそぞろな俺と違って、ね。
さっそく貴賓室に案内されるっぽい。
開演までどうやって時間を潰そうかなって考えてたら。
馬車寄せに、リカリオ侯爵家の馬車が停まった。
中から出て来た二人の姿に、周囲の来場者が視線を奪われてる。
きっ、……来たあぁ~~~っ! レイだあぁ~っ!
劇場に早く着きすぎてどうしようかと思ってたけど、レイもこの時間に来るなら、心配する必要は無かったな。
それだけ長く一緒に居られるから、これはこれで良かったぞっ。
実は最近、さぁ……。
そのぉ……、結っ構~、イイっ感じの、雰囲気…なんだよねぇ。
誰と、って……もちろんレイと、だぞぅ?
学園感謝祭で結構、ぐっと距離が縮まった、って言うかさ。
芝居が始まるまでの退屈な時間、レイに付き合って貰おうっと。
「……ご機嫌よう。……リカリオ侯爵家のお二人。」
思わず手を振りそうになったのを我慢して、俺は精一杯気取ってみた。
声を掛ける前に、素早くジェフとお互いをチェックし合ったから大丈夫なハズ。
これでも頑張って良さげな衣装を選んで来たから、ちょっとはいいなって、思ってくれれば嬉しい。
俺、人形皇子って呼ばれるんだから容姿はそれなりに自信あるんだけど。
やっぱりホラ。好きな相手がどう思うか、が重要だろ?
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