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学園の感謝祭にて
学園の感謝祭にて・12 ◇第一皇子クリスティ視点
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「何故、と…問うか……。」
なんでか遠い目で空を見上げる、連合参加国の王子。
……名前知ってるけど、もう鬱陶しいから「王子」って呼ぶんでいいよな。
「そこに……カードがあるからだ。」
うっわ、どうしよう。メンドくさい。
持て成してくれって言われたけど……俺はこの手のタイプ、苦手だなぁ。
……って。ちょっと痛い気持ちになってたら。
連合の王子が急に、俺の手を取った。
しかも俺の手に、キスした。
手の甲じゃなくて、掌でもなくて、指先の……指の腹の方とか、微妙な位置。
えっ? この王子、公務中じゃない時はこんな感じなの?
す~っごいニヤ付いてるぞ。俺に言われたくないだろうけどさ。
普段、ジェフに注意されてちょっと厳し過ぎるんじゃないか? とか思ったりしてたけど。こういう男を見ると、やっぱり顔は引き締めとけ~って気持ちになるよねぇ~。
俺もちゃんと気を付けるし、ジェフにもよぉく注意しといてやろう。
「それとも……皆でカードゲームではなく、二人だけで温室へでも参ろうか?」
「何故? 冗談にしては面白味に掛けてるし、そうでなかったとしたら、意味が分からないのですが? 」
好きなカードゲームへのお誘いですら断ってるのに、俺がなんでアンタと二人で、温室なんかに行かなきゃいけないの?
どうでもいい相手と花なんか見たって仕方ないじゃん。美味しくもないし。
そういう所に行くのは第一皇子としての仕事でか、好きな人を相手にちょっと格好良く気取ってる時ぐらいだよ。
「温室への案内をご希望でしたら、誰かヒマな学園関係者をお呼びになったらどうですか? 私は既に卒業しておりますし、生憎とこれから予定もありますので、温室へのお付き合いは致しかねます。もちろんカードゲームへのお誘いも慎んでお断りしますから。」
根がお喋りだから、ついつい長文台詞にはなったけどさ。
レイと喋ってる時と比べたら、なんか全っ然、楽しくないんだけど。ほんっとに。
だって当たり前だよな?
指の腹にチューされて、そのまままだ握られてて、フレンドリーにお喋りするのは流石の俺でも無理だって。せめて離してよ。
もぉ~、無駄に力が強いんだから。
「先程のように、俺と言っても良いのだぞ?」
「……そもそも護衛も付けずに、こんな所でカードゲームだなんてどうかと思いますよ? それと……手を、離してください。」
「わたしの護衛はそれとなく周囲に紛れておるのだ。心配は無用。」
そういう心配をしてるんじゃないってば。
まったくもう……どうしようかな? 連合との関係を考えたら、今の所は我慢出来ないって程じゃないけどさ。でも、ギリギリまで我慢してやる…までの義理は無いし。
これ以上の接触をされる前に、俺の護衛を動かしちゃおうかな? すぐそこで、『いつでも行けます』みたいな顔してる事だし。
……って。ちょっと苛立ちながら考えてたら。
サロンに置き去りにしたハズのジェフが。
スッと俺の隣に立って。
魔法でも掛けたみたいに、俺の手を連合の王子から離してくれた。
凄い! ジェフ、凄い! 魔法みたいだ!
あぁそうだ、確かジェフは、肉体操作系の魔法が得意だった! ……あれ、違った?
まぁ、ドッチでもいいや、ジェフ、ありがとう!
でもそんな風に、結構乱暴な動きしちゃって大丈夫か…なぁ……?
「第二皇子の……ジェフリー殿下、か……。」
突然の乱入者を見るような感じに、連合王子の片眉がピクッと上がった。
アンタがそんな顔、するのか? って思った俺なんだけど。
顔と言えば……! そう、ジェフ!
割と崩壊しやすいジェフの表情筋がどうなってるか。
俺は心配になって覗き見したんだけど、そんな心配は全く要らなかった。
完璧な、過去データの中でも上位に入るぐらい完璧な『仮面皇子』の顔だった。
「突然の参加だが……ある意味、積極的とも言えようか。」
「このような所でお会いするとは思っておりませんでした、連合の方々もヴェルデュール学園の学園感謝祭の事はご存じだったのですね、僅かな滞在期間中のせっかくの機会ですからどうぞごゆっくり楽しんでいってください、それではご機嫌よう。」
口端も歪めた連合王子に対して、いつもの『緊張屋さん』が嘘みたいに饒舌なジェフは一気に、何の感情も籠もらない声でそこまで言い終える。
そして、相手から声が掛かる隙も無いってぐらい素早く、俺の身体ごと踵を返した。
ジェフに腰の後ろ辺りを押されながら、気になって俺は背後を窺ってみる。
連合王子は一応、怒ってたり追い掛けて来そうな様子は無かった。
ホッと胸を撫で下ろしながら、サロン内に足を踏み入れた俺だったけど。
安心するのはまだまだ早かった……早過ぎたみたい。
「こんな所で何をしているのですか……!」
ジェフの、押し殺した怒りが滲む声がした。
ひっ……って、俺は顔が強張った。
俺を助けてくれた。……と思ってたジェフは、どうやら俺にご立腹な様子だ。
せっかくレイの仮装を見に来たのに。
カードゲームに釣られて中庭テラスに出てっちゃって、なんか面倒臭い事になった俺の事を、ジェフは怒ってるんだと思う。
ヤバぁ……。これ……、これから説教されちゃう感じ?
なんでか遠い目で空を見上げる、連合参加国の王子。
……名前知ってるけど、もう鬱陶しいから「王子」って呼ぶんでいいよな。
「そこに……カードがあるからだ。」
うっわ、どうしよう。メンドくさい。
持て成してくれって言われたけど……俺はこの手のタイプ、苦手だなぁ。
……って。ちょっと痛い気持ちになってたら。
連合の王子が急に、俺の手を取った。
しかも俺の手に、キスした。
手の甲じゃなくて、掌でもなくて、指先の……指の腹の方とか、微妙な位置。
えっ? この王子、公務中じゃない時はこんな感じなの?
す~っごいニヤ付いてるぞ。俺に言われたくないだろうけどさ。
普段、ジェフに注意されてちょっと厳し過ぎるんじゃないか? とか思ったりしてたけど。こういう男を見ると、やっぱり顔は引き締めとけ~って気持ちになるよねぇ~。
俺もちゃんと気を付けるし、ジェフにもよぉく注意しといてやろう。
「それとも……皆でカードゲームではなく、二人だけで温室へでも参ろうか?」
「何故? 冗談にしては面白味に掛けてるし、そうでなかったとしたら、意味が分からないのですが? 」
好きなカードゲームへのお誘いですら断ってるのに、俺がなんでアンタと二人で、温室なんかに行かなきゃいけないの?
どうでもいい相手と花なんか見たって仕方ないじゃん。美味しくもないし。
そういう所に行くのは第一皇子としての仕事でか、好きな人を相手にちょっと格好良く気取ってる時ぐらいだよ。
「温室への案内をご希望でしたら、誰かヒマな学園関係者をお呼びになったらどうですか? 私は既に卒業しておりますし、生憎とこれから予定もありますので、温室へのお付き合いは致しかねます。もちろんカードゲームへのお誘いも慎んでお断りしますから。」
根がお喋りだから、ついつい長文台詞にはなったけどさ。
レイと喋ってる時と比べたら、なんか全っ然、楽しくないんだけど。ほんっとに。
だって当たり前だよな?
指の腹にチューされて、そのまままだ握られてて、フレンドリーにお喋りするのは流石の俺でも無理だって。せめて離してよ。
もぉ~、無駄に力が強いんだから。
「先程のように、俺と言っても良いのだぞ?」
「……そもそも護衛も付けずに、こんな所でカードゲームだなんてどうかと思いますよ? それと……手を、離してください。」
「わたしの護衛はそれとなく周囲に紛れておるのだ。心配は無用。」
そういう心配をしてるんじゃないってば。
まったくもう……どうしようかな? 連合との関係を考えたら、今の所は我慢出来ないって程じゃないけどさ。でも、ギリギリまで我慢してやる…までの義理は無いし。
これ以上の接触をされる前に、俺の護衛を動かしちゃおうかな? すぐそこで、『いつでも行けます』みたいな顔してる事だし。
……って。ちょっと苛立ちながら考えてたら。
サロンに置き去りにしたハズのジェフが。
スッと俺の隣に立って。
魔法でも掛けたみたいに、俺の手を連合の王子から離してくれた。
凄い! ジェフ、凄い! 魔法みたいだ!
あぁそうだ、確かジェフは、肉体操作系の魔法が得意だった! ……あれ、違った?
まぁ、ドッチでもいいや、ジェフ、ありがとう!
でもそんな風に、結構乱暴な動きしちゃって大丈夫か…なぁ……?
「第二皇子の……ジェフリー殿下、か……。」
突然の乱入者を見るような感じに、連合王子の片眉がピクッと上がった。
アンタがそんな顔、するのか? って思った俺なんだけど。
顔と言えば……! そう、ジェフ!
割と崩壊しやすいジェフの表情筋がどうなってるか。
俺は心配になって覗き見したんだけど、そんな心配は全く要らなかった。
完璧な、過去データの中でも上位に入るぐらい完璧な『仮面皇子』の顔だった。
「突然の参加だが……ある意味、積極的とも言えようか。」
「このような所でお会いするとは思っておりませんでした、連合の方々もヴェルデュール学園の学園感謝祭の事はご存じだったのですね、僅かな滞在期間中のせっかくの機会ですからどうぞごゆっくり楽しんでいってください、それではご機嫌よう。」
口端も歪めた連合王子に対して、いつもの『緊張屋さん』が嘘みたいに饒舌なジェフは一気に、何の感情も籠もらない声でそこまで言い終える。
そして、相手から声が掛かる隙も無いってぐらい素早く、俺の身体ごと踵を返した。
ジェフに腰の後ろ辺りを押されながら、気になって俺は背後を窺ってみる。
連合王子は一応、怒ってたり追い掛けて来そうな様子は無かった。
ホッと胸を撫で下ろしながら、サロン内に足を踏み入れた俺だったけど。
安心するのはまだまだ早かった……早過ぎたみたい。
「こんな所で何をしているのですか……!」
ジェフの、押し殺した怒りが滲む声がした。
ひっ……って、俺は顔が強張った。
俺を助けてくれた。……と思ってたジェフは、どうやら俺にご立腹な様子だ。
せっかくレイの仮装を見に来たのに。
カードゲームに釣られて中庭テラスに出てっちゃって、なんか面倒臭い事になった俺の事を、ジェフは怒ってるんだと思う。
ヤバぁ……。これ……、これから説教されちゃう感じ?
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