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学園の感謝祭にて
学園の感謝祭にて・11 ◇第一皇子クリスティ視点
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校舎内に入ったら、真っ直ぐにレイが所属するクラス教室を目指す。
廊下ですれ違う後輩達を皇子パワーで蹴散らしながら。
……いや、蹴散らすなよって感じだろうけど。
だってホラ、俺は第一皇子だし、この学園の卒業生で先輩なんだからさ、それなりの威厳っていうか尊敬が欲しいんだもん。
「レイモンド様のクラスは確か、喫茶店……でしたかね?」
「そうそう。仮装するヤツだってさ。」
俺達の目的地はレイのクラスだ。
っていうか……俺は、レイを見に来たんだ。ジェフは完全に、俺の付き合い。
レイは最上級生で、今回が最後の感謝祭だからな。
しかも今回、レイが何かの仮装をするって聞いたら……見に行くしかないでしょ。
本当は俺一人で遊びに行きたかったんだけど、流石にそれをしたら、第一皇子はレイの事を好きなんじゃないかって噂になっちゃうしぃ~。
「ふふっ……楽しみ、だなぁ。」
「クリス、かお。」
「はい、はい。」
楽しみで楽しみで仕方ないんだから、つい顔が緩んじゃう。
今日だけで何回、ジェフに注意されちゃうのかな。
目的地までの結構な長い距離。俺はグッと我慢を続けた。
途中にある、良い匂いのする部屋。ノリの良い音楽が聞こえる部屋。チラッと窓から見える部分だけでも可愛らしい物が売られてそうな部屋。一体何なのか知らないけど凄く賑わってる部屋。
何度も立ち寄りたくなったのを、ジェフに突っつかれなから俺はスルーした。
「うぅ、ぅ……見たいよぉ、ジェフぅ。」
「後にしましょう。……もう、これじゃ、いつ着くか分かりませんよ?」
付き合いで来てくれてるだけのジェフなのに、逆に急かされて先へ進む。
そうしてる内に、俺達はサロンになってる場所に着いた。
中庭や外にある他の施設へ繋がってるサロンは、それなりな賑わいだった。
長いソファがいい感じで置いてあるから、休憩しやすそう。
その一角に見覚えのある人々を見掛けたから、従者を呼び寄せて使いにした。
戻って来た従者に話を聞くと、彼等はやっぱりレイの同級生だった。
仮装したレイが来るのをここで待ってるらしい。
って事は、ここに居ればレイと会えるワケで。
「あ……、あれは……。」
校舎の外へと出る扉は上半分にガラスが嵌め込まれてる。
レイが来るまで、どこで待ってようかな~って。
待機場所を探して、扉のガラス部分から中庭テラスを見た俺は、ついウッカリ見付けちゃったんだ。
俺は引き寄せられるように、扉にピッタリ寄り添った。
「ぅわ……なんか、凄い……。」
中庭テラスに置かれた丸いテーブルで、カードゲームに興じてるグループ。
ここからじゃ背中しか見えない人の前に、ギラギラ輝くメダルが山積みになってた。
とりあえず一回分、ゲームしてる所を見たんだけど、その人は、なんか凄く強い。
見てるだけでウズウズしたオレは、もうちょっと近くで見てみたくなった。
カードゲーム、好きなんだよぉ~。
「クリス? どこ…」
「ゴメン、ちょっとだけ。」
詳しく言ったら、ジェフは絶対に止めるに決まってる。
俺は素早く中庭テラスへと躍り出た。
そのテーブルではもう、次のゲームが始まってた。
なのに俺が出てったせいで、参加者の注意が削がれちゃったみたいだ。
俺に注目して来るから「気にしないで続けていい」って言ったけど、申し訳ない。
「クリスティ殿下も如何かな? ……次のゲームで。」
爆勝ちしてる人から声を掛けられた。
しかもその人、俺の方を一度も振り向いてないのに。
正直キモい。
「いや、俺は…」
「一方的な搾取を続けるのも詰まらない。」
ジェフに怒られるの分かってるから俺は断った。
なのに爆勝ち男は、ちょっと煽りっぽく誘って来る。
自分に自信があって、尚且つ、相手を煽るタイプの男は苦手なんだよ、俺。
あんまり関わりたくない、って気持ちになる。なんか、酷い目に遭いそうだもん。
俺はそっと、無難に、その場を離れる事にした。
「ゲームの邪魔をしたようですね。失礼…」
「…いいだろう? わたしを持て成してはくれないのか? クリスティ殿下?」
離れる事に……したのに。
爆勝ちの男は振り返って俺を引き止めた。
その顔を見て、俺の顔は間違いなく強張ったと思う。
こんな、学園の中庭でカードゲームなんか、してるハズない。
「何故……、こんな所に……?」
目の前にいるのは。
もし違ってたらゴメンだけど。
リーヴェルト帝国に、国賓として滞在中の。
海に面した小国連合『シーズベルド』の議員であり、連合参加国の王子。
……に、見えた。
廊下ですれ違う後輩達を皇子パワーで蹴散らしながら。
……いや、蹴散らすなよって感じだろうけど。
だってホラ、俺は第一皇子だし、この学園の卒業生で先輩なんだからさ、それなりの威厳っていうか尊敬が欲しいんだもん。
「レイモンド様のクラスは確か、喫茶店……でしたかね?」
「そうそう。仮装するヤツだってさ。」
俺達の目的地はレイのクラスだ。
っていうか……俺は、レイを見に来たんだ。ジェフは完全に、俺の付き合い。
レイは最上級生で、今回が最後の感謝祭だからな。
しかも今回、レイが何かの仮装をするって聞いたら……見に行くしかないでしょ。
本当は俺一人で遊びに行きたかったんだけど、流石にそれをしたら、第一皇子はレイの事を好きなんじゃないかって噂になっちゃうしぃ~。
「ふふっ……楽しみ、だなぁ。」
「クリス、かお。」
「はい、はい。」
楽しみで楽しみで仕方ないんだから、つい顔が緩んじゃう。
今日だけで何回、ジェフに注意されちゃうのかな。
目的地までの結構な長い距離。俺はグッと我慢を続けた。
途中にある、良い匂いのする部屋。ノリの良い音楽が聞こえる部屋。チラッと窓から見える部分だけでも可愛らしい物が売られてそうな部屋。一体何なのか知らないけど凄く賑わってる部屋。
何度も立ち寄りたくなったのを、ジェフに突っつかれなから俺はスルーした。
「うぅ、ぅ……見たいよぉ、ジェフぅ。」
「後にしましょう。……もう、これじゃ、いつ着くか分かりませんよ?」
付き合いで来てくれてるだけのジェフなのに、逆に急かされて先へ進む。
そうしてる内に、俺達はサロンになってる場所に着いた。
中庭や外にある他の施設へ繋がってるサロンは、それなりな賑わいだった。
長いソファがいい感じで置いてあるから、休憩しやすそう。
その一角に見覚えのある人々を見掛けたから、従者を呼び寄せて使いにした。
戻って来た従者に話を聞くと、彼等はやっぱりレイの同級生だった。
仮装したレイが来るのをここで待ってるらしい。
って事は、ここに居ればレイと会えるワケで。
「あ……、あれは……。」
校舎の外へと出る扉は上半分にガラスが嵌め込まれてる。
レイが来るまで、どこで待ってようかな~って。
待機場所を探して、扉のガラス部分から中庭テラスを見た俺は、ついウッカリ見付けちゃったんだ。
俺は引き寄せられるように、扉にピッタリ寄り添った。
「ぅわ……なんか、凄い……。」
中庭テラスに置かれた丸いテーブルで、カードゲームに興じてるグループ。
ここからじゃ背中しか見えない人の前に、ギラギラ輝くメダルが山積みになってた。
とりあえず一回分、ゲームしてる所を見たんだけど、その人は、なんか凄く強い。
見てるだけでウズウズしたオレは、もうちょっと近くで見てみたくなった。
カードゲーム、好きなんだよぉ~。
「クリス? どこ…」
「ゴメン、ちょっとだけ。」
詳しく言ったら、ジェフは絶対に止めるに決まってる。
俺は素早く中庭テラスへと躍り出た。
そのテーブルではもう、次のゲームが始まってた。
なのに俺が出てったせいで、参加者の注意が削がれちゃったみたいだ。
俺に注目して来るから「気にしないで続けていい」って言ったけど、申し訳ない。
「クリスティ殿下も如何かな? ……次のゲームで。」
爆勝ちしてる人から声を掛けられた。
しかもその人、俺の方を一度も振り向いてないのに。
正直キモい。
「いや、俺は…」
「一方的な搾取を続けるのも詰まらない。」
ジェフに怒られるの分かってるから俺は断った。
なのに爆勝ち男は、ちょっと煽りっぽく誘って来る。
自分に自信があって、尚且つ、相手を煽るタイプの男は苦手なんだよ、俺。
あんまり関わりたくない、って気持ちになる。なんか、酷い目に遭いそうだもん。
俺はそっと、無難に、その場を離れる事にした。
「ゲームの邪魔をしたようですね。失礼…」
「…いいだろう? わたしを持て成してはくれないのか? クリスティ殿下?」
離れる事に……したのに。
爆勝ちの男は振り返って俺を引き止めた。
その顔を見て、俺の顔は間違いなく強張ったと思う。
こんな、学園の中庭でカードゲームなんか、してるハズない。
「何故……、こんな所に……?」
目の前にいるのは。
もし違ってたらゴメンだけど。
リーヴェルト帝国に、国賓として滞在中の。
海に面した小国連合『シーズベルド』の議員であり、連合参加国の王子。
……に、見えた。
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