人形皇子は表情が乏しい自覚が無い

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学園の感謝祭にて

学園の感謝祭にて・15  ◇第二皇子ジェフリー視点

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颯爽と姿を現したレオ様の歩く姿から、僕は目を離せません。

圧倒的な存在感を見せ付ける逞しい肉体。今日は少しラフめな格好でしたから、腕や胸筋、何なら背中や腰回りにも目が行ってしまって……目のやり場に困ります。
慕って来る後輩達に囲まれて、少しだけ困ったような面映ゆそうな表情になったレオ様は。普段の精悍な顔立ちに少年のような印象が加わり、いつもにも増して更に魅力的です。
黒に近い暗灰色の硬質な髪が今は、サロンの照明に照らされているので、まるで銀色に輝いています。凛々しい騎士のレオ様が王子様のような輝きです。……皇子は僕ですが。


サロンへ足を踏み入れたレオ様は、弟の元へと向かっています。
レイモンド様も気が付いたようで、兄の方へと向き直りました。



あっ……! こうしてはいられませんよ!
この場でレオ様が挨拶を済ませてしまったら、すぐに立ち去られてしまうかも知れません。もしそうなってしまったら、僕は一体、何の為にここまで来たのやら……。



僕はクリスを呼ぼうとして、カードゲームで盛り上がっていた先程のテーブルへと振り返りました。
そして、目にした光景に。
思わず眉を顰めてしまいました。


クリスは、フリードリヒ・デュヴァイツから、手に口付けを受けていたのです。
鮮やかな赤毛の彼は、海に面した小国連合『シーズベルド』の議員であり、連合参加国ヴァイルズの王子でもあり……一応、我がリーヴェルト帝国では、国賓として持て成している相手でした。
そんな人が何故かヴェルデュール学園の中庭テラスに居て、しかもクリスの手を握って指先に唇で触れているのです。

フリードリヒ王子は一体、何処に潜んでいたのでしょうか。
まさかとは思いますが、カードゲームに興じていたりなんか……しませんよね?


なんだか面倒な雰囲気をひしひしと感じた僕は、僅か一瞬の内に、クリスに声を掛けるのに躊躇する気持ちが芽生えてしまいました。
クリスへの対応を見て、連合議員の王子は鬱陶しいのではないかと……そんな警戒心が湧いてしまったのかも知れません。
現実逃避のツモリじゃないのですが、ついつい僕の視線はサロンへと向きました。



ガラス扉の向こうに。
僕は見てしまった。
色気ダダ漏れのレオ様が、エスコートするように肘を出している姿を。


これは……、いけません!
レオ様がレイモンド様を連れて、何処かへと移動してしまいます。
早くクリスを連れ戻して、さっさとサロンに入らなくては……!



僕は素早くテーブルへと足を運びました。
これでも第二皇子としての体裁はありますから、駆け出しはしません。精一杯、ギリギリの速足です。



「……そもそも護衛も付けずに、こんな所でカードゲームだなんてどうかと思いますよ? それと……手を、離してください。」
「わたしの護衛はそれとなく周囲に紛れておるのだ。心配は無用。」

クリスとフリードリヒ王子が会話をしていますが、何の益にもならない内容です。
なので僕は遠慮なく、フリードリヒ王子が掴んでいるクリスの手を取り戻しました。


「第二皇子の……ジェフリー殿下、か……。」

仮にも他国の王子を相手に、少々無礼だったでしょうね。
ですが、それを気にするよりも、僕は苛立ちを覚えました。
何故なら。僕が掴んでいるクリスの手首が、やや赤くなっていたから。
そうまでなる程の強い力で掴まれていたんでしょう。
それを全く問題にせず引き剥がせたのですから、つまり僕は、自分でも無意識の内に、自然と肉体操作系魔法を使っていたようです。


抗議の意味を込めて僕は、フリードリヒ王子の顔と、クリスの手首とに視線を投げました。
自分がやった事ですから流石に気が付いてくれるでしょう。


「突然の参加だが……ある意味、積極的とも言えようか。」
「このような所でお会いするとは思っておりませんでした、連合の方々もヴェルデュール学園の学園感謝祭の事はご存じだったのですね、僅かな滞在期間中のせっかくの機会ですからどうぞごゆっくり楽しんでいってください、それではご機嫌よう。」

気が付いたかどうかは微妙でしたが。
こんな男に時間を潰されるわけには行きません。
さっさと挨拶だけを済ませて、僕はクリスを急かしてサロンへと急ぎました。
手首を赤くしているのでクリスの手を引く事は止めておきます。


早くサロンに戻って。
レオ様が何処かへ行ってしまう前に。
クリスから話し掛けて貰わなくっちゃ。
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